【16話】急募!リーダーマニュアル②
「2つ目も頑張って探そうね!」
「イエッサー」
濡れた足に靴下はなかなか履きづらい。ぐいぐいと引っ張ってどうにか履いて、出発をする。
ポケットの中に手を突っ込み、宝石を触る。これだけで心が弾んだ。
「独歩くんが歩いた跡、水がポタポタしてる。」
振り返ってみると細い線ができていた。
「ほんとだ。まぁ、そのうち乾くよ。」
そんなことよりどんどん探さないと。
「あっ、あの井戸とかさ宝石ありそうじゃない?」
いつも喉が渇くと、そこら中にある井戸で水を汲んで飲む。喉が渇いてないと目に入らないのに、今日は当たり前のものでも気になってしまう。
走り出して近づき、井戸の周りを見てみる。
360度見たけど……ないなぁ。
「陸くん。僕喉乾いた。お水欲しい。」
「俺も飲みたいしいいよ。」
ポンっと出したコップを碧に持たせ、陸はレバーをギコギコと漕ぎ出した。
うん。水と一緒に宝石は出てこない。
「宝石は出てこないみたいだし、他見に行こう。」
「独歩くん。僕たちお水飲んでる」
「そんな時間もったいないよ!急ごう!」
「いや、落ち着けって。そんなに急いだってしょうがないよ。今野も飲めば?」
「ありがとう。でも他にも探したいから!僕先にここら辺探してるね」
2個目も僕が見つけてみせる。
レンガの下や門の影も探す。
目の端にキラッと光るものがあった。
もしかして!
輝くものは窓の枠にと沿って流れる水が反射しただけだった。
なんだ。
「独歩くん、忙しそうだね」
「あいつさ、どっかおかしくね?」
「なんか大変そう。」
「あっ、2人とも飲み終わった?ここらには無かったから行こうよ。」
独歩が振り返ったと思ったら、また走ってどんどん先に行ってしまった。
思わず2人で顔を見合わせる。
「追いかけなきゃ。」
「碧、走れる?」
「うん。頑張る。」
あっちへフラフラ、こっちへフラフラしながら走る独歩を2人は追いかけ始めた。
―――
どうしてもないんだよな。探し方が悪いのかな?
光るものは見逃さず探し、隠せそうな隙間や置物があったら探したが、なかなか見つからなかった。
そういえば、2人は何か見つけられたのだろうか。
振り返って見ると、2人は肩で息をしていた。陸は膝に手をつき、碧は座り込んでいる。
「どうしたの?2人とも宝石見つけた?」
「……あのさぁ、お前突っ走りすぎ。何焦ってんの?碧、途中で泣きそうになってたんだけど。」
「えっ、それはごめん……。けど宝石見つけたくて。チームのために1つでも多く見つけようと……」
「いや、メンバーのためとかいうならさ、まずはメンバーのこと気にかけろよ。しかもお前より年下のメンバーがいるんだけど。」
「えっ、でも、碧くんも宝石を他のチームより多く見つけられたら嬉しいよね?」
「休みたい……」
「急いだから見つかるもんでもないでしょ。」
「でも、時間が……。」
「もういいって。そんなに宝石探したいなら1人で探しな」
流石の言い草に腹が立ってくる。
「あのさ、1つ目は自分が見つけたから、2つ目は2人が見つけてくれてもいいんじゃない?探してくれてる?碧くんは池のところで休んでたよね?もう少し頑張ってよ!8歳とはいえ同じチームなんだから!」
「もういいって!今野、お前変だよ。俺ら先戻るから。独歩は1人で探しな。」
なんだよ、それ。頑張ったのに。チームで50個見つけるっていうから、頑張ったのに。1つ目見つけたの自分なんだから、もっと褒めてくれたっていいのに。
「碧。行こう。」
「おんぶ……」
「よし、乗れ。」
そう言うと、2人は振り返りもせず帰ってしまった。
なんで。
………仕方がない。うじうじしていても何もならない。とりあえず劇場に行こう。もっと見つければ、2人も何か言ってくれるかもしれない。
そう期待して劇場へ向かった。
―――
劇場に着いたが、広い……!
1人で探せるかな?不安に思いつつもとりあえず入る。
さっき、池ではまず場所を推測してから探した。ここでもそうするといいかもしれない。
僕が置くなら、無数にある席の下とかだろうか。
でも大勢で探されれば簡単に見つかってしまう。
簡単に見つかるかもだけど、裏をかいて舞台上とか。
でもやっぱり見つかるよなぁ。
エントランスにあるベンチに座りながら考えてみる。
舞台裏の控え室の中とか?この廊下の絨毯の下とか。
あれこれ考えるけど、1人で探すのはさすがに億劫な場所ばかりが思い浮かぶ。
唸っていると、はっと思った。
目の前の受付の中とか。
今まで劇場の奥の方ばかり考えていた。あえての入り口近くとか。
早速入ってみる。見回して目に入ってくる箇所にはない。
椅子を引いたり、小物をどかしたりしてみた。
ない…!えー、いい案だと思ったんだけどな。
項垂れて机に顔を伏せたとき、机上の棚の後ろになにか塊があった。
思わず椅子をひっくり返しながら凝視する。
重い棚を動かしつつ、手を伸ばす。指先に当たる宝石を弾き飛ばさないように気をつけながらなんとか引き寄せた。
宝石だぁぁぁぁぁ!宝石だ!やったーー!
見つけたのは黄色の宝石だった。
よし!よし!やっぱり自分が言った通りだった!
あった!
叫びたいほど嬉しい。
早く基地に帰って、2人に見せよう!
本当は10個見つけたかったけど、1人だし帰ることにした。
―――
景色がビュンビュンと流れていく。
自分は今、新幹線よりも速い!
今日は長い距離歩いたが、疲れなど微塵も感じなかった。
自分の気持ちはピンクと赤と黄色と水色!
ポケットから宝石を落とさないように手で抑えながら走る。もうすぐ基地だ。
あっという間に着き、階段を駆け上がる。
あぁ、門番室のドアを開けるのでさえ、まどろっこしい。
あと、ドアは1枚!これを開けたらきっとヒーローになれるんだろうな。1人きりの力で手に入れた宝石を手に乗せて、ドアを開ける。
「ただいま!宝石2つ見つけたよ!」
部屋の中には陸と、聖チームがいた。
誰も何も言ってこない。
陸に近づいて見せる。
「見て!陸くん!もう一つ劇場にあったよ!2つしか見つけられなかったけど!」
2つ「も」見つけられた、だけどここで誇張するのは恥ずかしい。
「そうか」
陸はそれ以上何も言ってくれなかった。
「独歩」
聖に呼ばれた。
「聖くん。見て!宝石を2つ見つけました!」
今の自分の顔、ドヤってなかったかな?
正直ドヤっていた自覚はあるけど、2つも見つけたのだからちょっとくらいいいだろう。
「それ、1人で探したの?」
リーダーとしてはチームで探したって言った方がいいのかな?
でも、これは自分1人で見つけたんだ。
「はい!そうです!頑張りました!」
「独歩さ、陸と碧から聞いた。なんか1人で暴走したらしいじゃん。碧が泣きそうだったって。」
なんだか聖の目が怖い。
「ほ、宝石を多く集めようと思って……。置いていこうとして置いてったわけじゃ……な、いです。」
「いや、でも実際置いてったんでしょ。」
「で、でも!自分はチームのために頑張っただけで!陸くんは見つけられなかったし、途中からサボってたし!碧くんは最初から探そうともしなかった!自分は2つも見つけたのに!」
責められたくない、悪者にされたくない、褒められたい。いろんな気持ちが吹き上がる。
「なにも悪いことなんてしてない!」
周りからの視線にも耐えられなくなった。持っていた宝石を聖に投げつけ、俯きながら部屋を出る。
せめて泣いている顔は見られたくなかった。
なんだよ、なんだよ、なんだよ!
なににかは分からないけど、全部のことが悔しかった。




