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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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35歳のシンデレラ 大道芸人編 2

…葉敬が、来日する前に、やってやる…


 …葉敬が、来日する前に、ケリをつけてやる…


 私は、そう、思った…


 私は、そう、決意した…


 このバニラを、亡き者にしてやる…


 と、までは、言わんが、バニラに一泡吹かせてやると、思った…


 二度と、この矢田トモコ様に、立ち向かうことのないように、バニラに一泡吹かせてやらねば、ならんと、気付いた…


 が、


 問題は、なにをするか、だ…


 私は、身長、159㎝…


 バカ、バニラは、身長180㎝…


 まともに、やりあっても、到底、私に勝ち目は、ない…


 絶対に、ない…


 私は、考えた…


 が、


 元々、私は、正々堂々と、バニラとやり合うつもりなど、さらさらない…


 私は、このバニラに、体格でも、ルックスでも、足元にも、及ばない…


 それは、痛いほど、わかっている…


 が、


 頭脳は、勝っている…


 明らかに勝っている…


 そのことには、自信がある…


 なにしろ、私は、あのソニーが、作った大学を出ている…


 天下のソニーが作った大学を出ている…


 それに、比べ、このバカ、バニラは、中卒か、高卒に、過ぎん…


 私は、学歴で、他人を判断することは、あまりないが、こと、このバニラに至っては、その常識は、あてはまらん…


 とにかく、当てはまらんのだ!…


 私は、思った…


 心の底から、思った…


 そして、その思いが、カラダに出たのだろう…


 私は、いつのまにか、固く拳を握り締めていた…


 グッと、固く、拳を握り締めていた…


 すると、


 「…どうしたの? …矢田ちゃん、そんな怖い顔をして…」


 と、バニラの娘のマリアが、聞いて来た…


 私は、驚いた…


 マリアが、この場にいることを、すっかり忘れていたのだ…


 バニラのいるところに、マリアありではないが、このバニラが、プライベートで、いるときは、マリアが、いっしょに、いるときが、多い…


 当たり前だが、二人は、母子だからだ…


 そして、バニラは、普段、忙しい…


 世界的にも、有名なトップモデルだから、世界を股にかけて、活躍しているからだ…


 だから、プライベートでは、少しでも、このマリアといっしょにいる…


 普段は、世界中を駆け巡っているので、マリアといっしょに、いられないからだ…


 マリアは、まだ3歳…


 普段は、日本のセレブの保育園に通っている…


 だから、会えない…


 本当は、このバニラも、娘のマリアを連れて、仕事に行きたいだろうが、それは、できない…


 なぜなら、このバニラは、まだ21歳…


 世間では、独身で、通っている…


 だから、それが、バレたら、困る…


 自分の人気に直結するからだ…


 これは、例えば、日本で、21歳のカワイイ女のコが、実は、3歳の娘の母親であると、週刊誌にすっぱ抜かれたとする…


 それでは、人気を維持することは、できない…


 今の時代、アイドルの女のコに、処女性を求めているとは、思えないが、それでも、子供がいるというのとは、天地がひっくり返るほどの差に違いない…


 さすがに、アイドルが、処女でなくても、ファンが受け入れるが、子供がいるのでは、受け入れられない…


 アイドルとしては、受け入れられない…


 そういうことだ…


 私が、そう思っていると、


 「…矢田ちゃん、そんな怖い顔をして…」


 と、再び、マリアが、私に言った…


 私は、反射的に、


 「…なんでもない…なんでもないさ…」


 と、言った…


 バニラは嫌いだが、このマリアは、私になついている…


 この矢田になついている…


 この光景を見た、リンダ=ヤンが、


 「…ホント、マリアは、お姉さんが、好きなのね…」


 と、口を出した…


 すると、マリアが、それを受けて、


 「…ウン…矢田ちゃんが好き…」


 と、すぐに、返答した…


 「…だって、面白いんだもの…」


 …なに? …面白いだと?…


 …一体、どういう意味だ?…


 「…矢田ちゃんと、いっしょにいると、すごく楽しい…」


 マリアが続ける…


 が、


 私は、マリアの言葉が、気になった…


 一体、この矢田のどこが、面白いと言うんだ?…


 私は、全然、面白くなんてない…


 だから、


 「…マリア…私が、面白いとは、どういうことだ?…」


 と、聞いた…


 聞かずには、いれんかった…


 「…矢田ちゃんは、面白い…テレビで、お笑い芸人を見るより、ずっと、面白い…」


 マリアが、あっけらかんと、言った…


 私は、マリアのその言葉を許すわけには、いかんかった…


 一体、この矢田のどこが、面白いというんだ?


 一体、この矢田のどこが、お笑い芸人より、面白いと、言うんだ?


 私は、それを、聞きたかった…


 「…一体、私のどこが、お笑い芸人よりも、面白いというのさ?…」


 私が、怒りを押し殺して、マリアに、聞いた…


 すると、実にあっけなく、


 「…だって、テレビのお笑い芸人は、ウケを狙って、わざと、面白いことを、言うけど、矢田ちゃんは、天然だから…」


 と、言った…


 「…天然だと?…」


 「…ウン…天然…矢田ちゃんは、ウケを狙ってない…でも、面白い…」


 「…なんだと?…」


 この矢田のことを、まさか、そんなふうに、見ていたとは?…


 親が親なら、子も子も、だ…


 私は、思った…


 これまで、この矢田は、さんざん、このマリアを可愛がってきた…


 面倒を見てきた…


 が、


 その結果が、コレだった…


 コレだったのだ!…


 もはや、遠慮は、無用…


 この母子には、手加減無用!…


 二人そろって、地獄に堕ちてもらうしかない…


 天罰を受けて、もらうしかない…


 私は、思った…


 私は、


 「…許さん!…」


 と、言おうと思った…


 が、


 その矢先に、バニラが、


 「…お姉さん…マリアのことを、よろしくお願いします…」


 と、まるで、私に土下座せんばかりに、頼み込んで来た…


 「…お姉さんだけが、頼りです…」


 と、それまでとは、打って変わって、塩らしい態度で、私に接した…


 私は、今さらながら、このバニラにとって、いかに、このマリアが、大切か、思った…


 いかに、重要視しているか、再認識した…


 このバニラにとって、娘のマリアは、おおげさに言えば、自分の命よりも、大切…


 バニラにとっては、宝物に違いないからだ…


 それを、あらためて、再認識した…


 だから、


 「…バニラ…だったら、さっきの、私に対する態度は、なんだ?…」


 と、聞いてやった…


 「…態度?…」


 「…そうさ…さんざん、私をコケにするような態度をとって、私に、自分の娘の面倒を見てくれなんて、どういう了見なのさ?…」


 「…それは…」


 「…それは、じゃないさ!…」


 私は、私の細い目をさらに、細くして、言った…


 「…他人様のことを、さんざん、悪口を言っておいて、面倒を見てくれも、ないさ…」


 私は、怒った…


 すると、バニラが、黙った…


 「…」


 と、なにも、言わんかった…


 ただ、ジッと、その青い目で、私を見た…


 私は、美しいと、思った…


 このバニラが、美しいと、心底、思った…


 同時に、怖かった…


 こんなことを、言うと、おかしいかも、しれんが、怖かった…


 それは、なぜか?


 それは、私が、日本人だから…


 私が、アジア人だから…


 だから、欧米系の青い目に接したことが、あまりない…


 まして、このバニラは、美人…


 まるで、彫刻で、刻んだように、彫りの深い顔立ちだ…


 そんな美人のバニラが、無言で、その青い目で、私を睨むと、なんだか、怖かった…


 私が、このバニラに謝罪を要求しているにも、かかわらず、なんだか、怖かったのだ…


 だから、これ以上、なにを、どう言っていいか、わからんかった…


 私も、バニラ同様、ジッと、バニラを見たまま、黙った…


 互いに、ジッと、睨み合った…


 私の細い、黒い目と、バニラの大きく、青い目が、ぶつかった…


 激しくぶつかった…


 もはや、互いの衝突は避けれんかった…


 両雄並び立たず…


 この世界で、この矢田と、バニラは、互いに、同じ場所に立つことは、できんかった…


 つまりは、宿敵だった…


 私は、それを、たった今、確信した…


 心の底から、確信したのだ…


 もはや、互いの激突は、避けれんかった…


 と、そのときだ…


 「…二人とも、もう、いい加減にしたら…」


 と、いうリンダの声がかかった…


 リンダ=ヤンの声が、かかった…


 私とバニラは、その声で、二人とも、リンダを見た…


 リンダ=ヤンを見た…


 「…お姉さんも、年上なんだから、バニラを許してやったら…」


 「…」


 「…バニラも…いくら、お姉さんと親しいからって、お姉さんに甘えちゃ、ダメ…言っていいことと、悪いことがあるの…」


 これには、頭に来た…


 「…一体、私が、どこが、このバニラと親しいというのさ…」


 私は、聞いた…


 聞かずには、いられんかった…


 「…だって、親しいじゃない…ケンカするほど、仲がいいっていうし…」


 「…ふざけてもらっては、困るさ…私は、バニラと仲良くなんて、ないさ…」


 私は、大声で、怒鳴った…


 すると、いきなり、マリアが、


 「…ゴメンナサイ…矢田ちゃん、ママと仲良くして…」


 と、私に懇願した…


 だが、私は、マリアの願いをあっさりと、はねつけた…


 「…それは、ダメさ…」


 「…どうして? …どうして、ダメなの?…」


 「…バニラが、私に謝らんからさ…」


 「…ママが、謝らないから…」


 「…そうさ…」


 私は、言ってやった…


 途端に、バニラが、


 「…スイマセン…お姉さん…」


 と、私の前で、土下座した…


 これには、私も、驚いた…


 「…本当に、申し訳ありません…」


 私の前で、床に、額をつけて、土下座した…


 が、


 そのことが、かえって、私の不審を招いた…


 このバカ、バニラが、形だけとは、いえ、この矢田に対して、ここまで、するわけがない…


 とっさに、私の心に閃いた…


 なにか、ある!


 絶対、なにか、ある!


 私の大きな胸に、かすかな不安が宿った…


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