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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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48/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 48

私が、仰天して、叫ぶものだから、女子高生たち4人が、ビックリして、私を見た…


 「…お姉さん…知っているんですか?…」


 が、


 その質問には、私は、答えなかった…


 代わりに、


 「…オマエ…今、どうして、アンナと言った? …ハンドルネームは、たくさん、あるんだろ? …それが、どうして、アンナと、すぐに、言った…」


 と、聞いた…


 聞いたのだ…


 が、


 女子高生は、


 「…だって、変わってるでしょ?…」


 と、返答した…


 「…なにが、変わってるんだ?…」


 「…外人みたいだし、現に外人だった…」


 「…外人だった? …どうして、わかった?…」


 「…そのハンドルネームの投稿者の他の動画を、見たの…そしたら、金髪のキレイなお姉さんが、映ってた…だから…」


 「…だから、そのアンナってひとのハンドルネームだけ、覚えたんだ?…」


 と、別の女子高生…


 「…そう…ほかのは、全部、お姉さんと、太郎ちゃんの動画だけだったけれど、そのアンナって、ハンドルネームの動画だけ、外人の金髪のキレイなお姉さんが、映ってたから…」


 「…それって、コレ?…」


 別の女子高生が、急いで、スマホで、検索して、その動画を見せた…


 「…そう、コレ!…」


 アンナと指摘した女子高生が、言った…


 私は、急いで、


 「…それを、見せてくれ…」


 と、頼んだ…


 すると、すぐに、私に、そのスマホを見せてくれた…


 そのスマホの画面には、あのアンナと呼ばれた女が、映っていた…


 紛れもない、あのアンナが、映っていた…


 …間違いない!…


 …あの女だ!…


 金髪碧眼の美人…


 あのサロンバスの中で、会った女だ…


 太郎の持ち主だ…


 私は、合点がいった…


 私は、納得がいった…


 同時に、


 …やはり、あの女か?…


 …あのアンナが、絡んでいたか?…


 と、思った…


 なにを、目的にしているか、しらんが、あのアンナが、関係していたか?


 と、気付いた…


 私は、


 「…すまんかったさ…」


 と、女子高生たちに礼を言った…


 そして、女子高生たちに、頭を下げた…


 「…すまんかったさ…礼を言うさ…」


 それから、太郎にも、


 「…太郎、オマエも、しっかり、彼女たちに、礼を言わねば、ならんゾ…」


 と、告げた…


 当然のことながら、太郎は、キョトンとしていた…


 意味がわからなかったに、違いないからだ…


 だから、太郎は、無言で、私を見ていた…


 私は、そんな太郎を見て、


 「…この女子高生たちに、こうやって、頭を下げるのさ…」


 と、再び、私が、彼女たちに、頭を下げて、見せた…


 それから、


 「…太郎も、私と同じように、頭を下げなきゃ、ダメさ…」


 と、言った…


 言いながらも、当然、太郎には、理解できんと思った…


 私の言葉が、わかるわけがないからだ…


 が、


 違った…


 まるで、私の言葉が、わかったように、彼女たちに、ペコリと、頭を下げた…


 そんな太郎の姿を見て、4人の女子高生たちが、口々に、


 「…太郎ちゃん、凄い…」


 「…太郎ちゃん、頭がいい…」


 と、言って、手を叩いて、喜んだ…


 が、


 実は、この中で、一番、驚いたのは、この私だった…


 この矢田トモコだった…


 まさか、私の言葉が、通じるとは、思ってもみんことだったからだ…


 だから、私の中で、ますます、太郎に対する疑惑が、高まった…


 一体、この太郎は、これまで、どこで、誰に飼われていたのか?


 どこで、どんなふうに、芸を仕込まれて、いたのか?


 そんなことを、考えずには、いられんかったからだ…


 私は、太郎を、見ながら、考えた…


 考え続けた…


 

 それから、女子高生たちと、離れ、私は再び、散歩に専念した…


 正直、後は、たいしたことは、なかった…


 私が、太郎の首にひもをつけ、歩いていたから、道行くひとは、驚いて、太郎を見た…


 まさか、猿が、街中を歩いているとは、誰も、思わんかったからだ…


 が、


 それだけだった…


 さっきの女子高生たちのように、私に話しかけてくる者は、誰もいなかった…


 ただ、猿が、散歩をしているのを、見て、

珍しいと、思ったのだろう…


 驚くだけだった…


 きっと、あの女子高生たちも、一人なら、私に話しかけて、こなかったに違いない…


 誰でも、同じだが、群れれば、勇気が出る…


 気が大きくなる(笑)…


 いわゆる、ヤンキーが、大勢で、群れるのと、いっしょ…


 誰もが、一人では、皆、おとなしい…


 だから、あの女子高生たちも、ひとりなら、私に話しかけてくることも、なかったに違いない…


 私は、思った…


 そして、散歩が、終わり、自宅に戻った…


 自宅に、戻ると、私は、太郎と、ふたりきりになった…


 いや、


 ホントは、ふたりきりという表現は、間違っている… 


 太郎は人間では、ない…


 太郎は、猿だから、一人と一匹が、正しいのかも、しれん…


 が、


 私にとって、そんなことは、どうでも、よかった…


 太郎と、いっしょにいられるのが、嬉しかった…


 なぜなら、私は、普段は、一人ぼっち…


 夫の葉尊は、仕事に出かけるから、昼間は、一人ぼっち…


 だから、正直、つまらないと、感じたこととが、多々あった…


 が、


 太郎が、身近にいることで、その孤独もなくなった…


 よく一人暮らしの男女が、年齢が、高くなれば、なるほど、ペットを飼いたがるが、その気持ちがわかった…


 痛いほど、わかった…


 そして、ペットを飼ったひとたちが、皆、口を揃えて、


 「…ペットじゃ、ありません…家族です…」


 と、いう気持ちもわかった…


 これは、私にとっても、同じだった…


 太郎は、ペットではなかった…


 太郎は、家族だった…


 太郎は、猿だが、家族だった…


 私は、思った…


 心の底から、思った…


 太郎が、ただ、可愛かった…


 太郎が、ただ愛おしかった…


 まるで、私は、太郎に恋していた…


 まさかとは思うが、一瞬、自分でも、そう思ったほど、私は、太郎が、愛おしかった…


 だから、太郎を抱いた…


 思いっきり、抱いた…


 そんなときだった…


 ピンポンとチャイムが鳴った…


 誰か、来たのだ…


 私は、インターホンの前に行き、誰が、やって来たか、見た…


 インターホンのカメラ越しに映った映像を見た…


 黒いサングラスをかけた、大柄な男だった…


 …まさか、葉尊か?…


 …葉尊が、やって来たのか?…


 考えた…


 が、


 葉尊は、日本の総合電機メーカー、クールの社長…


 めったなことで、昼間、自宅に帰って来ることはない…


 ということは、葉尊では、ないかも、しれん…


 私は、インターホンの向こうの画像を、ジッと見た…


 私の細い目をさらに、細くして、ジッと見た…


 そして、考えた…


 考えたのだ…


 もしかして、この人物は?


 私が、大体、当たりは、ついた…


 と、ほぼ、同時に、


 「…お姉さん…開けて…」


 と、いう声がした…


 私は、その声に、聞き覚えがあった…


 その声の主を、知っていた…


 それは、バニラ…


 バニラ・ルインスキーだった…


 「…バニラ…オマエ、何の用だ?…」


 私は、言った…


 強く、言った…


 嫌な女だった…


 二度と顔も見たくない、女だった…


 思い返せば、およそ二週間ちょっと前、このバニラと大喧嘩をして、私は、このマンションを飛び出した…


 このマンションから、飛び出して、家出をした…


 つまり、この矢田が、家出をした原因を作った女だった…


 私は、太郎と会わなければ、どうなっていたか、わからん…


 返す返すも、どうなっていたか、わからん…


 生か死か…


 それほどの極限状態に、追い込まれる原因を作った女だった…


 私が、そんなことを、考えていると、


 「…なんの用って?…」


 と、バニラが返した…


 「…そうさ…一体、なんの用事で、やって来たのか? 聞いたのさ…」


 「…リンダに頼まれて…」


 「…リンダだと?…」


 「…リンダに頼まれて、お姉さんを守ってと頼まれて…」


 すっかり、忘れていた…


 そうだ…


 そうだった…


 このバニラが、私の護衛だった…


 このバカ、バニラが、私のボディーガードだった…


 すっかり、忘れていた…


 リンダが、あのアムンゼンの豪邸で、私を守るのに、バニラが適任と念を押した…


 その事実をすっかり、忘れていた…


 が、


 この矢田とバニラは、天敵…


 互いに、相手を忌み嫌っている…


 それが、どうして、私を守ることに、同意したのか?


 謎がある…


 どうして、この矢田を護衛することに、同意したのか?


 わけが、わからん…


 ひょっとして…


 ひょっとして、このバニラこそ、刺客…


 この矢田の命を狙う刺客かも、しれん…


 ボディーガードの名目で、私に近付き、私に信用させ、最後には、私を殺す…


 推理小説で、よくある手だ…


 もしかしたら、バニラも、それを狙ったのかも、しれん…


 が、


 バニラは、リンダのお墨付きを、もらっている…


 ということは、どうだ?


 あのリンダもグルなのか?


 このバカ、バニラといっしょになって、この矢田の命を狙っているというのか?


 悩んだ…


 悩みまくった…


 すると、だ…


 バニラが、画面の向こう側から、


 「…チッ…」


 と、小さく舌打ちをする声が聞こえた…


「…まったく、葉敬に頼まれたからだけれども、あのクソチビを守るなんて…なんで、この私が…」


と、愚痴をこぼす声が、聞こえてきた…


私は、それで、合点がいった…


バニラが、やって来たことに、合点がいった…


おそらく、リンダが、葉敬に言ったに違いなかった…


リンダが、葉敬に頼んで、バニラを動かしたに違いなかった…


だから、


「…わかったさ…入れば、いいさ…」


と、言った…


そして、スイッチを押した…


すると、マンションのエントランスのドアが開かれ、バニラが、マンションに入った…


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