【10話】現実なら母ちゃんに怒られます。
「見たかよ!俺の腕力!」
ブルーサンダーとの決闘からの帰り道、副リーダーの聖が自慢げに力拳を作ってみせる。
バズーカでドアを壊しただけでは飽き足らず、ファイアードラゴンズは建物を全壊させた。それにブチギレたブルーサンダーの面々も応戦し、戦車を出したはいいものの、瓦礫に阻まれ動けなくなったのだ。
結局、「おい、ここは漢を見せてやる」の一言により、リーダー・副リーダー同士の腕相撲で決着をつけることにした。リーダー同士の戦いではお互いにごねにごね6勝6敗で終わったものの、リーダー・副リーダーの4人の中では一番年長者だった聖のおかげでファイアードラゴンズが勝ち、
「悔しい?ねぇ、悔しい?残念でした〜お尻ぺんぺんっ」
と煽り散らかしてきて今に至る。
「マジで、瞬殺だった!」
「あいつら弱すぎじゃね?」
みんな聖を褒めている。独歩は自分の細い腕を見た。自分も聖みたいに鍛えれば、みんな褒めてくれるかな?
「あいつら、ずっと幽霊の石をチラチラ見てた。ぜーったい羨ましがってるぞ、あれ!」
「触りたそうにしてたよね!」
思わず顔を上げる。独歩の幽霊の石が褒められている。
「実はあれさ、見つけた時に湖からボチャって水が跳ねる音を聞いた!まあ、幽霊かは分からないけど…」
「えー、すげぇ!聞いただけ?幽霊見てないの?」
「いや、だから幽霊なんていないの。これは幽霊を演じている人間のいたずらだって!その証拠だって!」
「白藍地域行きたくねぇー」
独歩がきっかけで幽霊はいるいない論争が始まる。水が跳ねる音なんてはっきりと聞いてはいないけど、今思えば聞いた気がしなくもない。このくらいなら詳しく聞かれてもなんとか誤魔化せる。嘘つき呼ばわりはされないだろうと思えば、みんなが独歩を中心にしている今を存分に味わえた。
「レースやる人!」
レース?いいよー。とみんなが湊に興味を移し、一瞬で話題が移ってしまった。
自分が話してたのに……
「こっちに大きい池があるんだよ。今日はここを渡って基地に帰ろうぜ!」
湊がポンっと傘を出す。
「傘レースやる奴は、みんな出せー!」
湊の声の大きさが嫌になる。
それはそうと独歩も昔、友達と水たまりで傘に乗って遊んだ。乗ったら骨が折れてしまい、母さんにこっぴどく怒られた記憶が蘇る。でも、ここは夢なのだ。ちょっとぐらいならいいかと、ウイスキーボンボンを食べた時みたいなドキドキを感じながら、聖と同じ透明な傘を出す。
「みんな出したな?せーので乗って、スタートするぞ。
いっせーの!」
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!
悲鳴を上げながらみんなひっくり返り沈んだ。
回転するように沈んだ子、顔面から沈んでいった子。全員残らず沈んだ。
独歩も右足を乗せた瞬間、右側の顔が水面に叩きつけられる。
ゴボォブォ!!
鼻が…!鼻が…!
なんとか上に手を伸ばしてバタバタ振り回す。どこか、掴めるもの!!
ゲホッゲホッ、オッエ
水中でもがきながらも、なんとか水面に上がってこられた。よかった。鼻が痛すぎる。よかった!涙が出てきた。
「だずげでぇぇぇ」
湊がパニックになっている。暴れるものだから水飛沫をあげまくり、周りに飛ばせば、周りは自分を庇おうとして岸から手を離す。また沈む子何名か。
地獄絵図ってこういうことだろう。
なんとか、なんとかみんな岸に上がれた。まだ鼻が痛いし、喉も痛い。目も痛い。
カァーーーーーーーーーーッッ
喉奥から水を搾り取ろうと思ったが、痛いだけだった。
全員、倒れている。湊は顔を覆っている。
今までメンバーがこんなに静かになることなんてなかったといえるほど辺りは静まり返り、項垂れていた。
「おい、悔しくねーの?」
航輝が急に言い始めた。何を言い出すんだ。
「俺ら、ファイアードラゴンズだぜ?この世界で一番勢いがあるチームの俺らがこんなことでいいのかよ!こんな池に負けるとかファイアードラゴンズの名が廃る!」
よろよろと航輝を見上げる。何を言っているんだ。
「今日は絶対に傘レースで帰るぞ!根性あるやつはもう一回乗れ!」
そう言って、折れた傘を捨て、また新しい傘を出す。
湊も黙って傘を出す。上2人が出すならとちらほら傘を出す人がいる。
「かかれぇぇ!」
みんな一斉に駆け出し、傘を開いて飛び乗った。
うわぁぁぁぁぁ
案の定。
でもみんな行ったし独歩も行かないと。置いていかないでー!
―――
折れた傘が山のように積み重なっている。
「おい、湊!蹴るなよ!痛い!暴れるな!」
湊がまた沈んでいた。
「俺はやればできるんだよ…!」
鼻水垂らしながらまた折れた傘を捨て、新しい傘を出す。
何回やっても誰1人として成功しなかった。
「僕の靴、どっか行っちゃった……」
10歳のメンバーが聖に泣きつく。
それを見た航輝がうつむいた。メンバー達ももう終わるのかと顔を見合わせたところだった。
「おい、うちのメンバーが泣かされたぞ。おまえら!泳いででもこの池を渡れ!勝てぇぇぇぇ!」
航輝は突然叫び、泳ぎ出す。傘は?
「くそ!この池が悪い。絶対に勝ってやる!」
湊が泳ぎ出す。傘レースの言い出しっぺなのに。
戸惑いながらみんな行く。
「すみちゃん、い……いくぞ!」
「おう!」
早くついていかなきゃ
1人だけ残るなんて嫌だ!




