表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/176

40話「二度目」

樹里と陽菜が研修旅行で不在の夜。

スナック【Rose】の閉店間際、ドアが乱暴に開いた。

血だらけの女が、カウンターに倒れ込むように入ってくる。

渡辺沙羅だった。

美園は一瞬で動き、沙羅を支えながら奥のソファに座らせた。

『……お前』

「美園さん……」

沙羅の声は掠れ、額から血が滴っている。

唇も切れていた。

美園は黙ってタオルと水を用意し、とりあえず止血を優先する。

沙羅は息を整えながら、力なく言った。

「総長が……九条が、アネモネに捕まりました。

拠点に、連れて行かれた」

美園の手が、止まる。

「一度目に来たとき、断られて……それでも、どうにか自分たちでやるつもりでした。

でも、もう無理です。人数も、力も、足りなくて」

沙羅は顔を上げ、血の気の引いた目で美園を見た。

「お願いです。助けてください。

総長を、取り返してください」

店内に、重い沈黙が落ちる。

美園は沙羅の傷を押さえながら、短く息を吐いた。

『……今は、二人ともいない』

沙羅は何も言わず、ただ俯いた。

美園は天井を見上げ、長く息を吐いた。

『馬鹿な子だ』

沙羅は何も言い返せなかった。

美園はタオルを置き、静かに立ち上がった。

『傷の処理は自分でやりなさい。

私は、少し出かけてくる』

沙羅の目が見開かれる。

「……行ってくれるんですか」

美園は答えず、奥の部屋へ消えた。

しばらくして戻ってきた彼女は、青い特攻服を手にしていた。

薔薇の刺繍が入った、古い服。

沙羅は息をのんだ。

美園はそれを着込みながら、短く言った。

『二度と、私たちの名前を出して因縁を作るな。

これが、最後だ』

そして、店の鍵を沙羅に投げた。

『お前はここで待ってろ。勝手に動くな』

美園は店の入り口に立ち、看板を「準備中」に変えた。

明かりを落とし、夜の闇へ歩き出す。

エンジンの音が、遠くで低く鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ