↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 37

「…葉尊…オマエ…どうして、ここが?…」


 私は、言った…


 思わず、口走った…


 が、


 私は、そう口走りながらも、夫の葉尊が、このリンダの学生時代からの友人だということを、思い出していた…


 いや、


 単なる友人どころではない…


 二人は、親友だった…


 リンダは、最初、私と会ったとき、ヤンと名乗った…


 ヤンと、名乗り、男の格好をしていた…


 だから、最初、男だと、思った…


 当たり前のことだった…


 だから、ヤンが、リンダとは、気付かんかった…


 ヤン=リンダ・ヘイワースとは、気付かんかった…


 そして、こともあろうに、ヤン=リンダとは、気付かん私は、リンダとの決闘を控え、どうすれば、リンダに勝てるか、ヤンに相談した…


 今、考えてみれば、まさに、バカの極み…


 バカの極みだった(涙)…


 これから、決闘する相手に、どうすれば、私が勝てるか、相談していたのだ…


 そして、偶然、私の筆跡を見たヤンが、私が、書道が得意であることを、見抜いた…


 私は、それまで、書道が、得意であることは、すっかり、忘れていた…


 なぜなら、書道を習ったのは、小学生のときだったからだ…


 鬼のように、怖い母親に命じられ、嫌々、書道の教室に通った…


 まさに、思い出したくもない、私自身の黒歴史に他ならなかったからだ…


 結局、私は、書道で、リンダと闘った…


 勝負は、互角だった…


 っていうか、そもそも、私は、なぜ、リンダと闘わなければ、ならんかったのか?


 それは、リンダが、私にケンカを売って来たから…


 すでに、説明したように、リンダ=ヤンは、私の夫の葉尊の幼馴染(おさななじみ)…


 その葉尊が、親友のヤン=リンダに一言も、相談せず、勝手に、私と結婚すると聞いて、いてもたってもいられず、ハリウッドから、飛んできたのだ…


 そして、私に勝負を挑んだ…


 レスリングでも、剣道でも、将棋でも、なんでもいい…


 私が、選んだ競技で、勝負すると、断言した…


 そして、私に負ければ、金輪際、葉尊には、手を出さないと、約束すると、宣言した…


 だから、私は、勝負した…


 リンダと闘った…


 結果、私は、勝利した…


 私は、今、それを、思い出していた…


 今さらながら、思い出していた…


 「…葉尊…オマエ…」


 言いながら、私は、戸惑った…


 なにしろ、目の前にいるのは、葉尊だ…


 私の夫だ…


 その夫と住む、家から、私は、いきなり、逃げ出したのだ…


 原因は、すでに、何度も説明したように、バニラ…


 バニラ・ルインスキーだった…


 私とバニラは、元々、仲が悪い…


 バニラが、私をバカにするからだ…


 私より、14歳下にも、かかわらず、この私を尊敬しないからだ…


 バニラは、世界的に、著名なモデル…


 身長も、180㎝ある…


 が、


 この矢田は、159㎝…


 だから、舐められるのかも、しれん…


 おまけに、あのバニラは、美人…


 この矢田は、平凡だ…


 だから、自分より、下に見たのかも、しれん…


 そんなわけだから、普段から、私とバニラは、仲が悪かった…


 顔を会わせれば、必ずケンカになった…


 が、


 顔を会わせんわけには、いかんかった…


 なぜなら、バニラは、葉尊の父、葉敬の愛人…


 葉敬とバニラの間には、マリアという3歳の娘がいる…


 だから、嫌でも、ときどきは、顔を会わせんわけには、いかんかった…


 そして、十日前、私の怒りが、爆発した…


 バカ、バニラと、大げんかになったのだ…


 これが、マズかった…


 タイミング的に、マズかった…


 なぜなら、まもなく、葉敬が、やって来るタイミングだったからだ…


 葉敬は、台湾の大企業、台北筆頭の創業社長…


 一代で、台北筆頭を世界的な大企業に成長させた、台湾の有名な企業経営者…


 台湾では、知らない者は、いない…


 その葉敬が、まもなく来日する…


 そのタイミングで、あのバカ、バニラと大喧嘩をしたのは、マズかった…


 「…クソチビ…オマエなんか、葉敬に、言って、葉尊と離婚させてやる!…」


 と、バカ、バニラが、私に啖呵を切った…


 こともあろうに、14歳も年上のこの私に向かって、啖呵を切った…


 だから、私は、頭に来た…


 だから、私は、頭に血が昇って、


 「…やれるものなら、やってみれば、いいさ…」


 と、バニラに、怒鳴った…


 「…真逆に、オマエなんか、お義父さんに言って、台北筆頭から、追い出してやるさ…私が、オマエよりも、もっと、若くて、キレイな女を見つけてきて、お義父さんに紹介してやるさ…そうすれば、オマエなんか、用済みさ…」


 私は、言ってやった…


 そして、それが、いかんかった…


 その言葉が、バニラの怒りに火を点けた…


 火を点けたのだ…


 きっと、それは、バニラの弱点だったのだろう…


 私は、気付かんかったが、バニラの弱点だったのだろう…


 バニラは、まだ21歳…


 若い…


 そして、美しい…


 私は、バニラは、嫌いだが、それは、認めざるを得ない…


 が、


 おそらく、バニラは、それが、わかっている…


 自分のウリが、自分の若さと、美しさだけだと、わかっている…


 だから、今、私が言ったように、


「…オマエより、若く美しい女を、お義父さんに紹介してやるさ…」


 と、目の前で、言われて、頭に来たのだろう…


 自分のウリが、若さと美しさしか、ないことが、痛いほど、わかっているからだ…


 まして、バニラは、モデル…


 自分より、若く、美しい女を、それなりに、見ているに違いない…


 バニラは、世界的に有名なモデルだが、バニラよりも、若い女は、いかに、美しくても、まだ無名…


 しかし、いずれは、バニラに取って代わる…


 誰もが、歳を取るからだ…


 それが、痛いほど、わかっているから、私が、


「…オマエよりも、もっと若くて、キレイな女を、お義父さんに紹介してやるさ…」


 と、言ったから、頭に来たのだ…


 そして、その結果、私は、逃げ出した…


 夫の葉尊と住む家から、逃げ出した…


 なぜなら、もうすぐ、来日する葉敬に、バニラは、間違いなく、私のことを、言いつけるからだ…


 この矢田の悪口を、お義父さんに、言いつけるからだ…


 それを、聞いた葉敬は、私を叱るに決まっているからだ…


 バニラは、お義父さんの愛人…


 この矢田は、お義父さんの息子の葉尊の妻…


 つまり、この矢田は、葉敬の義理の娘…


 どっちを取るかと言えば、バニラを取るに、決まっているからだ…


 それが、わかっているから、この矢田は、逃げ出した…


 葉尊と住む、マンションから逃げ出した…


 私は、今、目の前に、私の夫の葉尊を見ながら、そんなことを、思い出していた…


 思い出していたのだ…


 「…すまんかったさ…」


 私は、言った…


 夫の葉尊に、告げた…


 「…葉尊…オマエに一言も告げず、逃げたりして、すまんかったさ…」


 私は、葉尊に詫びた…


 「…オマエが、心配してくれたのは、わかっていたさ…でも、私は、お義父さんに会わせる顔がなくてな…」


 私は、言った…


 が、


 目の前の葉尊は、なにも、言わんかった…


 「…」


 と、なにも、言わんかった…


 なんの反応もなかった…


 「…すまん…許してやってくれ…」


 私は、葉尊に頭を下げた…


 が、


 なんの反応もなかった…


 これは、マズい!


 私は、思った…


 私は、考えた…


 葉尊は、私にいまだかつて、こんな態度を取ったことがない…


 私が、


 「…すまんかったさ…」


 と、頭を下げれば、すぐに、許してくれた…


 それが?


 と、いうことは、どうだ?


 葉尊は、それほど、怒っているということか?


 私は、思った…


 この矢田が、こうまで、頭を下げたにも、かかわらず、怒っているとは?


 一体、どうすれば、いい?


 私は、悩んだ…


 悩んだのだ…


 が、


 私が悩んでいるのを、見て、葉尊が、笑っているのが、わかった…


 唇にうっすらと、笑みを浮かべているのが、わかった…


 私は、それを、見て、仰天した…


 夫の葉尊が、私に対して、そんなふうな態度を取ったことは、かつてなかったからだ…


 そして、気付いた…


 目の前の人物が、夫の葉尊でないことに、気付いた…


 「…オマエは、葉問?…」


 私は、叫んだ…


 「…オマエは、葉問だな!…」


 と、決めつけた…


 決めつけたのだ…


 私が、断言すると、目の前の葉問が、笑った…


 実に、楽しそうに、笑った…


 そして、


 「…お久しぶりです…お姉さん…」


 と、告げた…


 この葉問…


 実は、葉尊の弟…


 私の夫、葉尊の双子の弟だ…


 だから、外見は、夫の葉尊と瓜二つ…


 同一人物に、見える…


 が、


 雰囲気が違う…


 葉尊は、真面目一筋…


 それに、比べ、この葉問は、ヤンキー上がりというか…


 どことなく、危険な雰囲気がある…


 そして、女というものは、その危険な雰囲気に惹かれる女が、一定数いるものだ…


 この矢田も例外ではない…


 実は、少しばかり、この葉問に惹かれていた…


 あくまで、少しばかりだ…


 この矢田は、葉問の双子の兄の葉尊の妻…


 だから、まさか、夫の弟と、どうにかなることは、できんからだ…


 そして、この葉問…


 実は、存在しなかった…


 実在しなかった…


 どういうことかと、言えば、この葉問は、夫の葉尊のもう一つの人格だった…


 本物の葉問は、幼いときに、死んだ…


 事故で、死んだのだ…


 そして、それは、葉尊が、葉問にいたずらをしかけた結果だった…


 その結果、葉問の死がトラウマになった葉尊は、自分の中に、葉問を作り出した…


 無意識に、自分のカラダを使って、死んだ葉問を、再生させた…


 それが、葉問だった…


 夫の葉尊のもう一つの人格だった…


 そして、この矢田は、なぜか、この葉問と気が合った…


 誰にも、言えんが、夫の葉尊とよりも、気が合った…


 まさか、これは、口外できん秘密だった…


 こともあろうに、夫よりも、夫の弟といる方が、気が合うとは、口が裂けても、言えんかった…


 言えんかったのだ…


 そして、この葉問…


 この葉問は、なぜか、この矢田の味方だった…


 この矢田が、葉尊と結婚して、葉尊との関係に悩んでいたときにも、必ず、この矢田の前に現れ、相談に乗ってくれた…


 また、この矢田が、ピンチのときにも、必ず、どこからか、現れ、この矢田を救ってくれた…


 だからだろう…


 この矢田が、夫の葉尊よりも、この葉問に心を奪われるのは、無理からぬことだった…


 なぜなら、安心できる…


 信頼できる…


 この矢田が、ピンチのときは、必ず、現れた…


 そして、頼れた…


 ヤンキー上がりだから、ケンカに強かったからだ…


 が、


 その一方で、この葉問は、自分がわかっていた…


 自分が、日陰者というか…


 あくまで、葉尊が作り出した、もう一つの人格であり、本当は、自分が、存在してはいけないことを、理解していた…


 だからだろう…


 私は、余計に、この葉問が、好きだったのかも、しれない…


 誰もが、そうだろう…


 能力があろうとなかろうと、


 「…オレが…オレが…」


 と、周囲の人間を押しのけて、前に出たい人間を好きな人間は、いない…


 それと、同じだ…


 そして、大抵は、


 「…オレが…オレが…」


 と、前に出たい人間ほど、能力が、ない(笑)…


 大抵が、自分から、周囲の人間を推しのけて、いかなければ、前に出れない人間が、多い…


 それは、なぜか?


 本人が意識すると、意識しないとに関わらず、本当は、自分の実力がわかっているのだろう…


 だから、前に出る…


 黙っていては、集団に埋もれてしまうからだ(笑)…


 が、


 実力はない(笑)…


 だから、出世等は、できない…


 例えば、自分は、会社で、言えば、課長になり、部長になり、もしかしたら、それ以上の地位に上がれるかも?


 と、思っていても、周囲の人間は、誰も、そうは、見ない…


 見るのは、同じような能力の人間だけ…


 ハッキリ言えば、高卒だったり、大学が、良くなかったりする人間が、


 「…社会に出れば、オレは、早稲田を出たヤツにも、慶応を出たヤツにも、負けない…」


 と、豪語する人間たちだ…


 要するに、いかにも、自分に都合よく考える人間たちだ(笑)…


 私は、それを、思い出した…


 そして、そんなふうなことを、考えながら、目の前の葉問を見た…


 見たのだ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。