表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/114

38話「一度目」

閉店間際のスナック【Rose】に、若い女が入ってきた。

十九歳前後。髪型も服装も、特に目立たない。

ただ、目つきだけが少し鋭かった。

美園はカウンター越しに、軽く会釈をする。

『いらっしゃい。もう閉店時間だけど』

女は少し迷ったあと、カウンターに座った。

「……中村美園さん、ですか」

『そうだけど』

「Rose girlsの、美園さんですよね」

美園の手が、わずかに止まる。

『……今は、ただのママだけどね』

女は深く頭を下げた。

「渡辺沙羅です。Beauty Roseの副総長をやってます。

力を貸してください」

美園はグラスを置き、静かに相手を見た。

『……なんの力?』

「アネモネと、抗争してるんです」

その名前を聞いた瞬間、美園の目がわずかに動いた。

短く、だが確かに反応していた。

沙羅は続けた。

「櫻井陽菜さんが解散させた後、今の総長・九条莉乃が再再度チームを立ち上げて、名前をBeauty Roseに改名しました。

美園さんたち三人のことは、今でも伝説として語り継がれています。

アネモネが、昔Rose girlsに負けた因縁を、今さらうちにぶつけてきたんです」

美園は短く息を吐いた。

『断る』

沙羅の顔が、強張る。

「でも——」

『もう、そういう世界には戻らない。

昔の名前を出されても、今の私には関係ない』

声は優しかったが、揺れていなかった。

沙羅は何度か何か言いかけたが、美園の目を見て、言葉を失った。

『帰った方がいい。傷が深くなる前に』

沙羅は唇を噛み、ゆっくりと立ち上がった。

「……また、来ます」

『来ないで』

ドアが閉まる音がして、店内に沈黙が落ちる。

美園は一人、カウンターに肘をついて、小さく呟いた。

『……面倒なのが、来たな』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ