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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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77/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 77

「…ボ、ボクの目的?…いきなり、なにを言うんですか? 矢田さん?…」


 アムンゼンが、焦った…


 いや、


 私には、焦っているように、思えた…


 「…なに、お姉さん、いきなり…」


 隣にいた、バニラも、アムンゼン同様のことを、言った…


 が、


 私は、無視した…


 バニラを相手に、せんかった…


 「…おかしいのさ…」


 私は、言ってやった…


 「…なにが、おかしいんですか? …矢田さん?…」


 「…ここに集まった面子さ…」


 「…面子?…」


 「…そうさ…」


 「…ここに集まった面子になにが、問題があるとでも、言うんですか?…」


 「…おおありさ…」


 「…おおあり? …なにが、おおありなんですか?…」


 「…バニラさ…」


 「…エッ? …私?…」


 バニラが、驚いた…


 「…お姉さん…一体、なにを、言い出すの?…」


 「…そうですよ…矢田さん、一体、なにを、言い出すんですか?…」


 アムンゼンが、言った…


 が、


 私は、それも、無視した…


 今度は、オスマンを見た…


 アムンゼンの甥のオスマンを見た…


 オスマンは、憮然としていた…


 むしろ、怒っているようにも、見えた…


 が、


 なにも、言わんかった…


 憮然とした表情で、腕を組んでいた…


 「…アムンゼン…オマエの目的は、バニラじゃないのか?…」


 「…バニラさんが、目的? …どういう意味ですか?…」


 「…それは、私にも、わからんさ…」


 私は、言ってやった…


 「…だが、オマエの目的が、バニラであることは、明白さ…」


 私は、自信を持って、言ってやった…


 すると、アムンゼンが、黙った…


 「…」


 と、黙った…


 むしろ、バニラの方が、焦った…


 「…私が、目的って?…」


 と、呟いて、焦った…


 「…一体、それは、どういう?…」


 私は、さらに、


 「…アムンゼン…オマエは、以前、リンダを口説いたことがあったな…」


 と、言ってやった…


 「…エッ? …リンダを口説いた?…ウソ?…」


 と、バニラ…


 「…ウソじゃないさ…このアムンゼンは、リンダのファンさ…ハリウッドのセックス・シンボル、リンダ・ヘイワースのファンさ…」


 「…リンダのファン?…」


 「…そうさ…それで、以前、リンダにサウジに来ないか? と、誘ったのさ…」


 「…リンダを誘った?…」


 「…そうさ…それで、リンダが、このアムンゼンの誘いに乗って、サウジに行けば、きっと、サウジから出さん手筈だったに違いないさ…」


 「…出さん手筈って?…」


 「…きっと、愛人か、なにかに、して、手元に置こうとしたに違いないさ…そうだろ? …アムンゼン?…」


 私は、聞いてやった…


 が、


 当然ながら、アムンゼンは、答えんかった…


 「…」


 と、黙っていた…


 「…そして、太郎…」


 「…そのお猿さん?…」


 「…そうさ…もしかしたら、太郎の飼い主は、アムンゼン、オマエじゃないのか?…」


 「…殿下が、そのお猿さんの飼い主?…」


 「…そうさ…そして、そう考えれば、色々納得するさ…」


 私は、断言した…


 「…なにを、納得するんですか? …矢田さん?…」


 「…どうして、アムンゼン、オマエと太郎が、仲がいいか、納得できるのさ…」


 「…」


 「…そうだろ?…」


 私は、アムンゼンに聞いてやった…


 アムンゼンは、答えんかった…


 「…」


 と、黙ったままだった…


 すると、だ…


 今度は、バニラが、


 「…お姉さん…どうして、殿下の目的は、私なの?…」


 と、聞いてきた…


 「…それは、わからんさ…」


 私は、答えた…


 「…わからない?…」


 「…でも、オマエが、目的なのは、間違いないさ…」


 「…どうして、私が、目的だと、わかるの?…」


 「…この中で、男が、欲しい女と言ったら、オマエだけだからさ…」


 「…私だけ?…」


 「…私は、平凡さ…だから、欲しい男は、いないさ…でも、オマエは、美人で、おまけに、有名人…だからさ…」


 私は、言ってやった…


 だが、なぜ、このアムンゼンが、バニラを欲するのか、わからんかった…


 このアムンゼンが、バニラを欲したことはない…


 バニラを好きだったことはない…


 このアムンゼンは、リンダのファンだった…


 リンダとバニラは毛色が、違う…


 リンダは、おとなしめ…


 それに、比べ、このバニラは、野性的…


 タイプが違う…


 だから、このアムンゼンが、バニラを欲するのは、おかしい…


 が、


 もしかしたら?


 もしかしたら、マリアのせいかも?


 と、私は、気づいた…


 このアムンゼンは、マリアが好きだからだ…


 だから、マリアを手に入れるために、母親のバニラをも、手に入れようとした…


 そう考えれば、辻褄は合う…


 が、


 それならば、なぜ、もっと以前にそうしなかったのか?


 謎が、残る…


 だから…


 わからん…


 わからんかった…


 が、


 私が、アムンゼンと、そんなやりとりをしていると、マリアが、


 「…アムンゼン…アンタ…ママをどうにか、しようとしているの?…」


 と、直球で、聞いた…


 すると、当然ながら、アムンゼンは、たじろいだ…


 みっともないほど、動揺した…


 明らかに、マリアの質問に、動揺した…


 アムンゼンは、マリアに頭が上がらん…


 それが、もろに、出た感じだった…


 私は、それを、見て、気づいた…


 ふと、気づいた…


 何度も言うように、このアムンゼンは、バニラのファンではない…


 が、


 おそらく、バニラをどうこうしようとしている…


 バニラの身を確保しようとしている…


 将を射んとする者はまず馬を射よ…


 この例えではないが、ホントは、欲しいものが、あれば、その周りのものから、篭絡しろという、言葉がある…


 つまりは、バニラが、欲しいのは、マリアが、欲しいから…


 通常ならば、そう考える…


 何度も、言うように、アムンゼンは、マリアに首ったけだからだ…


 が、


 だとすれば、おかしい…


 謎がある…


 マリアを自分の手元に置くために、マリアの母親である、バニラを、同じように、手元に置きたいのならば、すでに、できたはずだからだ…


 その機会は、すでに、数えきれないほど、あった…


 が、


 そんなことは、一度もしなかった…


 それが、なぜ?


 なぜ、今回、そんな真似をしたのか?


 私が、考え込んでいると、


 「…お姉さん…私が、殿下の目的って、どうして、わかったの?…」


 と、バニラが、聞いた…


 私は、即座に、


 「…アムンゼンは、きっと、オマエに、私の護衛をさせたかったのさ…」


 と、答えた…


 「…お姉さんの護衛?…」


 「…そうさ…」


 「…でも、なんで、そんな真似を?…」


 「…たぶん、オマエを私のそばに置くことで、一人にさせたかったんじゃないのか?…」


 「…一人に? …どういうこと?…」


 「…このアムンゼンは、自分の父親と兄が争っているから、それを、仲裁できるのは、自分ひとりだと、言っていた…」


 「…」


 「…それが、ウソかホントかは、わからんさ…そして、その父親と、兄が、争っていることで、なぜか、この矢田にも、父親と兄の側近の人間が、近づいてくると、言った…二人のケンカを仲裁できるのは、このアムンゼンだけ…そのアムンゼンは、この私を気に入っている…だから、父親と、兄の側近が、私に近づいて、私を味方につければ、このアムンゼンを味方につけれると、私に言った…その結果、バニラ…オマエを護衛につけた…私を守るためさ…」


 「…」


 「…それが、ホントか、どうかは、私には、わからんさ…が、とにかく、私の身近に、バニラ…オマエが、いることになったのは、変わりないさ…」


 「…」


 「…そして、太郎さ…」


 「…このお猿さん?…」


 「…いくら、なんでも、太郎と、アムンゼンは、仲が、良すぎるのさ…普通に考えれば、このアムンゼンが、太郎の飼い主と考えるのが、自然さ…」


 私は、言った…


 言いながら、考えた…


 「…つまりは、今回の一件、おそらくは、最初から、このアムンゼンの書いた、お芝居だったのさ…私が、バニラ…オマエと大喧嘩を、して、家出した…そこに、この太郎が、現れた…そのときから、このアムンゼンの書いた、お芝居が、始まっていたのさ…」


 私は、断言した…


 自信を持って、断言した…


 「…そして、おそらくは、あのアンナという女…私と同じくらいの年齢の金髪碧眼の美人…あのアンナは、オマエの側近じゃないのか? …つまりは、あのセレブの保育園のツアーで、私たちは、あのサロンバスで、いっしょになった…そこで、あのアンナは、太郎を、わざと離した…太郎を、私に知ってもらうためだ…そして、太郎には、事前に、私の顔を覚えこませていた…だから、太郎は、あのバスの中で、一目散に、私の元に、やって来た…そうだろ?…」


 私は、一気に、言った…


 「…今回の騒動の黒幕は、アムンゼン…オマエさ…」


 私は、断言した…


 「…だが、アムンゼン、なんで、そんな真似をした?…」


 私は、聞いてやった…


 「…オマエは、そんなヤツじゃなかったはずさ…私と会って、変わったはずさ…以前のオマエじゃなかったはずさ…それが、なぜ?…」


 私が、聞いてやったが、アムンゼンは、答えんかった…


 うんともすんとも、言わんかった…


 が、


 なにも、答えんことが、少なくとも、私の指摘が、間違ってないことの、証明だった…


 私の指摘が、間違ってないことの、証(あかし)だった…


 そして、アムンゼンに皆の視線が集まった…


 アムンゼンが、どう答えるのか、皆、知りたかったからだ…


 が、


 答えんかった…


 すると、だ…


 いきなり、太郎が、アムンゼンのそばに近寄って、アムンゼンの顔を手で、撫でた…


 まるで、アムンゼンを慰めるように、手で撫でたのだ…


 アムンゼンは、そんな太郎の仕草に、心を開いた…


 「…太郎…いつも、オマエは、ボクに優しいな…」


 アムンゼンが、ゆっくりと、呟いた…


 「…ボクは、オマエが、好きだ…心の底から、好きだ…だから、安心して、矢田さんの元に預けることが、できた…」


 アムンゼンが、続けた…


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