35歳のシンデレラ 大道芸人編 47
私は、どうしていいか、わからんかった…
まさに、思考が、硬直化した…
思考が停止した…
一切、ものが、考えられなくなった…
この頭脳明晰な矢田トモコとしては、ありえんことだった…
が、
その頭脳明晰な矢田トモコにありえんことが、今、起こった…
だから、困った…
困ったのだ…
私は、どうして、いいか、わからんかった…
まさに、頭の中が、パニック状態だった…
すると、だ…
「…キャー!…」
と、いう悲鳴が、聞こえた…
まさか、太郎が、この女子高生たちを襲った?
葉尊の警告が当たった?
これは、大変なことになった!
私は、急いで、我に返った…
我に返って、慌てて、太郎を見た…
すると、太郎が、眼前の女子高生に抱き着いて、女子高生の顔を舐めていた…
ペロペロと舌で、舐めていた…
「…やめて、太郎ちゃん、くすぐったい…」
女子高生が、甘えたように、言った…
私は、驚いた…
同時に気付いた…
太郎は、オスだ…
紛れもない、オスだ…
だから、手練れの女たらし…
女が、喜ぶ術を心得ている…
そう、気付いた…
私は、唖然とした…
太郎は、生粋のプレイボーイだった…
生粋のモテ男だったのだ(爆笑)…
同時に、どうするか、考えた…
このままにして、いいものか、どうか、悩んだ…
なぜなら、眼前の女子高生は、喜んでいる…
だから、太郎を止めるのも、酷というか…
このままにしていて、いいものか、どうか、悩んだ…
悩んだのだ…
が、
太郎は、しつこかったというか…
女子高生が、4人いたが、代わる代わる、女子高生たちの顔をペロペロと、舐め回していた…
しかも、しかも、だ…
4人の女子高生たちは、それを嫌がるどころか、明らかに、嬉しがっている…
そして、その光景をスマホに写して、楽しんでいた…
…うーむ…
困った…
困ったのだ…
楽しんでいるのに、それを、止めるのも、どうかと、思った…
「…キャー…太郎ちゃん、止めて…」
とか、
「…太郎ちゃんたら、そんなこと、しちゃダメ…」
とか、
とにかく、甘い声を出しまくった…
私は、それを、見て、考えた…
昔、テレビの番組で、ある男の芸能人だかが、
「…女の人のダメは、ダメじゃない!…」
と、苦笑しながら、言っていたことを、だ…
要するに、ダメと言いながら、ホントは、ダメじゃない(笑)…
いわゆる、本音と建て前というか…
よく、若い女が、男とクルマでデートをして、ホテルに連れ込まれそうになり、
「…そんなことを、するひととは、思わなかった…」
と、憤慨するが、本音は、違う…
すでに、女の頭の中では、そんなことは、事前に想定済み…
下着も、新品に替え、ホテルに連れ込まれても、いいように、事前に準備している(笑)…
それと、同じだ…
この眼前の女子高生たちも、同じ…
この若い女子高生たちも、今、私が、言った、芸能人の男が、言った、例といっしょ…
だいぶ、以前に聞いたから、随分前のことだと、思うが、女の本質は、変わらん!
一ミリも、変わらん!
同じ…
同じだ!…
時代が、少々変わっても、本質は、変わらん…
きっと、大正時代の女も、江戸時代の女も、なにも、変わらんに違いない…
私は、思った…
思ったのだ…
私は、そんなことを、思いながら、この4人の女子高生たちを、見た…
この矢田の女子高生時代は、およそ、二十年前…
今、35歳だから、当たり前だ…
私は、そんなことを、考えながら、一方で、
…若いな…
とも、思った…
いわゆる、
「…キャー、キャー…」
が、似合う…
そんな年頃だ…
声も、甘い…
この矢田も、自慢ではないが、声は、可愛らしい…
カワイイ声だと、盛んに言われた…
が、
さすがに、二十年前の声は出ない…
35歳にしては、かわいらしい声をしているに過ぎない…
これは、アイドル歌手を見れば、わかる…
ユーチューブにアップされているアイドルの女を見れば、わかる…
例えば、35歳の女が、15歳のときと、映像を比べる…
当然のことながら、歳を取っている…
それは、外見は、もちろんだが、声にも、現れる…
大抵が、声が、低くなる…
15歳のときよりも、声が、低くなる…
それが、普通…
稀に、アニメ声というか…
35歳でも、15歳のときと、同じ声をする女がいるが、これは、ある意味、気色悪いというか…
突然変異だ(爆笑)…
私は、そんなことを、考えた…
そんなことを、考えながら、この目の前の女子高生たちを見ていた…
相変わらず、太郎にペロペロと、顔を舐められていた、4人の女子高生たちを、私の細い目で、見ていた…
「…オマエたち、もういいだろう…」
私は、言った…
「…私は、太郎と散歩をせねば、ならん…」
私は、言った…
「…散歩?…」
女子高生のひとりが、驚いたように、言った…
「…そうさ…散歩さ…」
私は、答えた…
「…どうして、散歩なんですか?…」
「…それは、太郎が、一日中、家に閉じこもっていては、ストレスが、溜まって困ると思ったのさ…」
「…一日中、家に閉じこもって?…」
別の女子高生が、驚いたように、言った…
だから、
「…なんだ? …なにか、私が、おかしなことでも、言ったか?…」
と、聞いた…
眼前の女子高生の反応が、あまりにも、予想外だったからだ…
「…いえ、どうして、家に閉じこもっているのかなと?…」
「…どういう意味だ?…」
「…だって、お姉さんと太郎ちゃんが、大道芸をしている姿が、ネットにアップされて、ダントツで、再生数を稼いでいるのに…」
と、女子高生が、不満げに、言った…
私は、驚いた…
たしかに、この女子高生の言うことは、わかる…
が、
そんなことは、考えても、みんことだった…
予想もせんことだった…
だから、困った…
返答に困った…
なんて、答えて、いいか、わからんかったからだ…
「…せっかく、あれだけの再生数を稼いでいるのに…」
と、さらに、別の女子高生も、言った…
が、
私は、頭の中で、別のことを、考えた…
再生数を稼いでいるのは、わかる…
が、
問題は、その動画を誰が、ネットに投稿したか? だ…
それに、気付いた…
「…オマエたち、その動画は、誰が、投稿したか、知っているか?…」
「…そこまでは…」
女子高生たちが、言葉を濁した…
が、
一人の女子高生が、
「…でも、たしか…」
と、躊躇いがちに、切り出した…
「…たしか、なんだ?…」
「…お姉さんと、太郎ちゃんの動画をアップしているのは、主に、一人のひとだと、思った…」
「…ひ、ひとり?…」
あまりに、意外な言葉だった…
私は、太郎と、大道芸をしているのは、大勢のひとたちが、見ている…
現に、私と太郎が、大道芸をしている姿を、大勢の観客が、スマホで、撮影していた…
が、
それを、ネットにアップしているのは、一人?
一人だけ?
それでは、あまりにも、少ないというか…
不自然だった…
私が、そんなことを、考えていると、
「…なに、言っているの? …一人のわけ、ないじゃない!…」
と、別の女子高生が、否定した…
そして、目の前で、スマホの動画を見せた…
…たしかに、この女子高生の言う通り、何人ものひとが、私と太郎の姿を、ネットにアップしていた…
だから、一人ではない…
それを、見た、私と、他の女子高生、3人が、一人だと、言った、女子高生を見た…
非難するように、見た…
が、
非難された、女子高生は、反論した…
「…違う!…」
と、大声で、反論した…
「…私が、言いたいのは、違う! …そうじゃない!…」
「…なにが、そうじゃないの?…」
と、別の女子高生が、咎めた…
「…これを、見て!…」
一人のひとが、動画を投稿していると、指摘した女子高生が、言った…
「…なに?…」
「…このお姉さんと太郎ちゃんの動画は、たしかに、いっぱい、ネットに投稿されている…でも…」
「…でも、なに?…」
「…たぶん、同じ人が、ハンドルネームを変えて、投稿していると、思う…」
「…どうして、わかるの?…」
「…動画が、いっしょ…」
「…いっしょ?…」
「…ほら、スマホで、撮っても、皆、スマホのカメラの位置が、違うから、同じ動画は、撮れない…今、例えば、私たちが、このお姉さんと、太郎ちゃんを、撮っても、同じ…立ち位置が、皆、違うから、同じ動画は、撮れない…」
「…」
「…じゃ、全部、同じなのか?…」
私は、聞いた…
「…いえ、同じじゃない!…」
「…同じじゃない?…」
「…要するに、同じ動画でも、編集して、例えば、5分とか、15分とか、色々、投稿している…」
「…よく、知ってるね?…」
別の女子高生が、言った…
「…だって、アタシ…結構、動物好きだし、お姉さんと太郎ちゃんの動画は、気に入ったから、ネットで、検索しまくったら、似たような動画が、たくさん出てきて、それが、一人の人物によるものだと、なんとなく、わかっちゃって…」
「…ホントに、一人の人間なの?…」
「…今は、もちろん、違う…」
「…エッ? …でも、それじゃ、今の話と…」
「…アタシが、言いたいのは、一人のひとが、ハンドルネームを変えて、このお姉さんと太郎ちゃんの動画をたくさんアップして、それを見て、他のひとたちも、動画を、アップした…つまり、呼び水っていうか…」
女子高生が、もどかしそうに、説明する…
私は、そんな女子高生の話を唖然として、聞いていた…
あまりにも、意外と言うか…
考えても、みんことだったからだ…
そして、私が、唖然としていると、別の女子高生が、
「…アンタ…そのハンドルネーム、わかるの?…」
と、さっきの女子高生に聞いた…
「…わかるよ…」
と、呆気なく、女子高生が、答えた…
「…なんて、名前?…」
「…たしか、アンナとか…」
女子高生が、答える…
「…アンナだと?…」
私は、仰天した…
仰天して、その名前を叫んだ…




