【6話】一時の英雄
しっかり前を向いて歩いているのに景色が頭に入ってこない。流れる景色を置き去りにするように基地へ戻り、階段を駆け上る。こんなに心が弾んでいるのはいつぶりだろうか。
この手にある石を見せれば、きっとファイアードラゴンズのメンバーとして認めてもらえる。
きっと自分の疑いは晴れる。
絶対に称賛の嵐が巻き起こる。
じわじわと笑いが込み上がってきて、周りに人がいるかもしれないから堪えるのだけれど、どうしても我慢できない。この石をブルーサンダーに見せつければ、ファイアードラゴンズはすごいってなる。もしかしたら自分は英雄にでもなるのではないか。
階段を1段ずつ登るのは焦れったくて、2段飛ばしで登り、勢いのままドアを開け放つ。
「みんな見て!」
独歩は期待を込めて石を差し出し、みんなを見る。メンバーは輪になってボードゲームをしていた。盤面の駒はだいぶ進み、1人はゴールしている。
自分は言われて幽霊探しをしていたのにみんなは遊んでいた。真っ直ぐに差し出した腕はしおしおと下がっていき、石を持つ手は弱くなる。でも、でも今日はこの石があるのだ。不思議な文字が書かれていて、小さいながらも竜巻はいつまでも消えない。こんな珍しい石ならば、幽霊のものだって信じてもらえる。沈む感情を振り切って、もう一度みんなに石を見せる。
「森ですごい石見つけた!これ、幽霊の物だよ!竜巻も森にいる時からずっと消えてないんだよ」
この石に独歩の存在価値が全てかかっているかのように、凄さを力説する。
「なんだそれ?見せてみろよ」
航輝を先頭にみんなが集まってくる。湊、聖が覗き込む。他のみんなも1人残らず独歩の周りに集まってくる。独歩は嬉しかった。いつもは自分が行くのに、今日はみんなが独歩のもとに集まる。みんなが興味を持っている。自分が持ってきた石に。
「これ竜巻?ずっと消えないの?なんで?」
「ずっと消えてない!変でしょ。幽霊の物だからだよ!」
「なんかインチキしてるんじゃなくて?」
航輝は竜巻に手を突っ込んだ。触っても消えない。その様子を見てみんなが触ってくる。実際に触れると歓声が次々と湧き上がった。
「初めて竜巻に触った!」
「お前これなんか凄くね?これあれば、ブルーサンダーの奴ら泡吹くんじゃね!おい、これはファイアードラゴンズの秘宝にするぞ!」
「なにこの絵?なんかかっこいい!」
「なんて書いてあるのー?」
メンバーが自分も持ちたいと奪い合う。独歩が持ってきた物を。航輝や湊はいつブルーサンダーに決闘を申し込むか、お宝を隠す場所はどこにするかを早速話し合っている。独歩はチームの中心にいる心地になって、またニヤケが湧き上がってきた。持ってきた石が、いや自分がこんなにも称賛されている。ここにいてもいいのだ。
胸がじわじわ熱くなり、沸騰したように感情が湧き上がる。リーダーもみんなも自分を囲んでいる。
今、僕は英雄だ。




