【15話】急募!リーダーマニュアル①
場が静かすぎて、自分が唾液を飲み込む音が周りに聞こえていそうだ。
ファイアードラゴンズのメンバーは円になり、航輝の言葉を聞いていた。
「今日は50個だ。絶対に50個探し出すぞ!」
重い目標が提示される。
「昨日のザマでは絶対にブルーサンダーに勝てない!というか優勝できない!昨日の分を、今日、取り返すぞ!」
「「「おぉーーーー!」」」
絶対に多く見つけ出してみせる!
このチームの誰よりも!
「昨日と同じ探し方じゃだめだ。というわけで、聖がなんか考えたらしい。」
「今日はいくつかのグループに分かれて探そうと思う。なるべく散って探した方がいいんじゃないかと思ってな。」
確かに昨日はみんなで探したけど、8個しか見つからなかった。その場にいるだけで探してないメンバーとかいたし。流石にそのメンバーには注意をしてしまった。
「航輝と俺は各グループのリーダーになる。来たいやつは来い。あとは自由にグループ作ってもいいぞ。」
それなら、よし。
「ねぇ澄くん。自分とグループ組まない?一緒に探そうよ。」
「うーん、僕、航輝くんのところ行こうかなって迷ってたんだけど……。」
「えー、一緒に組みたかったな。」
「でも、こっち来たときに航輝くんに言っちゃったんだよね。一緒に組みたいって。」
澄くん、自分と組みたいって思ってくれなかったんだ。
さっきまで一緒に組みたいって思ってくれてるんじゃないかって期待していたのに。
最近、活躍してたのになぁ。
「おーい、一澄。来ないのか?そろそろ出発するぞ。」
航輝が呼んでいる。
「独歩ちゃん、本当にごめん!今日は僕、航輝くんと行動するね。また次は一緒に行こう。」
「僕も一緒に行きたい!」と言いながら一澄は航輝のところに行ってしまった。
いいなぁ。航輝は頑張らなくてもリーダーになれて。
気持ちが沈み込みそうになったけど、のんびりしていたら1人になってしまう。
誰か探さないと……!
周りを見れば話しかけやすそうな子が1人いた。
「碧くん。もうグループ決めた?」
「ううん。まだ。どうやって話しかければいいか分からなくて。」
「それじゃあさ!自分と一緒に探しに行かない?あの、もし良かったらでいいからね……!」
「いいの?一緒に行く。」
頷いてくれた。よかった!これで1人じゃなくなった。
でもこの子8歳とかなんだよな。メンバーがこの子だけだと心細いな……。
「よかった!頑張って探そう!あとさ、もう何人か探す?碧くんが誘いたい子とかいる?」
もう室内にはあまりメンバーがいない。
「じゃあさ、陸くん誘いたい。前仲良くしてくれたから…。」
陸くんは、確かあの子なはず。一回も話したことないや……。
「自分、陸くんと話したことなくて…。碧くん話せる?」
「うん!誘ってみる。」
碧くんの後について行く。
うわぁ……結構背が大きいな……。しかも体がガッチリしてる。は、話せるかな?
碧くんは躊躇うことなく、陸くんに近づいて裾を引っ張った。
「陸くん。一緒に行こ。僕と独歩くんと一緒に探しに行こ。」
「おう碧か。いいぞ、いくか。」
あっさりと頷いたかと思えば、こっちを見てくる。
「今野もよろしく。」
「えっ、あの、うん!あの、よろしく……」
緊張するーー。大丈夫かな?陸くんの挨拶あっさりと終わったけど、怖い人なのかな?
「もう行くの?」
こっそりと胃を抑えていたら、陸くんから声がかかる。周りにはもう人がいない。
「あっ、そっ、そうだね!もう行こう。」
若干早口になってしまった。
でも、このチームは僕が始めたんだ……。
実質のリーダーなんだから、しっかりしなくちゃ。
決意したはいいものの、結局シーンとなりながら階段を降りる。
気まずい……。
「ねぇ、陸くん。今日はどこ行くの?」
「あぁ、そうだなぁ。特に決められてないしなぁ。」
場所ならいくつか候補を絞ってある。
ここはリーダーとして提案を……!
「あのっ、渓流通りをそれた所にさ、池があるんだけど、そこ行かない?なんかありそうな雰囲気で!」
「いいよ。そこ行くか。」
「アイアイサー」
もう一声!頑張れ自分!
「あと、大河通りに劇場があるんだけど、そこにもありそうだと思って!」
「違う通りなら、今日は渓流通りだけで済ませばいいんじゃね?」
「いや、宝石を隠すときにその劇場に入っていく人達を見たんだよ!絶対あるし、沢山見つけたらきっと褒められるよ!」
「褒められなくてもいいけど。」
「えっ!絶対あるんだよ?」
「分かった、分かった。とりあえず時間があったら行こう。」
あんまり積極的じゃないのかな。
でもこう言ったからには絶対に沢山見つけなきゃ……!!
「碧くんは8歳だよね?あの、陸くんは?」
「15」
「僕も、僕も15歳!中3だよ!同じだね」
「僕ね、小学生3年生」
「あっ、そうなんだ、3年生なんだ」
「早生まれ?何月が誕生日?」
「早生まれ?僕、2月」
「2月か。誕生日まだまだ先だな。」
「ずっと先ー」
「陸くんはあまり見ないけど、いつもはどこにいるの?」
「いるというか、来ない日の方が多い。最近寝て起きたら朝って方が多い気がする。」
「そうなんだ」
「独歩くんは毎日きてるよね。僕も毎日来てる」
「うん、僕は毎日。なんか友達も来る人来ない日があるって言ってた。僕だけ?」
「まぁ人によるだろ。気にすることもないよ。」
「気にすることはないよー」
「そ、そうかな?」
意外と会話が続く……!よかった!
「今日はどのくらい見つけるの目標にする?僕は10個くらい見つけたいんだけど……」
「10?多くない?全体の目標が50個でしょ?」
「いや、目標は大きくがいいと思う!チームで1番見つけようよ!」
「うーん…。まぁ見つけられたらね。」
よし!よし!頑張るぞ!
そうこう話している間に池についた。この前みんなでボート乗りしに来たとき、絶対に宝石を隠しやすいと思ったんだ。
「この石垣のところとか、柳の木の根とかさ、橋の裏とか、ありそうだと思って!」
「確かに鬱蒼としてるしありそう」
「でしょ?そうでしょ?」
「なんか、お化け出そうで嫌。」
碧が陸にしがみついて、ポツリとこぼす。
「無理に探さなくていいよ。水に入んなきゃだと思うし。怖いならそこの日が当たるとこで待ってなよ」
ちょっとでも早く見つけたいのに。探さないんだ…。
思わず思ってしまった思考を、いかんいかんと追い払う。
まだ8歳だし!そう、まだ8歳だから、仕方がない。それに、自分はこのチームのリーダーなんだ。
「うん!自分たちで探すから大丈夫だよ!」
今ちゃんと笑顔になれてるかな。
碧が何か言う前にまた独歩が口を開く。
「自分は石垣の隙間とか見るよ!陸くんは木の根周り見てもらってもいい?」
「分かった」という言葉を背にさっさと池に向かう。
まだ続くこのモヤモヤをなんとかしたい。
探すのに集中すればどこかにいくだろうか。
裾を捲り上げ、池の中にどんどん入る。
見れば、水の中にも結構深くまで石垣が続いていた。
水の中の部分も探さないとダメかな?
とりあえず上の出ている部分を見ていくことにした。
石と石の間にも草が生えていて見づらい。
でも!自分が1番多く見つけるんだ!
草を抜き取り、石を掘り出す。
無いな。
隙間に指を突っ込み、苔を押さえつけてみる。
無いなぁ。
いくつもの隙間に指を突っ込みながら探し続ける。
あれ、指が痛い……。
見れば血が滲んでいた。爪の周りが擦れている。
じわじわと痛みが広がってくる。
でも、宝石探さないと。
「今野。先に橋周り見たけど、ここらにはなかった。」
ここにも無い。やっぱり水の中なのかな……
「今野?」
「えっ、あっなに?ごめん」
「橋の周りには無かった」
「そっか、分かった!」
あと可能性があるのは石垣と木だけ!丁寧に見ないと。
その後も一つ一つ隙間を見ながら一辺見終わったけど無かった。
あると思ったのに。
………よし!
息を思いっきり吸い込み、池の中に頭を沈める。
怖いけど、目をそっと開く。
視界がぼやける。
目が痛い。染みる。
目を開けていられなくて、思わずギュッとつむってしまう。
ダメなのに。見つけないとなのに。
僕はリーダーなんだ!
根性を出し、せーのでまた開ける。
探せ、探せ!自分。
どうしても閉じてしまう目と格闘しながら、薄目で探す。
ここにも無い。こっちにも無い。
………あんまり長くは探せなさそう。やっぱり目が痛い。
考えてみれば、小さな隙間には宝石が入らないんじゃないのだろうか。
まずは大きめの隙間を探してみることにした。
ファイアードラゴンズに配られた宝石は、制服のボタン1つより少し大きいくらい。それが入るくらいの隙間。
時折目を抑えながら探してみれば、あった。
細かい石が詰まっているけど、入りそうな大きさの隙間だ。
かなりギチギチだけど、何とかならないかな。小さい石から1つ、また1つと取り出していけば奥に何かあった。
綺麗に嵌め込まれている。
押してみたり、ガリガリと周りをひっかいていると少しずつ動くようになった。
あと、もう少し!
押したり、捻ったりしてようやく。
取れた!
薄目なうえ、ぼんやりと視界では分かりづらい。
けど、この大きさは…!!
ドキドキしながら水面に顔を出す。
瞬きし、目をぬぐってから見てみれば、宝石だった。緑色の宝石。自分たちのと色違いの宝石。
やった!!!
「ねぇ!ねぇ!陸くん!見て、宝石あったよ!緑のやつ!」
足を取られながらも、大股で陸のもとに向かう。
木の周りを探していた陸は、こっちを見てギョッとしていた。
「お前、なんで全身濡れてんの?」
「水の中で探していてさ!それより見てよ!やっぱりあった!」
「しかも目が充血してるけど。ゴーグル出さなかったの?」
「あっ、ゴーグルか。忘れてた。でも見たかったし!」
「宝石は分かったけど、池とか汚いじゃん。しっかり目を洗いなよ」
「目が覚めればなんてことないよ。今、目が痛くても宝石が見つかったならオールオッケーでしょ!」
「いや、あのさぁ……」
陸はなかなか褒めてくれない。僕、見つけたのに。
「宝石あったの?」
碧が池に近づいて聞いてきた。
「あった!見てこれ!」
「おおー!すごい!緑の宝石きれー!」
「凄いでしょ!」
やっぱり褒められるって嬉しい。
「よし、もう見つけたしさっさと次行こう!次は劇場だね。その道中も探さないとね!」
「いや、もう終わった方がいいんじゃね?目とか痛いっしょ。」
確かに目はじわじわと痛みが続いていた。けれどそんなことどうでもいいのだ。だって宝石を1つ見つけられたんだから。
「全然大丈夫!起きたら痛みなんてなくなってるよ!だからほら、もっと探しに行こ!」
「僕も今度は一緒に探したい」
「……分かった」
碧の加勢が効いたようだ。碧に来てもらってよかった。




