【サイドストーリー】独歩の心、故障中。
「教科書56ページ開いて。「太陽から地球に届く光や熱は、地球上の生物の生活に大きな影響を与えています。」のところからやっていくぞー。」
やっと6時間目だ。早く家に帰りたくて、のんびり話す先生にイライラしてしまう。
足を揺らすのを止められない。
横から肘で小突かれる。スッと差し出されたプリントを見れば、「独歩何揺れてんの?」と書かれている。
(そんな揺れてた?)
(地震来たかと思ったくらい笑)
(やばー 気をつける)
(今日帰りコンビニ寄ろうよ)
(早く帰ろうと思ってる)
(えーお願いお願い!塾前の気晴らし一緒に行こ)
(ごめんー)
早く帰って、早く寝たいのだ。1秒も無駄にできない。それにコンビニ高いし。
―――
キーンコーンカーンコーン
やっと授業終わった!
結局、授業中ずっと紙面で会話していたせいか、あっという間に時間が過ぎた。
とりあえず雑に荷物をまとめ、修斗と空を急かす。
「早く早く!教室戻ろう」
「どうした?この後、なんかあるの?」
「ある!」
「ごめん、俺ここだけ質問してから教室戻るわ。先行ってて」
空はそう言い残し、先生の元へ行った。
待っているのも悪いかと思って、空を横目に教室を出る。
「あいつ最近ガチりだしたよな。俺もやんなきゃかなぁ」
2人が勉強を頑張り始めたら?自分は1人になってしまうのではないだろうか。心に黒いモヤモヤが襲ってくる。
「まだ、まだいいんじゃない?ギリギリまで遊んでおこうよ。」
「そうだよな!信じるべきはサボり仲間よ!」
修斗は豪快に笑っている。
これで、まだ自分のそばにいてくれるかな。
「そういえばさ、この後何があるの?」
「今、水中ユートピアでチーム戦があってさ。激アツなんだよね。」
「へー、俺最近行ってないわ」
「行かないの?」
「なんかめっちゃ寝ちゃって、行ける日と行けない日がある。」
「そんなもん?自分、毎日行ってるけど……」
「人によるんかな?」
確かに最近、現実での知り合いを水中ユートピア内で見かけることが減った気がする。小学生の頃とか普通にいたのに。
階段に差しかかるとみんなの足が若干遅くなる。
あー……邪魔だな……。どいてくれれば、駆け上がれるのに。
じわじわとイラつきが襲ってくる。
「なー、独歩。今度のテストさ、点数競おうよ。最近俺、社会頑張ってるんだよね。」
「うーん?いいよ。」
「まじで?空に言ったら断られてさぁ!ありがとう!俺、絶対負けないように頑張るわ!」
修斗が隣で何か言っている。
「今回のテスト、いい点数取ったら父ちゃんに欲しいもの買ってもらえるんだけどさ、欲しいゲーム沢山ありすぎて!独歩も一緒に選ぼうぜ。独歩も一緒に買えば、一緒に遊べるしな。」
みんな、歩くの遅すぎない?
「あとさ、最近発見したお得情報があって!人体のアニメがあるんだけど、それ見てても母ちゃんに怒られない。面白い上に見てても怒られないから、勉強より長く見てるわ。独歩も見てみ?」
あー、もう!急いでるのに。ペラペラうるさいな!
声に出して怒鳴りたくなる。でも、ここで怒鳴ったら友達がいなくなる。またグッと我慢した。最近情緒不安定だ。
「分かった、分かった。また今度な。」
ようやく階段を登り切った。
「ごめん!自分急いでるから!またね」
人の間を縫って小走りし、教室に着く。
適当に鞄に荷物を詰め込んだせいで、歪な形になってしまったがどうでもいい。急いで教室から出る。廊下で修斗と会った。
「また明日ねー!」
人波に逆らい、走って走って。
靴を履き替え、校門を出て走って走って。
今日は昨日の続きで宝石探しだな。
あの池の中と、建物の階段のところにありそうなんだよな。
自分がチームで一番、宝石を探し出す様子を思い浮かべると気持ちがワクワク、心がキラキラした。
よし、帰ったら早速寝るぞ。
楽しみだ。




