【8話】その体、土に還してやるわ。
焼肉サンドが4個、アボカドシュリンプサンド2個、カツサンド6個。そして淑女としてサラダを用意。目の前に広がるおやつは完璧なセレクトである。バルコニールーフとして流れる水は日差しを和らげ、バルコニーの柵に絡まるスタージャスミンも合わせれば爽やかさで思わず笑みも溢れる。最近晴れの日が続き、思わず外でお茶をしたくなったのだ。おやつの時間だけど、ちょっとおしゃれして、髪も巻く。このあと街歩きをすることも考えれば素晴らしい昼下がりだ。まずは何から食べようか。最後に焼肉とカツを交互に食べるのは食事の楽しさを最大限に得られない。アボカドシュリンプから食べようと決意をし、手を伸ばす。
「今からお昼?」
焼肉サンドが1個取られた。
ガンッッ!!
セットしていたナイフとフォークが跳ね上がる。
「あんた!それ4つしかないのよ!バランス崩れるじゃない、空気読みなさいよ!というか毎度毎度勝手に来て、勝手に食べ物とっていって!盗人猛々しいわね!流石だわ!」
「落ち着きなよ、ターナ。淑女が台パンするもんじゃないよ。」
「うるっさいわね!淑女が〜とかいうなら、あんたも貴族なんだから人のもの取るんじゃないわよ!」
「友人なら同じお皿を共有することもあるさ。」
「友人ならね?」
「おー、この味付け何?珍しい味するなぁ」
「はしたない真似する割には、舌だけは高貴のようね!」
最悪だ。こいつが現れただけでも気分を害すのに、ティータイムまで邪魔されて、神を恨みたくなってくる。
「あれ?食べないの?カツサンドも貰っちゃうよ。」
思わずナイフを握る。
「シオン、その体、土に還してやりましょうか。」
「やだなぁ、ターナがいうと洒落になんないよ。それにこんなに食べきれないでしょ。」
「いやねぇ…!あんたみたいに軟弱者ではないから食べ切れるのよ。それにあんたを処理するためにもお腹は満たしておかないとね?」
もう本当にいやだ。
「今日はね、ターナにお願いがあってきたんだよね。」
言葉が出ない。驚愕である。お願いがあってこの態度?え、……本当に言葉が出ない。
「100個くらい宝石が欲しくて。種類は何でもいいんだけど、カラフルなのか、輝きが強いやつがいいな。」
「あ、あんた……真剣に言っていて?」
「当たり前じゃない。用事がなかったら来ないよ。」
目の前の男が同じ人間に思えないのだけれど。
あぁ、きっと今夢を見ているのね。ゴミが話せるはずないもの。
「子供達が喜ぶような宝石がいいな。」
「………何に使うのよ。」
「みんなで宝探し。いいでしょ。」
「シオン、何考えてるのよ。あんた、今まで子供達を見ているだけで、良くも悪くも何もしてこなかったじゃない。」
「えー、ずっと見てたの?えっち。」
「はっ倒すわよ。」
「僕、結構子供達に悪戯してるよ?」
「するんじゃないわよ!いい大人が!悪戯じゃなくて、守りなさいよ。」
「だって、僕も遊びたいんだもん。」
ため息しか出ない。
「楽しそうじゃん?」
はぁ。もう1人の大人がこんなのだから、私が子供達を守らなければ。
「なに?あなたが子供達に悪戯したいから、宝石を100個創れって?絶対に嫌よ。」
「今回は悪戯じゃないさ。ほら、子供達が自分たちの陣地を主張する流行りがまだ続いているけど、自分がいる場所も知らずに陣地を主張するのもおかしいだろ?だから、ここを知ってほしいっていう親心だよ。」
「遊びでしょうよ。」
「遊びだからこそだよ。」
「子どもたちの遊びに大人が介入するのは余計なことよ。」
やっぱりくだらないことだった。わざわざ介入してお山の大将にでもなりたいのかしら。――吐き気がする。
「まぁ、そう言わずにさ。大人が童心を持つのも大事だし、子供が大人と遊ぶのも貴重な機会になるでしょ。」
「私は反対よ。それに忙しいの。この後外出するし。」
そう、街歩きをしないといけないのだ。こいつに構っている暇はない。早く食べ終わろうとアボカドシュリンプサンドを手に取る。
ばぁっしぁぁぁぁん!!
……は?全身が冷たい。上から水が降ってきた。
「おい、ブルーサンダー!表に出てこいよ!決闘だ!」
「でてこーい!弱虫!」
叫んでいる声が聞こえてきた。なんかずっと銃撃音も鳴っている。
「今日も元気だねぇ。」
向かいの男はケラケラ笑いながら、呑気に髪をかきあげていた。
「見てよ、ターナ。弾がこっちまで飛んできたみたいだよ。なかなかの向こう見ずな行動だね。」
弾がバルコニールーフに当たって、水の流れを壊したらしい。
「やっぱり、武器は使用禁止にしたほうがいいかしら。」
「子ども達も勝手に学んでいくから大丈夫でしょう。」
「また無責任なことを。学ぶというなら、規制されることで学ぶこともあるじゃない。」
「ここはあの子達にとって夢の世界だよ?自由にさせてあげなよ、メディ。」
「だから、」
「ところでさ、ターナはこれから出かけるんでしょ?子ども達の様子も見にいくんでしょ?」
シオンを見ればもう乾いていた。
「どう?僕ならすぐに乾かしてあげるよ。風属性として、ドライヤーなんかに負けないさ。髪もドレスも一瞬だよ。どう?1回、宝石100個。」
ガンッッッ!!
本当にもうやってられない。




