【20話】号外!歩く骸骨現る!
とにかく走った。
走って、走って、とにかく基地から遠い場所へ。
泣き過ぎて心臓が痛い。
上手く呼吸ができなくて苦しい。
でも、基地のそばにいたくない。
何も分からない。
とにかく暗くて細い路地を選び、人目につかないように走った。
今どこにいるのかは分からないけど、暗闇だけを手繰って行った。
ッ!! ううっ………
目を開けていられない。
転びかけながら走っていたら、急に眩しくなった。
目をぎゅっと閉じ、手で覆うと、瞼が腫れているのが一層よく分かる。
思うように開かない目をそろそろと開くと、……どこだここ。
家がたくさん並んでいて、いろんな色がある。
花もいっぱい咲いていて。
今の独歩には全く違う世界を見ているみたいだ。
あまりにも心と光景に距離があり、ぼーっとしてしまう。
あぁ、ここは前も来たじゃないか。
1人で劇場に向かったことを思い出す。
気持ち悪い。
この通り、こんなに色褪せていたっけ。
もっと目が痛いくらいだった気がするのに。
明るい色を目に入れたくなくて、周りに顔を見られたくなくて、俯いて歩く。
「ねぇ、この後何する?」
「今日の服可愛いでしょー!」
耳に何か詰まっているかのように、周りの雑音も入ってこない。
なんでこんなことになっちゃったのかな。
なんで頑張ったのに認めてもらえないのかな。
なんで自分は独りなのかな。
これだけがずっと頭の中でぐるぐるとしていた。
「ねぇ、あの子1人だよ。渡しやすそうじゃない?」
「なんか暗いし、地味だし断れなさそう。いこいこ!」
「「あのー、すみません!」」
肩が跳ね、思わずパッと顔を上げてしまった。
女子2人がいつの間にか近くにいた。
自分の顔をまじまじと見たかと思ったら、顔を合わせている。
勝手にみるなよ。
「あー、これ新聞なんですけど、もらってくださーい。」
胸に押し付け気味に渡されて、掴まざるを得なかった。
「ありがとうございまーす!」
2人は言っている途中で、ニヤニヤしながら去っていった。
「やっぱり断らなかったね。」
「てかさ、あの人の顔―……」
……うざ。なんなんだよ。
この紙どうしよう。今までの気持ちをありったけ込めて、丸めて地面に叩きつけたいけれど、泣き疲れてそんな元気もなかった。
心にだけエネルギーが溜まっていて気持ち悪い。
はぁ。
紙をぷらぷら靡かせていたら飛び込んできた文字。
[【号外】歩く骸骨現る!]
歩く骸骨?
なぜだか読まないといけない気がした。
[水中ユートピアで噂されていた「幽霊」。
当初から幽霊の正体について、お化け、骸骨、人間等様々な推測がされていた。
しかし2週間ほど前に、滝水通りと清流通りを繋ぐ地下通路でガシャガシャと骨がぶつかり合うような音が聞こえたとの証言を入手。
この証言から、幽霊の正体は骸骨なのではないかと推測する人が多くなった。]
これ、僕が調査したやつだ。あの時は白藍地域に行ったけど、そこじゃなかった?だからいなかった?
もっと、何か他の情報は……。
ひっくり返せば、まだ記事があった。
[【注意】行方不明者未だ見つからず
8日前から始まった、宝探し。
各チームだけでなく個人でもたくさん宝石を得ようと探し回った。
しかしこの期間中に、「最強バスターズ」のメンバーの1人がいなくなったという。
1日の最後にみんなで集合するはずが、集合場所に来なかったとのこと。
さらに以前は毎日来ていたが、集合しなかった日から水中ユートピアには顔を出していない日が続いている。]
なんだ。幽霊のことじゃないのか。
がっかりだ。
……でも、幽霊の噂まだ続いていたんだ。
新聞がみるみるうちにグシャグシャになっていく。
きっと、みんな幽霊怖いよね?
もし自分が幽霊を退治したら?
退治しなくても、幽霊について調査して正体とか掴めたら?
頭の中には、幽霊の石をチームのみんなが囲んでいた記憶が濁流のように流れてきた。
また僕はヒーローだ。
今度こそ完全にヒーローだ。
きっと、ううん。絶対に、チームに戻れる。
やるしかない。
僕にはこれしか道がない。
ふと思った。
でももし、現場をおさえたとして、本当に幽霊の正体を突き止めたって信じてもらうには証拠が必要だ。
新聞には絵が描かれている。
でも、こんなのはダメだ。
幽霊の石もメンバーは信じたけど、ブルーサンダーは信じなかった。
絶対に信じてもらえるもの。
………写真とか。
そうだよ。本来、新聞には写真も載っている。自分も写真さえ撮れれば、証拠になるじゃないか。
でもなぁ。
カメラの形を思い浮かべて、実際に創ってみた。
シャッターボタンは押せる。レンズも飛び出ている。けど覗き込んでもただ向こう側が見えるだけだし、何より写真は撮れなかった。
こんなのでは意味がない。
カメラって自分で作れないのかな……。
今まで見たテレビや理科の教科書の内容を記憶から引っ張り出してきてもヒントがない。
なにか、どうにかできないかな。
しかし思い出して考えていたら、次第に眠くなってきた。
明日、図書館に行こう。図書館になかったら、コンピューター室に行こう。
起きた時に忘れないように、しなきゃ……。
温かい泡が体にまとわりついて、パチパチと弾けている。
ふわふわの泡が心も包んでくれているみたいで、安らかだった。
だんだん、スーッと暗闇に落ちていく。
―――
子ども達が随分と少なくなった。
これで気兼ねせずに、街の様子を見られる。
子ども達がいるとそっちに気が散ってしまうのは、私の精神力が弱いからかしら……。
でも民を気にするのが貴族の勤めよねと言い訳をする。
あら、いけないわ。また周りを見れていない。
私、昔からマルチタスクが苦手なのよねぇ。
本当によかったわ。
王妃なんて向いてないもの。本格的に王妃候補になる前に逃げられたのはラッキーだったわ。
……だから、街を見なさいよ。私。
ようやく脳内トークから抜け出せた。
自分を律しながら歩き始めたとき、足元に何かあった。
またあいつか?
沸々と怒りが込み上げてくるのを感じながら拾い上げたら、手作りの新聞だった。
あらぁ!子ども達の作品だったのね!
見れば、端から端までびっしり文字が書いてある。途中には絵もあった。
よく書けているわ。でも、なぜこんなにグシャグシャになっているのかしら?
シワを広げながら文字を追う。
だんだん眉間に皺が寄ってくるのを感じた。
………これがただ、大袈裟に書いてあるだけならいいけれど。




