↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/7

火星人体験談 第四話

第四話公開しました

※未成年飲酒は法律で禁止されています。本作には度数14%以上の火星ビールなど過激な飲酒描写が登場しますが、主人公は医療ナノマシンを搭載したハイブリッドボディのため安全に分解しています。現実の飲酒は20歳になってから、ルールを守って適量を楽しみましょう。

※この物語は完全なるフィクションです。

初日の24時間勤務を地球の社畜スキルで無事に乗り越えた晴人。ルク社長から歩合ボーナスを支給され、命の恩人であるタナカたちと「初仕事大成功の歓迎会」を開催することに!しかし、出された火星ビールのアルコール度数は驚異の【14パーセント】。さらに会話の中で、太陽系の狂った1日の時間×アルコール度数の格差が明かされます。地球の常識を遥かに置き去りにした、火星のストロングな大宴会が今、幕を開けます!

「カンパーーーイ!!!」

シドニアシティの繁華街、超高層ビルの80階にある大衆居酒屋『赤砂亭』の個室に、野太い歓声が響き渡った。空間に浮かぶ立体的なジョッキのホログラムが、俺たちの乾杯の衝撃でパチパチとデジタルな火花を散らす。マーズ・デジタル・ソリューションズの開発第三チームによる、俺佐藤晴人の歓迎会だ。

24時間勤務を終えたばかりの同僚エンジニアたち、総勢10名ほどが、首のエラをペコペコと激しく動かしながら大盛り上がりしている。

「ハルト! 初日からあの星間決済の時差バグをワンオペで直すなんて、マジで英雄だぞ!」

「うちのAIコンパイラが30時間フリーズしてたロジックを、ただの条件分岐でへし折るなんて、地球人の根性は格が違うぜ!」

同僚たちが次々と俺の肩を叩き、目の前に並んだ巨大なジョッキを指差す。ジョッキの中には、美しく発光する琥珀色の液体。火星名物の生ビールだ。

「さあさあ、ハルトも飲んでくれ! 24時間働いた後のビールは宇宙一だぞ!」

チームリーダーのガリ副部長が3本の触手のうち2本を使って、俺の前にどんとジョッキを差し出してきた。

「ありがとうございます! いやあ、本当に喉がカラカラで……」

地球のブラック企業時代、深夜のサビ残明けにコンビニの缶ビールを煽っていた日々を思い出しながら、俺は勢いよくジョッキを持ち上げ、喉に流し込んだ。グビッ、グビッ、グビッ……。

「――っ!?!?ゴホッゴホッ!?」

喉を突き抜けた瞬間、頭がカッと熱くなった。美味い。もの凄く美味い。火星の地下水脈から採れたというホップの爽やかな香りと、ガツンとくる濃厚なコク。だが、それ以上に……。

「ふ、ふはっ……!? なんだこれ、めちゃくちゃガツンとくるな!?」一瞬で視界がぐにゃりと歪み、脳髄に直接電流が走ったかのような強烈な酔いが回ってきた。それを見たタナカが、隣でゲラゲラと笑いながら自分のジョッキを煽る。

「ハハハ! 言い忘れてたわ、ハルト。火星の酒を地球の感覚で一気飲みしちゃダメだって!」

「タ、タナカ……これ、アルコール度数いくつあるんだ?」

「火星の標準ビールはな、基本度数10%から14%がデフォルトだ。この星の大気は二酸化炭素が多いからな、俺たちのエコな代謝機能だと、これくらいガツンと強くないと『飲んだ気』がしねえのさ!」

「じゅ、14パーセント……!? 地球のストロング系の上をいってるじゃないか!」

地球のビールはせいぜい5%前後だ。一気飲みしていい度数ではない。慌ててお冷やを頼もうとしたが、その時、俺の胸の奥がドクンと心地よく脈打った。(高度のアルコール濃度を検知浄化します)脳内に直接、無機質なシステム音声が響く。するとどうだ。さっきまでぐわんぐわんと揺れていた視界が、一瞬ですっきりとクリアになった。それどころか、アルコールが純粋な熱量へと変換され、24時間勤務のわずかな残り香すら吹き飛んで、全身に凄まじい活力が満ち溢れていく。

「お、おおお……!? 酔いが一瞬で覚めて、逆に元気になってきた!」

「だろ? お前の身体は火星人ハイブリッド仕様だからな。火星のストロングな酒を燃料にして、パパッとエネルギー充填できるのさ!」

タナカが親指をグッと立てる。なるほど、この身体、酒を飲めば飲むほど元気になる永久機関か!地球では「酒に逃げる」ことしかできなかった俺が、火星では「酒でパワーアップ」している。なんと素晴らしい改造だろう。

「へえ、ハルトは火星のストロングビールがいきなりいける口か! 頼もしいねえ!」ガリ副部長が感心したように触手をパチパチと叩きながら、おつまみの『火星塩スルメ』を口に放り込んだ。

「しかし、火星の酒がこんなに強いなら、他の星はどうなんですか? さっきニュースで見た金星とか……」

俺が訊ねると、ガリ副部長はエラを一瞬だけ不機嫌そうにピクつかせ、ジョッキをドンとテーブルに置いた。

「金星だと? あいつらスピード狂の集まりは、お話にならんよ。あいつらの星の酒なんてな、一番強いやつでもアルコール度数2%から4%しかねえんだ」

「えっ? 2%? それ、地球の低アルコールサワーとか、ほとんどジュースレベルじゃないですか」

「そうだ!」

ガリ副部長は不満げに鼻を鳴らす。

「何度も言うが、金星は1日がわずか12時間しかない。あいつらはその短い時間の中で、地球人の2倍のスピードで働き、3倍のスピードで決済を通し、爆速で経済を回してる。つまり、あいつらには『じっくり酔っ払って寝っ転がる時間』なんて1分たりとも無いんだよ!」

「なるほど……。酒に酔ってる暇があったら、1秒でも長く働いて金を稼ぎたいってわけですか」

地球のブラック企業のトップ層みたいな発想だ。思い出しただけで胃が痛くなる。

「その通りだ。あいつらは2%の薄い酒を栄養ドリンク代わりにガブ飲みして、脳を1ミリも麻痺させることなく、徹夜で数字のチャートを睨みつけてる。まさに『12時間労働・12時間不眠』の化け物どもさ。我が社の『24時間働いて24時間丸ごと遊ぶ』という、火星のゆとりあるホワイトな文化とは根本的に合わん!」

ガリ副部長が憤慨していると、今度はタナカが「まあ、金星はまだマシな方だけどな」とニヤリと笑った。

「ええっ!? 金星の2%よりさらに薄い星があるんですか!?」俺の言葉に、ガリ副部長が大きく頷く。「ああ、あるともさ。金星のさらに内側、太陽に一番近い『水星』なんてな、なんとアルコール度数1%から2%の酒しか存在せんのだよ」

「1パーセントって……地球なら法律上、ほぼノンアルコール飲料ですよ。それ、飲む意味あるんですか?」

「意味なんてねえのさ」とタナカが呆れたように肩をすくめる。

「ハルト、水星の環境を教えてやるよ。あそこは太陽系最速の超加速社会だ。何せ、あいつらの星は1日がわずか6時間しかねえんだぞ?」

「ろ、6時間……!?」

俺は思わず計算した。火星の1日の、実に8分の1。地球の1日と比べても4分の1の短さだ。

「そうさ。あいつらの時間感覚は、金星のスピード狂どもすらのろまに見えるレベルなんだ。朝起きて、出社して、仕事して、退勤して、飯を食って寝るまでが、たったの6時間で完結する。そんな星で度数14%の火星ビールなんか飲んでみろ。酔いが回って気持ちよくなる前に、1日が終わっちまうだろ? だから、水星の居酒屋は全部『立ち食い・立ち飲み』で、滞在時間は平均5分だ!」

想像しただけで目が回りそうだ。水星人は物理的な時間の壁をサイボーグ並みの超スピードで駆け抜けている。もし俺が水星に転生していたら、初日の最初の6時間で脳の回路が焼き切れていただろう。

「……かと思えば、太陽系最大の質量を持つ『木星重力圏』は真逆だけどな」

ガリ副部長が今度はドッシリとした口調で、ホログラムメニューを操作した。

「木星はどうなんですか?」

「あそこの奴らが飲む酒は、文字通りヘビー級のバケモノだ。一番薄いビールですら最低15%、強い地酒になればアルコール度数15%から21%を平気で超えてくる」

「21%!? それ、もうビールじゃなくて日本酒や焼酎の原酒レベルじゃないですか!」

「ああ。何せ木星は【1日が72時間】もあるからな」

とタナカが冷や汗を流す。

「重力も強いし、1日も絶望的に長い。ハローワークにあった1日40時間勤務の地獄を耐え抜いた木星のエンジニアどもはな、21%の劇薬みたいな酒を胃袋に流し込んで、脳ミソを完全に麻痺させて、1回で30時間くらい気絶するように眠らないと精神がもたないんだよ」

水星は、1%の薄い酒を5分で煽って電光石火で駆け抜ける。

金星は、2%の酒を栄養ドリンクにして1秒の猶予もない中で働き続ける。

木星は、21%の劇薬で脳を焼き切って重力地獄を耐え忍ぶ。それに比べて、

ここ火星はどうだ。1日48時間。24時間きっちり働いてシステムを守り、終われば24時間丸ごと完全なオフ。14%の最高に美味いストロングビールを仲間と笑いながら飲み、残った時間でたっぷり趣味を楽しめる。

「地球でボロボロになって死にかけた時は絶望したけど……火星に来られて、本当に良かった」

「おいおい、ハルト、急に感動するなよ! よし、次は火星の超ド級ウォッカ『オリンポス・バースト』を空けるぞ!」

「いや、それは流石にナノマシンでも分解しきれずに死にますって!!」

個室の中に、今日一番の爆笑と歓声が響き渡った。気がつけば、窓の外のシドニアシティには、火星特有の少し青みがかった美しい朝日が昇り始めていた。24時間の勤務を終え、さらに丸一日を飲み明かした。それでも俺の身体には、ナノマシンがアルコールを変換した爆発的なエネルギーが満ち溢れている。地球での捨て駒のような日々は、もう過去のことだ。他星の過酷な労働とアルコール地獄を哀れみながら、俺はこの居心地のいい赤い惑星で、初めて手に入れた「自分のための時間」を、最高の仲間たちと共に贅沢に楽しんでいく。俺の火星ライフは、まだ始まったばかり。明日からの残り24時間の休日が、今から楽しみで仕方がなかった。



(第五話へ続く)

第四話をお読みいただきありがとうございました!

ナノマシンのおかげで、14%のストロングビールを飲むほど元気になってしまう晴人。地球のブラック企業時代にはあり得なかった、最強のエネルギー充填方法を手に入れてしまいました(笑)。それにしても、1日6時間の水星から1日72時間の木星まで、太陽系の時間とアルコールの格差は凄まじいですね。火星の1日48時間・週休3日(実質)が、いかに奇跡のホワイト環境であるかが身に染みます。激しい歓迎会も朝を迎え、晴人の火星最初の休日はまだまだ続きます!

読者の皆様へのお願い「火星のビール、ストロングすぎて草」「水星の居酒屋5分は過酷すぎる」など、少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)】で応援していただけると、執筆の爆速エネルギーになります!次回の第五話もお楽しみに!


お知らせ

本日より火星人体験談の投稿の頻度がしばらく不定期になります 理由は少し言えないことがありますがプライベートな話です それでも投稿はするので 引き続き火星人体験談をお楽しみください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。