表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/116

29話「給油」

樹里が零のガソリンスタンドにバイクを取りに来たのは、仕事終わりの平日だった。

大きくて黒いバイクが、すでに整備を終えて端に止まっている。

零はそれを見て、慌てたように駆け寄ってきた。

『あ、総長……お待たせしたっす』

『問題なかったか』

『はい。オイル交換とチェーン調整、終わってますっす』

樹里は短くうなずき、バイクの状態を一通り確認する。

零は隣で、まだ少し縮こまったまま立っていた。

『……あの』

『何だ』

零が視線を泳がせながら、切り出した。

『この前、陽菜さんと二人で街にいたとき……鈴原まどかに会ったっす』

樹里の手が、止まった。

『……まどかに』

『はい。向こうから気づいて、声をかけてきたっす。

陽菜さんのこと、すぐわかったみたいで』

樹里はゆっくりと顔を上げた。

目が、冷たくなっている。

『何を話した』

『詳しくは……でも、総長が消えた理由について、少しだけ触れてたっす。

「相当面倒なやつに噛まれたらしい」みたいなことを』

沈黙が落ちる。

零は樹里の顔色を窺いながら、小さく続けた。

『陽菜さんは、その後すぐに美園さんのところに行ったみたいっす。

俺は、それ以上は聞いてないっす』

樹里はしばらく何も言わなかった。

ただ、キーを手に持ったまま、遠くを見ている。

『……そうか』

短く、吐き出すように言った。

『お前は、余計なことは話すな。これから先もだ』

『は、はいっす』

樹里はそれ以上何も聞かず、バイクに跨った。

エンジンの音が、静かなスタンドに響く。

零はヘッドライトの光を浴びながら、小さく息を吐いた。

(……怒ってる。やっぱり、怒ってる)

樹里は振り返らずに、そのまま夜の道へ走り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ