【12話】「最強」の称号を手に入れろ
階段を駆け上がる音がコンクリートの建物に響き渡る。
もう何人か来てるかな?
航輝くんはもう来てるかな?
一澄は毎日早く寝て、チームの中でも早めに来る。一澄は航輝が憧れだった。以前まだ2人しかいないときに、なんで航輝はいつも一番に来るのか聞いてみた。そうしたら「俺はリーダーだからな!リーダーはメンバーが来る前に来て、みんなを迎え入れるんだ!」って言っていた。それに何か事件が起きたら、大抵航輝が先頭に立って戦っている。そんなリーダーらしいところがかっこよかった。リーダーになるのは怖いから嫌だけど、僕も自分より下の子が困っているときには年上として何かしてあげたいと思う。
そんな憧れの航輝と話せる時間を少しでも取りたいと思って、ゲームをやるのも我慢して今日も早く寝る。
ドアを開ければやっぱり航輝がいた。
「おう、一澄か。よく来た!」
「こんにちは、航輝くん。」
「一澄はいつも早く来て偉いぞ!」
「へへ、お母さんが早く寝ろっていうから」
「よし!特別に、天才的な作戦を伝授してやる!母ちゃんに早く寝た日はお小遣いをくれって交渉するんだよ。どうせこっちに早く来るから、早く寝たところで俺らには損がない上に金儲けもできる。一石二鳥ってやつだな!」
「航輝くんすごい!軍師みたい!頭いい!」
「そうだろ?俺はこの作戦で1500円も儲けた。」
「僕もお母さんに言ってみる!」
「おう、やってみろ。1000円超えたら褒美にジュース1本奢ってやる」
「いいの?ありがとう!」
やっぱり航輝くんは漢気があってかっこいい。
「うっす」「ほーい」
メンバーが2人入ってきた。残念だな。航輝くんは入ってきたメンバー1人1人と話す。それがリーダーの流儀というものらしい。
「一澄。そろそろあいつらが来るだろうから門番していてくれ。」
「うん!わかった。」
僕が早く来るっていうのもあって、門番の役目をすることが多い。航輝くんから頼られているみたいで嬉しい。今日は何人くらい集まるかな。
「おー、一澄。これから門番か?」
「すみくん、おはよう。」
聖と独歩が来た。
「2人一緒珍しいね?独歩ちゃんも早いし」
「今日は目が覚めた場所が近くて途中であった。こいつ今日はえーよな。」
「僕、今日、やることがなかったから。」
独歩ちゃんは最近話すのがスムーズになった。聖だけじゃなくて大抵の人に対してしどろもどろだったけど、最近は自分から話しかけることも多くなった。なんかいいことがあったのかな?航輝のかっこよさに気がついたのだろうか。
「これからどんどん来るだろうからしっかり門番しろよ。変なやつきたら追い返すように。」
「イエッサー!」
今日はいつもより早くみんなが来そうだ。急がなきゃ。
門番をする小部屋につけば外がガヤガヤうるさかった。3人?4人?一気に来るなと思いながら席に着く。
――ん?話し声はドアの前で聞こえるのに待っても入ってこない。どうしたんだろう。
そろっとドアを開けて見てみる。メンバー6人が集まっていた。いや、1人知らない人?中学生くらいの人がいるけど見たことがなかった。メンバーに入りたくて来たとか?
「ねぇ、大丈夫?」
「あっ、一澄!いいところに!変な奴がいるって航輝に言って来てくれ」
「わ、分かった!」
思ったより深刻な問題なのかな。急いでドアを開ければみんながこっちを見た。目線が集まる中、航輝に駆け寄る。
「航輝くん!今門番室の前に変な人がいるみたい!メンバーが5人集まって問い詰めてる感じだった!来てって!」
「分かった!聖も一緒に来てくれ。」
また3人で門番室に戻る。航輝くんと聖くんはそのまま出ていったけど、ちょっと怖い。ドアを少し開け覗くので精一杯だった。
「おまえら、こいつ誰だ?」
「分からん」
「分からんってなんだよ。尋問したんじゃないのか?」
「こいつなんも喋らないんだよ」
「喋りたかったんだけど、みんながなかなか話す隙を与えてくれないから」
「喋った!」
「喋るよ」
目深に被った帽子を上げた。困ったような顔で笑っていた。わっ、目が黄色だ。初めて見た。
「ファイアードラゴンズのみんなにお届け物だよ。」
「お届け物?てか、お前誰だよ。」
「僕は郵便屋をやってるんだよ。この後ブルーサンダーの基地にも行くんだ。」
「ブルーサンダー?おい、何持って行くんだよ。」
「君たちと同じものだね。」
「あいつらに先越されるわけにはいかねぇ。おい、早く渡せ!」
「はい、これ。この手紙は依頼書みたいだよ。よろしくね。」
「依頼書ぉ?俺ら探偵事務所じゃねぇぞ。」
「まぁ、読んでみてね。」
手紙と袋を渡すだけ渡して郵便屋は行ってしまった。
「なんだ、あいつ。」
「おい航輝、とりあえず読むか。」
「そうだな、とりあえず全員集会所に集まれ。一澄も門番はいいから戻るぞ。」
「うん、分かった。」
手紙はなんて書いてあるんだろう?
「おまえら、集合ぉぉぉ」
「どうだった?」
「なんか、郵便屋ってやつが来た。依頼書を置いていった。」
「なにそれ」
「分からん、今から読むぞ。」
手紙にはかっこいいスタンプが押してある。
「これ開かないんだけど」
「あっ、これ知ってる。シーリングスタンプっていうらしい。姉ちゃんがやってた!」
「うぉぉぉぉ、開かねえ!……千切るか。」
ワックスの上の部分をビリビリと千切り、ようやく出せた。
「よし、読むぞ。」
『「我らこそが最強だと、名乗りを上げる者達へ。
己の知恵に自信はあるか。
もしあるというならば、ひとつ遊びに付き合って欲しい。
各チームに、同じ色の宝石を10個用意した。
その宝石を絶対に見つからないと自信がある場所に隠せ。
遠くてもいい。
近くてもいい。
隠すのに最もふさわしいと思う場所ならば。
全チームが全ての宝石を隠したら、合図を送る。
その瞬間から、宝石争奪戦の始まりだ。
狙うのは、他チームが隠した宝石。
見つけた宝石は、自分たちのものだ。
より多くの宝石を見つけたチームを勝者とする。
そして勝利したチームの名は、この世界に大きく轟くだろう。
さぁ、最強を名乗る者たちよ。
その知恵を見せてくれ。」』
みんなで顔を見合わせる。
「………うぉぉぉぉ、かっこいい……!」
「宝探しってこと?」
「宝石?その袋の中、宝石?」
「おい、見ろよ!めっちゃ赤い宝石入ってる!」
「うわぁ、ファイアードラゴンズぴったりじゃん」
「やろうよ!楽しそうだよ」
「ブルーサンダーのところにも同じのが来てるのかな?」
パンッッ!!
航輝が手を叩いた。
「この勝負に勝てば、俺らは正真正銘、最強の称号を手に入れられる。あのブルーサンダーの奴らにも堂々と勝てるってことだ。
絶っっっっ対に勝ってやるぞ!!」
「おうっっ!!」
早速、宝石をどこに隠す会議が始まった。




