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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第六章 ~王子の道は前へ~

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365【残された遺産】

ついに!ep.400!皆様のおかげです!

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 アナザーワールド中の建物、精霊屋敷(グスタヴィラ)や魁星の庵、スフィンクスの平屋、ゴブリンの家があるところはひとつの湖を囲って存在していて。そのあたり一帯はちょっと涼しい初夏のような気候が保たれている。

 湖と、屋敷を挟んで反対側は数種類の針葉樹が育つ森が広がっている。

 美しい姿に似合う声で鳴く鳥や、木の実を洞にコレクションするリスや、愛嬌のある猿、そのほかの動物は弱肉強食の食物連鎖の中にはあるが、雪を知らずに過ごしている。



 湖から更に蛇行した川の先にはテーブルマウンテンのような縁があって。

 まるで華厳の滝のように落ちていっている。


 落ち切った先からはまた蛇行が続き、他からの川も合流して少し広い河になっていている。

 その途中には、三日月湖で拾った、世界樹(ユグドラシル)の梢だったものが移植され、今では高さ二十メートルの数種の木がねじれて伸びた巨木になっている。

 もちろんエメラルド色の葡萄も常に鈴なりになっている。

 間引きせずとも全部甘い。

 それは小さいおっさん妖精たちとゴブリンが仲良く収穫して、せっせとジャムや干しブドウ、ジュースやワインに加工していた。

 いつの間にか地面に大きな穴を掘ってワインセラーまで作っていたのだ。


 段々大きく太くなっている河の河口の果てがあるのか、また違う形になっているのかは、もはや怖くて見に行けていない。

 なにしろ、ガスマニアとトルネキを合わせたような広大な広さになっていたのだ。


 いつしか、ゴブリンの繁殖管理はやめ、仕事を与え、アナザーワールドの中では彼らが人のような営みを行っている。

 ところどころにゴブリンハウスが出来ている。

 きちんと石と木造を組み合わせた三階建てになっていて、一階はゴブリン以外の野生の動物も棲んでいる。


 その中から、十分な躾と教育をし、地球から来たスフィンクスという高位精霊のお眼鏡にかなったホブゴブリンだけが、新たに俺、田中駿介と従魔契約をして、ゼポロ神の世界に出して、必要な作業に当たってもらっている。


 主に、街道整備と、エマイルモンド湖周辺のリゾート開発事業工事、それに健康ランドダンジョンの地下の農作業などだ。


 一方、従魔になりたいと頑張っているゴブリンたちは、初期に従魔契約をしたホブゴブリン達が交代になってリーダーとなり、アナザーワールドの整備をしたり、炭焼きの面倒を見たりしていた。


 

 精霊屋敷(グスタヴィラ)からおよそ八百キロ離れたところは、熱帯地域のようになっていて、4つの川から合流した長い広い河の水が絶えず蒸発しては三日に一度スコールになって降り注いでいる。


 その深い緑の中に、銀色の身体に疑似太陽を映して歩いている存在がいた。全身から感じるただならぬ雰囲気は、ダンジョンで見た時のままだ。


『そろそろ、我の思考は止まるであろう今度こそ」

「そうなの?」

『我は人工知能だからな。今は宇宙船の制御核が手を離れたので、段々止まるだろう。

 我を作ったものが言い残した説明によると』

「でも、止まりそうにないよね」

 血の池地獄ダンジョンのラスボスを務めていたクリプタン。

 鏡のように周りを美しく反射させている大きなクロムクラムドラゴンと言われていたロブスターだが。


 亜熱帯のジャングルの中を涼しげな顔で真っ黒な衣装で歩いている存在も一人。

 俺はその人の散歩に付き合わされている。


『ふむ。お前さんはもう人工知能で動いているわけではないねぇ』

「どういうこと?タナプス伯父さん」


『ほら、日本には付喪神とかいう言葉があるだろう?』

「物のお化けというか、道具に精霊や魂が宿るというあれ?」

『そうだ』


『我は、ガンベロイドという水生生物を模したゴーレムとして作られた存在だ。

 いつか来る、他の世界への脱出用の船を制御していた』


 あのダンジョンのどの部分が宇宙船かわかんないけど、

 渦巻きの回廊から先は確かにSFの映像に出てくるような未来的な構造だった。


『しかし、人々は平和や協調ということを忘れ、狭い世界で人同士醜く争い、殺し合い、数を減らしていた。

 その後最終的に、殺し合って滅したのか、食料が尽きて絶えたのかはわからぬ』


「そうだったんだね」


『あるいは、世界を捨てた神の最後の制裁だったかもしれぬ。

 次、この世界に訪れる者たちの災いとならぬよう。

 こんな、神の存在に夢を見るなど、人工知能としてもどうかと言う事なのだが。

 王子があなたが創造神の長男神と言っていた』


『私は、月と魂の神タナプスと呼ばれているよ。

 そして君はもう人工知能ではないよ』


 タナプス神は優しく大きな鋏を撫でる。

 そこにはタナプス神自身の美しい顔が映っている。


『人工知能ではない?』

「うん、俺の鑑定にも出ているね。いつの間にか変わっているんだよ。

 クリプタン。君は精霊だ」


『なんと』


「だから、君の思考は停止しないし、これから人工知能ではなく精霊の魂を持つものとして過ごすことになる」


『そうだね、君は新しくなった世界の一因だ。まあ新しくなってかなりたつけどね』


「精霊は、人々と仲良くしてもよいし、災いをもたらさないなら好きに過ごせばいいんだよ」


『好きに…』


 頭の両端から飛び出た二つの目がふよふよと動いている。


「どうする?ここは俺の固有空間だけど、しばらくここで考えて、これからどうするか相談しよう」


『そうだな…出来る事なら、役に立つことがしたい。

 我が何をすれば何の役に立つのか分からないが。

 場合によっては、もう少し動きやすい形になることが出来れば』


「なるほど」


『シュンスケ、人型ゴーレムを作ってやるか?』

「そうだね、上半身はもう形があるから、足回りを人に近付けて」

『うん、あの子と相談するといいよ』

「もしかしてアッシュ?」

『ああ。

 体が出来たら、その後は手伝ってあげるよ』


「わかった。伯父さんお願いします」


『王子、できたらこの体を使って新しい体を作ってほしい』

「いいの?」

『ああ。

 我の人工知能の核は両目の下にある』


「わかった」


 果たして、目の下の関節に手をかざすとそこがぱっかり開いて、ダンジョン核と同じような大きさの緑色の玉が入っていた。


 ふと思いついてその近くに、超合金のロボを近付けてみる。


「精霊化しているなら、とりあえずこっちに入れない?」

『ふむ…』

『じゃあさっき言ったし、今手伝ってあげよう。貸して』


 タナプス神に超合金を渡すと、指を添えてその腕を緑の玉に触れさせている。


 すると、ネオンのような色に輝いて、玉が数度点滅すると、真白になって静かになった。


 そしてタナプス神が握る超合金ロボの首が一人で動く。


『ふむ』

『大丈夫そうだね』


 叔父さんがそうっとロボを地面に置く。


『『おっと』』


 二人同じセリフ。


二十センチに満たないちいさなロボが膝をついて地面に手を付いている。


“きゃはは!くりぷたん。あたしもてつだってあげる”

『頼む』

“はい、たっちして”


緑色ちゃんがその手を持って立たせる。


『…何だか恥ずかしいです』


『いままではロブスターの形だったもんな。二本足は難しいかな』

『そうみたいですね。でも練習します』


「わはは、クリプタン、カッコイイゴーレムを作るな」

『宜しくお願いします』


緑色ちゃんに手を支えてもらいながらペコリ。


…可愛いんじゃね?



ミシッ ギシッ


クロムクラムドラゴンの抜け殻から軋んだ音がしてきた。

『ばらばらになるよ』

「おっと」


慌ててサブボックスに回収。

分解は後でアッシュたちにやってもらおう。


『じゃあ、行くね』

「ありがとう伯父さん」


『ありがとうございました』


そして、精霊屋敷(グスタヴィラ)から離れたそこに作られている大きな倉庫に改めてクロム色のロブスターの本体を置く。


「うわっバランスが!」


 ガラガラガラ ガシャーン


 甲殻の関節が全て外れてバラバラになっていた。


「あ~わるいけど分解しておいて。表面はクロムに見えてるけど中には他にもありそうだし」

≪わかった≫

“りょうかーい”


“…ほんと雑”


 そしてアッシュは既存のクローラーや樹脂タイヤが足の五本指ゴーレムの頭をいつの間にか超合金が座って乗れるコックピットみたいなのに取り換えていた。


≪ここによじ登るのはまだ無理だから≫

『はい、お願いします』

「これでいい?」


 俺が座らせてちいさなシートベルトをする。


 カチリ


 どうなってんだこれ!器用すぎだろアッシュ。


 ただ座ってるだけだけどな。

 クリプトンは座るとゴーレム全体に行き渡って動く。


 やっぱり精霊なんだね。

 超合金の顔もなんだか変わってるんだよね。某アニメのロボじゃなくて、アメリカンヒーローというか…目の周りはマスクっぽいけど人の鼻や口っぽい凹凸が出来ている。超合金が馴染んだというか…で、もうそこから抜けて大きなゴーレムに移動してても超合金の顔は変わったままだった。


 それにしても五本指ゴーレムも埴輪の頭だったものが随分格好良くなってるぜ。

 外側も半球型のアクリル樹脂。俺が日本のネット通販で頼んで母さんにウエストポーチに入れてもらったものに魔法で防汚防傷を付与したもの。


 相変わらず光ってる。


『では、街道工事に行ってきます』

「おー気をつけろよ!」


 そして、アッシュと俺、クリスの三人でクリプタンの新しいボディのデザインを描き始めた。

 学園の大型試作室で。


≪いつまで?≫

「別に急いでないけど」


『はい、まだ二本足歩行の練習中なので』

 三人の画用紙の間で正座する超合金。

 ちなみに精霊ちゃん達はおやつを嗜好品として楽しんでいるけど、

 クリプタンは土属性の魔素が好きらしい。

 ビー玉みたいなちいさな魔石を膝に抱えている。


「カッコ良いものを考えてあげましょう!」


≪いや、機能が第一だ≫

「シュンスケさんやハロルドみたいに飛べると良いですね」

「うーん、それはロボットを飛ばすんじゃなくて、飛ばす専用の物を考えてあげるといいよね」

「どうせなら俺達が乗り込めるようなものがいいよな」

 龍やペガコーンに乗って飛ぶのがすっかり普通になったウリサが言う。


「それって」

「魔道飛行船!」

「いやいや…それは速いのでは?」


「でも、出来るだろ?」

「まあ…あんなにデカいロブスターを動かせたんだしな」



 それでも何となく、水平にしたプロペラをいくつか並べたスケッチを描く。


「これで浮き上がりながら…これで…」


 …取り寄せるべきか?玩具のドローン。

 じっくり実験するのは面倒だし。ある程度はね…ずるをさせて。



「魔道飛行船であるか!それは」

 教授が皆にかぶさるように覗いて来た。 


「旅客用じゃないですよ!」

 

≪荷物運び用だ≫


「だとしても夢が膨らむのであるな」


「まあね、俺達にはいまさら空輸もって感じだけど」

「初めて行くところには必要なんだろ」


「アンシェジャミンも広いから」


≪結局その気だな≫

“ちょうしにのりやすい、としごろなのよね”


 視界の端でアッシュと緑色ちゃんがやれやれポーズだった。


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