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3-2

 季節が冬から春に移り変わり、寒さが緩んでいく中、僕と彼女は逢瀬を重ねていった。彼女と現実で会うたび、僕はこれまで以上に彼女に魅かれていく自分を感じていた。


 前にも言った、二人でいる時に感じる気の遣わなさ、しっくり来る感じもそうだったが、彼女のどこか純粋で、哲学的な思索にも、僕は面白みと魅力を感じていた。


 例えば、恵比寿ガーデンプレイスに行き、四十数階の展望台から東京の街並みを観た時。彼女はしばらくじいっと都心のビル群を眺め、ふっと言うのだった。


「本当、東京って。こんなにビルばっかり建てて人を集めちゃって、これ以上どうしようって言うんでしょうね」


「そうだね」


僕が笑いながら相づちを打つと、


「私、大学に入るのに長野から東京に出てきた頃、一人で渋谷に初めて行ったことがあったんです。それで、あの、スクランブル交差点。信号が赤で止まって、交差点の向かいを見たら、今から合戦でも起きるのかっていうくらいの人がいて。本当、びっくりして、人のマイナスエネルギーで、よくここ地盤沈下起こさないなって思いましたよ」


 そんな、なにか独特な考えを、彼女は時々僕に話してくれるのだった。


 それ以外にも、彼女はその落ち着いた外見とは裏腹に子供っぽいところがあり、それも僕の心を捕らえた。


鎌倉から歩いて湘南の浜辺まで行った時のこと。彼女はまだ寒い海に子供のようにはしゃいで、波打ちぎわまで近寄って、波が来たら後ずさりしてそれを避けるという、テレビドラマでありがちなあの遊びを延々とするのだった。案の定大きな波が来て彼女は履いていたブーツを濡らし、ふくれて僕に八つ当たりしてきた。


「もう、なんで一緒にやってくれないんですか?私だけ濡れちゃったじゃないですか」


「ええ?俺のせい?しかも私だけ濡れちゃったって。俺も濡れたら、それでよかったの?」


 僕は京王線沿いに住んでいて、彼女は高円寺だったから、僕たちは夢で会っていた頃と同じように大抵新宿駅で待ち合わせて、新宿駅で別れていた。別れる時、彼女は毎回京王線の改札口まで僕についてきて、僕の姿が見えなくなるまで、改札の前で手を振ってくれるのだった。その時の寂しげな笑顔はいつも僕の目に焼きついて、消えなかった。


 冬が終わる頃には、僕は既に彼女との関係がのっぴきならないところまで来てしまっていることを感じていた。彼女と僕は相変わらずプラトニックな関係を続けていたが、二人の間には一線を越えた男女より強い絆があることは明らかだった。僕にはこれが運命だと思われ、菜奈との結婚生活を清算し、彼女と一緒になりたいと考えるようになっていた。

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