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【17話】リーダーのバイブル読破済

「航輝組出発するぞ!」

「おー!」「するぞ!」「出発!」


いい感じに俺のメンバー達から元気な声が返ってきた。

俺に侍るやつらが元気なのが一番ってバイブルに書いてあったし、今日もよし!


「今日はどこいくの?」

「どこにするかー。決めてないなぁ」


「じゃあ、また飛行船乗りたい」

「えー、飽きたから嫌ー」

「嫌が嫌」

「俺、川にあると思う!」


まぁた好き放題言っている。

俺のもとには幼いメンバーが集まりがちだから、まとめるのが大変だ。

そんな喧嘩を始めそうなメンバーを見て、隣の一澄はオロオロしていた。

「ど、どうしよう……航輝くん」


「いいか、一澄。こういう時の奥義があるんだよ。」


「イヨーォ!」パンッッ!!


急に聞こえた声に話すのをやめ、みんなが俺を見た。

「俺は花色地域の方へ探検に行こうと思う。よって!このまま滝水通りを進んで、川の中を探しつつ、飛行船乗り場までの道を行くぞ!リーダーの俺についてこられるやつは拳を上げろ!」

「「「オォォーーー!!」」」

……かましてやったぜ。

喧嘩が始まりそうだった雰囲気がすっかり和やかになった。

先ほどの「イヨーォ」がハマったのか、みんな笑いながら真似をしている。

「航輝くん!すごい!」

「ふふん、そうだろ?俺がリーダーだからな!どれだけ意見が出ようと、反発されようと、最後に決めるのは俺ってことよ。」

「これがリーダー……!!」

一澄は感動していた。



「今度こそ行く―…」

「見てー、あれ、まんまるの石!」

「こっちにグラグラする橋あるの知ってる?はい俺、知ってるー!」


俺を筆頭に、出発できたと思ったら、好き勝手に散らばっていくメンバー達。

「俺の目が届かないところに行くなよー」

「あの子達集めた方がいいんじゃ……」

「まぁ、そんな気にする必要ないだろ。たくさんのメンバーの面倒を見るには、主人がドーンと構えなければならないっていうしな!」

「そうなの……?」

「そうらしい。」

ふと、隣を歩く一澄を見たら、なんだか大人になっているような気がした。

「そういや、最近腕組みしながら歩いてるな。様になってるじゃん。」

「本当!?航輝くんがやってるから、僕も真似してるの!」

「いいことだ!俺も父ちゃんを真似して始めたんだよ。父ちゃんが仕事してるとき、いつも腕組みしてるんだけど、めちゃくちゃかっこいいんだぜ。」

「ふーん、航輝くんのお父さんはなにしてるの?」

「大工の棟梁!」

「とーりょー?」

「大工の中のリーダーだな!」

「リーダーのお父さんはリーダー!」

「すげーだろ!俺、毎日鏡の前で腕組みの練習してるんだけど、父ちゃんがやる方が100倍カッケーんだよな。」

「航輝くんのお父さんに会ってみたい…!」

「いいけど、会っても惚れるなよ!」


「おーい、広がりすぎだぞ!俺の近くにいろー」

会話をしている間も、メンバー達から目が離せない。

まぁ、忙しいけど仕方がない。これが大勢をまとめるリーダーの宿命というやつだ。

[トップって難儀なものだ]って、多分こういうことだよなぁ。


「ねぇ、リーダー!この川に宝石がありそうだし、入っていい?」

「ちょっと待ってろ。リーダーの俺が先に入る。」


もう入りかけているのを慌てて制し、川の深さを確かめる。

昔、小さい頃に一人で川に入ったら、父ちゃんに怒られたことを思い出す。小さいと流されやすいらしい。まずは大人の俺が確認しなければ。


「お前ら、靴と靴下脱いどけよー」


はーいと返ってきた返事を背に、川に入ってみる。

膝下あたりまで水深があった。膝だっけ?太ももだっけ?どのくらいだと危ないのか忘れた。

うーん、思ったより深いけど、流れが緩いからいいかな?

……俺が面倒見るならいいか。


「結構深いからな!気をつけながら入るように!」

そのまま下流側に行く。

「一澄。こっちに来て。」

「どうしたの?僕にできることある?」

「おう!一澄にしかできないことを命令するぞ!」

「うん!!なんでも任せてよ!」

「この川、結構深いから、俺らが下流にいることにする。万が一があったらここで食い止めるぞ。」

「航輝くんと僕の共同作業……!任せて!全力で頑張るよ!」

「あと、転ぶやつがいたら俺が助けに行くから、一澄はここにいてくれ」

「航輝くん、ヒーローみたい」

「俺の仲間が傷つくことは許されないことだからな!」

「航輝くんはなんでそんなにリーダーなの?」

「俺も父ちゃんの背中を追おうと思ってな、父ちゃんがいっつも読んでる本を読んだんだ!26巻全部読んだ!」

「なんて本?僕も読みたい!」

「『100人の美女でも俺に任せろ−俺に侍れるなんて光栄だろ?−』ってやつ。」

「後でメモするからもう一回教えて!長くて覚えられなかった!」

「いいぞ。あと、父ちゃんは母ちゃんがいないところでこっそり読んでる。多分男の中の男しか読めないやつだ。一澄も読めるように頑張れよ。」

「分かった…!僕も航輝くん目指して頑張る…!」

なぜか小声になりながら話した。


「ねー、航輝くん!僕、水かけられた!」

「うん?」

見れば、寝そべり、全身水に浸かっている子が足をばたつかせている。

「おいぃぃ!やめろって!頭沈んでるぞ!」

メンバーを掻き分け、助けに向かう。

「ぎゃぁぁ!水かかったー」

「ぺっ!ぺっ!」

「航輝くん、人に水かけていけないんだー」

騒ぎが広がってしまった。


「水に顔が浸かっていたら、息できないぞ!苦しいだろ。お前が苦しいと母ちゃんも父ちゃんも苦しくなるらしいからやめとけ。」

「えー、でも冷たくて気持ちいもん。」

「仕方ねぇな、秘密教えてやるよ。耳貸しな。」

なんて言おう………んー、よし。

「あのな、鼻から水が入ると、今まで食べてきたものが膨らんで、へそから一気に出てくるんだって。だからやめとけ……!」

「えっ、マジ!?絶対に嫌だ!やめる。」

どうにかやめてくれた。焦ったぁ。

とりあえず説得して元の位置に戻ってきたはいいものの。


「………ハーレムのトップに立つって難しいな。」


いつも大工仲間をまとめてる父ちゃん。

やっぱりすげぇや。


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