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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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72/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 72

強烈に、不満だった…


 だから、ホントは、


 「…ふざけたことを、言うんじゃないさ…この矢田トモコのどこが、お子ちゃまさ…」


 と、私は、言ってやりたかった…


 が、


 言わんかった…


 周囲の目があるからだ…


 周囲の目…


 つまりは、このアムンゼンと、バニラの目があるからだ…


 このアムンゼンは、マリアが、好き…


 そして、バニラは、マリアの母親…


 その二人の前で、この矢田トモコが、マリアを罵るわけには、いかんかった…


 この状況で、罵るわけには、いかんかったのだ…


 だから、後で、二人っきりになったら、言ってやるさ!…


 誰も、いなくなったら、言ってやるさ!…


 私は、誓った…


 誓ったのだ!…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…さあ、お姉さんも早く…」


 と、先に、アルファードに乗ったバニラが、急かした…


 だから、私は、内心、


 「…勝負は、この後さ…マリア…」


 と、誓った…


 自分自身に、誓った!…


 「…今に見てろさ…」


 と、私は、誓った…


 「…目にもの、見せてやるさ…」


 私は、自分でも、意外なほど、3歳のマリア相手に、怒っていた…


 正直、自分でも、認めたくないが、怒っていたのだ…


 私が、アルファードに乗り込むと、バニラが、オスマンに対して、照れたように、


 「…久しぶりね…オスマン…」


 と、言った…


 私は、その言葉で、以前、このオスマンが、バニラとタイマンの勝負をしたことを、思い出した…


 バニラとオスマンが、タイマン=一対一の勝負=ケンカをしたことを、思い出したのだ…


 原因は、アムンゼンにあった…


 アムンゼンは、アラブの至宝と呼ばれるほどの優れた頭脳の持ち主…


 だが、小人症ゆえに、人前に出れない…


 それゆえ、このアムンゼンは、クーデターを起こして、実質的に、自分が、サウジアラビアの国王になろうと、画策した…


 が、


 失敗した…


 それゆえ、日本に身を隠していた…


 身を隠して、復活の時を探っていた…


 そして、真逆に、このオスマンは、サウジアラビアで、放蕩が、し過ぎて、追放された…


 そして、国王から、このアムンゼンに、面倒を見てやってくれ、と、依頼された…


 が、


 それは、形だけ…


 実際は、アムンゼンの監視だった…


 このアムンゼンが、また、なにか、したら、大変なことになる…


 それゆえ、アムンゼンに、このオスマンを監視につけた…


 が、


 アムンゼンは、それを、見抜いた…


 それゆえ、このオスマンを捕らえようとした…


 その舞台が、マリアとオスマンの通う、セレブの保育園だった…


 セレブの保育園の発表会=お遊戯会だった…


 発表会=文化祭のようなものだ…


 要するに、お祭りに、乗じて、このオスマンは、逃げ出そうとした…


 が、


 当然のことながら、アムンゼンの護衛が、オスマンを阻んだ…


 セレブの保育園から、逃げ出すことが、困難になったオスマンは、とっさに、マリアを人質に取った…


 それを、見た母親のバニラが、敢然と、オスマンに、闘いを挑んだ…


 ホントは、バニラは、有名人…


 世界的に有名なモデルだ…


 そのバニラが、子持ちでは、マズい…


 ホントは、3歳の娘が、いては、マズい…


 仕事に影響が、出るからだ…


 モデルや、タレントの女子は、いわば、女をウリにする、仕事…


 それには、独身の美人が、一番…


 若さが、必須だが、いかに、若く、美しくても、子供が、いては、人気に影響が、出かねない…


 人気が、急落しかねないからだ…


 だから、隠した…


 娘のマリアがいることを、隠した…


 それゆえ、当日は、バニラは、セレブの保育園のお遊戯会には、来ないはずだった…


 が、


 内緒で、来ていた…


 この矢田には、行けないと、言っていたにも、かかわらず、実は、来ていたのだ…


 そして、このオスマンが、マリアを人質に取って、逃げ出そうとする場面に遭遇した…


 バニラが、怒らないはずが、なかった…


 まさか、自分の娘が、人質に取られるなど、夢にも、思わなかったに違いない…


 バニラは、敢然と、オスマンの前に立ちはだかった…


 結果、バニラとオスマンは、タイマンの勝負になった…


 ガチンコのケンカになった…


 バニラは、180㎝の大女…


 しかも、元ヤン…


 ケンカに自信があった…


 だから、オスマンと一対一のケンカをした…


 が、


 勝てんかった…


 バニラは、善戦したが、後一歩で、オスマンには、勝てんかった…


 オスマンに屈した…


 が、


 そのオスマンの前に、今度は、葉問が、現れた…


 そして、バニラに代わって、オスマンと闘った…


 その結果、オスマンは、敗れた…


 バニラとの勝負で、オスマンが疲れていたことも、敗北の理由かも、しれんかった…


 私は、今、この二人を見て、そんなことを、思い出していた…


 思い出していたのだ…


 すると、オスマンが、バニラの言葉に、


 「…そうだな…」


 と、短く、答えた…


 ぶっきらぼうと、言っていいの、かもしれない…


 が、


 なんとなく、このオスマンも照れているというか…


 バニラと再会して、どう対応していいか、わからん様子だった…


 だから、短く、


 「…そうだな…」


 と、返答したのが、わかった…


 わかったのだ…


 そして、そんなふうに、この二人を見ていると、実にお似合いの二人だと、思った…


 二人とも、長身の美男美女…


 オスマンは、30歳ぐらいだが、このバニラは、21歳…


 10歳近く、歳は離れているが、実にお似合いの二人だった…


 が、


 それでは、困る…


 困るのだ…


 なんといっても、このバニラは、この矢田の夫、葉尊の父の葉敬の愛人…


 二人の間には、このマリアがいる…


 だから、バニラと、オスマンが、どうにか、なっては、困る…


 困るのだ…


 私は、思った…


 思ったのだ…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…お似合いですね…」


 と、アムンゼンが、言った…


 「…なにが、だ?…」


 私は、言った…


 語気を強めて、言った…


 「…なんですか? 矢田さん…なにを怒っているんですか?…」


 と、オスマンが、慌てた…


 「…ボクが、言いたいのは、このクルマは、大勢のひとたちが、乗るには、合っていると、言いたいだけです…」


 オスマンが、説明する…


 「…なんだと?…」


 「…ほかに、一体、なにが、あると言うんですか?…」


 オスマンが、釈明した…


 そう言われると、この矢田も、どう返答していいか、わからんかった…


 返答に、窮した…


 仕方なく、


 「…すまんかったさ…」


 と、詫びようとした…


 が、


 マリアが、


 「…ウソは、ダメよ…アムンゼン…」


 と、アムンゼンを叱った…


 「…ウソ? …なにが、ウソなんですか? …マリア…」


 「…クルマにお似合いなんて、言うわけないじゃない…きっと、ママとオスマンを見て、お似合いと、言ったんでしょ?…」


 「…」


 「…でも、ママには、パパがいるの…歳は離れているけど、素敵なパパが、いるの…だから、いくら二人が、お似合いでも、付き合っちゃ、ダメなの…」


 マリアが、断言した…


 「…ねっ…ママ?…」


 「…バカね…マリア…私が、オスマンと付き合うわけないじゃない…」


 「…その通りだ…」


 オスマンも、同調した…


 が、


 二人が、意識しているのは、明らかだった…


 二人の空気が、微妙だった(笑)…


 だから、私は、


 「…不倫は、ダメさ…」


 と、念を押した…


 「…そんな…不倫なんて、お姉さん…」


 と、バニラが、返答したが、その声は、弱々しかった…


 っていうか、塩らしかった…


 あるいは、その声に、女を感じたと言うか…


 いつもの、元ヤンのバニラでは、なかった…


 なかったのだ…


 「…お姉さん…オレも、そんな気は…」


 と、オスマンが、抗弁した…


 が、


 私は、それを無視した…


 「…不倫が、いかんのは、相手を裏切る行為だからさ…」


 「…相手を裏切る行為って?…」


 と、バニラ…


 「…夫でも、妻でも、結婚しているにも、かかわらず、他の男女と、関係することは、相手を裏切ることさ…これは、まだ結婚していなくても、付き合っている恋人が、いれば、同じさ…」


 「…」


 「…だから、いかんのさ…」


 私は、言った…


 強く、言った…


 すると、皆、黙った…


 一言も、口を利かんかった…


 同時に、その場の空気が、重たくなった…


 なぜか、重たくなった…


 なぜか、アムンゼンまで、落ち込んでいた…


 私は、なぜ、アムンゼンが、落ち込んでいたのか、わからんかった…


 謎だった…


 が、


 気付いた…


 今、私が、言った、


 …相手を裏切る行為…


 と、いう言葉が、アムンゼンに刺さったのだ…


 なぜなら、アムンゼンは、以前、クーデターを起こした…


 クーデターを起こして、国王の座を狙った…


 その事実を思い出した…


 思い出したのだ…


 だから、マズかったと、思った…


 まさか、アムンゼンのことを、言うつもりは、これっぽっちもなかったが、おそらく、私の言葉は、バニラとオスマン以上に、このアムンゼンに刺さったに違いないからだ…


 だから、マズいと、思った…


 が、


 どうすることも、できんかった…


 まさか、


「…アムンゼン、オマエのことじゃないさ…」


とは、言えんかったからだ…


だから、言葉に、詰まった…


すると、アムンゼンが、


「…矢田さんの言う通りです…ひとを、裏切っては、いけません…」


と、力なく、呟いた…


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