表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/92

47話「研修旅行」

(美園がアネモネを鎮めていた頃)

会社から研修旅行の詳細が発表された。

場所は温泉付きの宿泊施設。

スケジュールには「夜、大浴場で懇親」の文字が、しっかりと印刷されていた。

それを見た瞬間、樹里と陽菜の顔色が同時に変わった。

給湯室で、二人きりになったとき、陽菜が真っ先に切り出した。

『大浴場って……」

『わかってる』

樹里の声が、低い。

背中のタトゥーが、頭をよぎる。

薔薇の刺繍をモチーフにした、決して小さくないもの。

脱いだら、一発でバレる。

陽菜が不安そうに続ける。

『インナーで誤魔化せないよね、大浴場』

『当たり前だ』

『どうする? 熱でも出たことにする?』

『二人揃って熱を出したら、不自然だ』

樹里は額に手を当てた。

『……様子を見る。入浴の時間をずらす、人が少ない時間を狙う。

方法は後で考える』

陽菜は納得いかない顔をしていたが、他に案もないのでうなずいた。

『……バレたら、終わりだよな』

『バレるな』

その不安を抱えたまま、出発の日が来た。

営業部のメンバーがバスに乗り込む中、樹里と陽菜は荷物を抱えながら、微妙な顔で並んでいた。

柚希が明るく声をかける。

「日高先輩たち、楽しみですねー! 大浴場、広いらしいですよ」

『……そうですね』

樹里が丁寧に返し、陽菜も無理やり笑った。

『楽しみ、ですね』

バスが動き出す。

窓の外を見ながら、陽菜が樹里にだけ聞こえる声で呟いた。

『……死にたくなってきた』

樹里は短く息を吐いた。

『死ぬな。ただ、慎重にやれ』

不安は、消えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ