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憧れの診療所勤務!  作者: 赤坂秀一
最終章 清川村を去った後
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最終話 私のこれから

お待たせしました最終話を更新しました!


城南市でジェンダークリニックの準備している飛鳥ですが、いよいよオープンです。


三部作でここまで書いて来ましたが、これで終わりです。

 上杉(うえすぎ)クリニックオープンまであと二日になり、今日から引越しです。重たい荷物や医療機材は業者さんにお願いして、私達はカルテや薬剤の移動をします。薬剤については補充の分を上杉クリニックの方に運送してもらっていたので、在庫の分を北条(ほうじょう)クリニックから上杉クリニックへ運びます。

飛鳥(あすか)さんカルテはこっちによろしく!」

 美彩(みさ)先生も朝からカルテの整理に追われています。

「あっ、この患者さんは最近来ないけどお元気にされてるかしら」

 名前を見ただけで患者さんの事解るのかな……

「美彩、早く片付けないと間に合わなくなるよ」

「うん、そうなんだけど…… 見てたら色々思い出しちゃってね」

「こんなに量があるなら電子カルテにしても良いんじゃないですか?」

「うん…… でも、電子にするには患者さんが少ないかな」

「電子カルテなんて駄目よ! 患者さんと話をしながら手書きしていくから名前を見ただけで思い出せるんだから」

 はあ、流石ですね、美彩先生を見習わないといけませんね。まあ、クリニックで電子カルテなんて贅沢です!

「飛鳥さん、初日は予約の患者さんはいるの?」

「はい、午前中に二人午後に一人予約があります」

「そう、それじゃ空き時間は内科の患者さんを診てもらって良い」

「ええ、構いませんよ」

 早速、ヘルプ要請です。

「多分初日は患者さんが多いと思うから」

 えっと、初日だからって患者さんは多いのかな…… 普通気分が悪くないとクリニックには来ませんよね……

「まあ、初日は行きつけの患者さんが来てくれるかも知れないね」

「行きつけの患者さん? ですか」

「ええ、クリニックには具合が悪い人ばかりじゃ無くて、定期的に薬をもらいに来る人や検査を受けに来る人もいるからね!」

 ああ、そうですよね。

「美彩先生、薬剤の整理終わりましたのでチェックをお願いします」

華奈(かな)、ありがとう」

 華奈さんって、ここのクリニックは長いですよね、私が初めてここに来た時にはいましたから。

「飛鳥さんも一緒に良いかしら」

「はい」

 私達三人は薬品庫に入りました。中には成分別にきちんと整理されていて、どこに何があるか分かり易くなっています。あっ、私のお薬もちゃんとありますね!

「分かり易く整理されていて良いですね!」

「華奈がきちんと管理してるからね」

 華奈さん凄いですね! でも自慢する事もなく平然としています。

「あっ、華奈代(かなよ)さんカットバンドありますか?」

 そう言って上杉先生も薬品庫に入って来ました。

「どうしたの秀一(しゅういち)さん」

「あっ、いやカルテで指を切っちゃって」

「もう、何やってるのよ!」

「うん……」

「上杉先生、これどうぞ」

 美彩先生が慌てるなか華奈さんがカットバンを差し出していました…… えっ、華奈代さん? 華奈さん?

「飛鳥さん、どうかしたの?」

「あの、華奈代さんですか? 華奈さんですか?」

「えっ、どういう事?」

 美彩先生はなんのことだか解ってないようですけど……

「あっ、私の名前は佐野華奈代(さのかなよ)です。飛鳥先生」

「あっ、そうなんですか……」

「今更どうしたの?」

 美彩先生にはそう言われましたけど……

「美彩先生や他の看護師さんも私の事は華奈って呼ぶのに上杉先生は華奈代って呼んでたからでしょ」

「あっ、はい……」

「あっそうか、私は医療センターにいた頃から華奈って呼んでたもんね」

「はい、飛鳥先生も今まで通り華奈って呼んでくださいね」

「あっ、はい、ありがとうございます」

 今までは知らなかったとは言え、私は省略して呼んでたんですね…… 本当、失礼しました。それにしても、今まで飛鳥さんと呼ばれていた私は華奈さんから飛鳥先生って呼ばれました。なんだか嬉しいような申し訳ないような変な気持ちです……

「あっ、そうそう! 駅前のクリニックに名前がついていたよ!」

「秀一さん、駅前のクリニックって?」

「駅前に新しい内科医院が出来ていて、えっと名前が…… ひらがなで、りな医院だったかな

「へえー、女医さんなんだ!」

「まあ、名前や看板からしたらそうみたいだね」

「ふーん、なんだかスナックみたいね!」

 梨菜も普通につければ良かったのに、同期とか言い辛いじゃない……

「飛鳥さん、どうかした?」

「あっ、いえ…… あっ、橋本大学から時計を頂いたんですね」

「うん、私の母校だから寄贈して頂いたの! あっ、飛鳥さんの母校でもあるわね」

 私と美彩先生でそう話していると……

「えっ、北山大学からも貰ったけど……」

「じゃあ、それは心療内科の待合室に飾れば良いじゃない。橋本からのは内科の待合室に飾るから」

 今までは偶にしか会わなかったから判らなかったけど…… 美彩先生と上杉先生って仲は良いんだよね……?

 引越しの方もほぼ終わりました。

「飛鳥さん、今日はクリニックでみんなで夕ご飯を食べるけど……」

 美彩先生にそう誘われましたけど、今日はこれから玲華(れいか)瑞稀(みずき)、それに梨菜(りな)二階堂(にかいどう)君で集まる事になっています。

「美彩先生、これから玲華達と約束があるので……」

「あら、そうなの」

「美彩先生、良ければ私だけご一緒しても良いですか」

 そうか、(しずく)は玲華がいるからこっちより美彩先生の方が良いかな。

「ええ、別に良いけど、飛鳥さんの方じゃなくて良いの?」

「はい!」

「飛鳥さん、良いの?」

「はい、玲華や瑞稀と一緒なので……」

「はあ…… そう」

 そういう事で私はひとり城南(じょうなん)駅の方へ行きました。

「飛鳥、こっちだよ!」

 あっ、玲華がいました。

「あれ、瑞稀は?」

「まだみたい!」

「あっ、飛鳥」

 そう言いながらある建物の中から出て来たのは梨菜でした。えっと、この建物は……

「飛鳥、ここが私のクリニックだよ!」

 そうか、駅前だからビルの一画をクリニックにしたんだ。

「梨菜、病院名はもう少しどうにかならなかったの?」

 玲華はそう言いますけど……

「えっ、なにか可笑しかった?」

 うーん…… 美彩先生もスナックみたいとか言ってましたよね……

「だから、何故ひらがなにしたの?」

「だって、それだったら誰でも読めるでしょう! それに医院と書いてあれば病院だと判るでしょう」

 まあ、梨菜の言う通りではあるけど……

「なんだか夜のお店みたいじゃない」

「そうかな……」

 やっぱり玲華は容赦なしによく言えるな……

「飛鳥、お待たせ!」

 瑞稀も来ました。

「梨菜、こちらは私が幼稚園の頃から一緒の関瑞稀(せきみずき)ね!」

「よろしく」

「こちらこそ」

「ねえ飛鳥、イケメンがいるって玲華に聞いたんだけど」

 えっ、イケメン? あっ、玲華が目を逸らした……

「ひょっとして義樹(よしき)君の事?」

 梨菜から訊かれましたけど……

「玲華!」

「別に良いじゃない、ただ一緒に飲むだけなんだから」

「えっ、食事じゃないの?」

「お酒も飲むでしょう」

 玲華、食道があれだけ大変な事になっているのに……

「玲華、しばらくお酒はやめといた方が良いんじゃない」

 私は胸の辺りを撫でながら言いました。

「うん、そうね……」

 玲華もなんとなく解ってくれたみたいです。

「ところで他の人達はどうしてるかな」

「あっ、カッキーの事なら解るけど」

「えっ、カッキーはどうしたの?」

「カッキーは橋本大学の消化器内科で講師をしてるよ」

 梨菜がそう言いますけど……

「という事は、カッキーも学生に講義をしてるって事!」

 玲華の言う通りだよね……

「凄いよね!」

 梨菜はそう言ってるけど……

「ねえ、講師って先生って事だよね!」

 瑞稀も話に入って来ましたけど……

遥香(はるか)静香(しずか)も大学に残っていたよね!」

「あの二人も講師とかになっているのかな……」

 などと話しながら久々に大学時代に戻ったように楽しく過ごしました。


 二日後、今日は上杉クリニックオープンの日ですが、診療時間前から、かなりの患者さんが来ています。美彩先生の話では、ほとんどの患者さんがお薬を貰うためオープンの日を狙って来てるようです。

「飛鳥先生、予約の患者さんがまだなので内科の患者さんを入れても良いですか」

 医療事務の早乙女(さおとめ)さんです。

「はい、予約の患者さんがお見えになったらそっちを優先してください」

 その後、すぐにカルテが準備され患者さんが来ました。

「おはようございます医師の今村飛鳥です。今日はどうされましたか?」

 この患者さん私の事をジッと見てますけど……

「はい、ちょっと喉が痛くて熱も少しあるようで……」

 聴診器で胸の音を聴いて咽喉も確認します。喉に炎症が見られますね。

「喉からの風邪ですので炎症を抑えるお薬を処方しますね」

「今村先生、私の事覚えてますか?」

 えっ、この患者さんは初めてだと思いますけど……

桑田幸雄(くわたゆきお)です。橋本大学で胃癌の手術をしました」

 桑田幸雄さん? あっ、私がBSLで初めて担当した患者さんです。

「はい、思い出しました。あれからお身体の方はどうですか?」

「はい、もうすぐ十年になりますけど問題ありません」

「そうですか、それは良かったです。お大事にして下さいね」

「はい、ありがとうございます」

 そう、話をして診察が終わりました。

「飛鳥先生、予約の患者さんが来ました」

「それじゃ、中に入れて下さい」

 しばらくして患者さんが入って来ました。

「先生、卵胞ホルモンの薬を下さい!」

 入って来ていきなりそう言われました。

「えっと、水野(みずの)さん承認は受けていますか?」

「いえ」

「それなら、まず検査を受けて承認を受けましょう」

 しかし、その患者さんは何だか項垂れています。

「先生も、他の先生と同じなんですね……」

 いや、しかし承認を受けてからでないと何か問題があると……

「この病気はGID学会のガイダンス通りにしないと患者さんにも私にも良くないんですよ」

「私にはそんなにお金が無いんです。大体薬も保険が効かないから毎回は無理なんです」

 多分こういう患者さんは多いんでしょうね……

「お薬は今何日分貰ってますか?」

「二週間分です。それを一ヶ月に分けて飲んでます」

「でも、それじゃほとんど効き目が無いんじゃ……」

「解ってますけど……」

「それなら月に一度注射をした方が良いと思います」

「でも、高いでしょう」

「うーん、二週間分のお薬代よりはちょっと高いですけど効き目はありますよ」

「注射の場合、普通どれくらいの頻度で打つんですか?」

「普通って言うか、大体二週間から四週間に一度注射する事になっています」

「じゃあ、それでお願いします」

 いや、お願いしますって……

「ですから、まずは承認を取りましょう」

「結局、先生は私達の事なんて解らないですよね! 当事者じゃ無いんだから」

「そんな事はないですよ!」

「いえ、そうなんです」

 私はそう言われて運転免許証と健康保険証を出しました。

「何をしてるんですか?」

「これは私の免許証と健康保険証です。私の身分は免許証で解ると思います。それと私の性別も健康保険証で解ると思います」

「何言ってるんですか! 先生は女でしょう……」

 彼女はそう言った後、私の性別を見て驚いているようです。

「先生は……」

「私はあなたと同じ性同一性障害です。だから、あなたの気持ちは良く解ります。だから、あなたにもきちんと治療をして欲しいんです」

 その後、彼女は検討しますと言って診察室を出て行きました。なかなか、仕事とか金銭面でも問題はありますけど、まだ、彼女は若いので早く治療をして欲しいです。きっと綺麗になると思うので……

「飛鳥先生、お電話ですけど……」

「予約ですか?」

「いえ、先生の事をご存知のようですけど……」

 誰でしょう……

「もしもし」

「飛鳥先生、お久しぶりです」

「えっと、奏音(かのん)ちゃん!」

「はい、私、北山大学の建築デザイン学部を受験する事にしたんです」

「そうなんだ、それじゃ城南市に来るの?」

「はい! だからその時は、先生に治療をお願いしたくて」

「ええ、もちろん! 奏音ちゃんは私のGID患者第一号だからね!」

「まだ、先の事は判らないですけどその時はよろしくお願いします」

 そう言って電話は切れました。そうか、奏音ちゃんも城南市に来るんだね! 私の事を頼って城南市にいろんな人が集まっています。これからも沢山の人達の悩みを解消できるように頑張らないとですね!

 私は性同一性障害という病気ですけど、いろんな人達に助けられて医師になり、ここまで来ることが出来ました。でも、今の社会ではまだまだ生き辛い事が多いと思います。だから私が少しでも手助けが出来ればと思います。これからいろんな病気や障害を患っている人が多くなると思いますけど、みんなが優しく寄り添ってくれるそんな社会になればと思います。


                  完

ジェンダークリニックをオープンしてこれからも忙しくなりそうな飛鳥ですが、三部作はこれで終了します。約三年間ありがとうございました。ここまで書き抜く事が出来たのは、沢山の方に読んで頂いたからです。ありがとうございました。新作も書いていこうと思いますので、その時はよろしくお願いします。

あと、作品についてのご感想がありましたら受付ますので、お寄せ下さい。もしよろしければ、ポイントもよろしくお願いします。


それでは新作で、お会いしましょう!


                赤坂秀一

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