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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
五章 ゲームでいうところの……――

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特別だと思っていたはずの何か



「思ったんですけどもしかして創星神って実のところそこまで凄くないのでは?」


 いや確かに世界を創る事はできるわけだし、そういう意味では凄いと言えなくもないというか、充分凄いわけなのだが。


 だがしかし、とクロノは自分の世界の創星神以外の――それこそステラを探すためにあちこち出向いた世界で見た創星神たちの事を思い返してみる。


 なんというかこう……患っているわけではないが「馬鹿しかいないのかな」という感想しか出てこなかったのだ。三つほど世界を救う流れになったけれど、七つは滅ぼす結果となったのだ。

 滅ぼそうと思って滅ぼした世界も確かにあるけれど、もうこれ滅ぼす以外の方法ある? とかいう手の施しようのないものもあった。ギリギリ滅ぼすような事をしなくてもどうにかなりそうだなと思った矢先にやっぱ駄目だわ、みたいなのとか。


 確かに世界を創りあげたという点においては素晴らしいと言える。

 けれどその後だ。その後その世界がどうなったか、という部分に焦点をあててみれば、作ればいいってもんじゃない、としか思えない世界も確かに存在していて。


 同時にクロノは自分の住んでる世界ってまだそこそこマシな方だったんだなぁ……と実は恵まれていたのだなとか今更のように実感していた。他の世界の存在を知らないわけではなかったけれど、行く機会がなくてふわっとした話でしか知らなかったからこそ、異世界なんてものはお伽噺のようなものと同じ認識でいたのだ。

 お伽噺の中のものであれば、憧れを抱いたところでたかが知れている。

 そもそもいつまでもそんなものに憧憬を抱く事もない。幼い頃から存在している夢や希望が、大人になってもなお根強く存在しているという事はそう無いのだから。気持ちが完全に消えたわけじゃなくても、そういうのは精々昔好きだったなぁ、というような懐かしさへと変わってしまっている。


 だが、実際に行く事になってしまった異世界は、なんというか……確かに自分が暮らしている世界と大きく異なる世界もあって、最初の頃はその中に上手く紛れる事も大変だったりもした。

 住めば都、という言葉もあるがクロノはそれは自分に当てはまる事はないだろうなぁ、という嫌な方向に理解を深めるだけに終わってしまった。

 昔、まだ自分が魔王になる以前の頃であったならば、もしかしたらそうなったかもしれない。けれども今となってはそんな事になるはずもないのだ。

 魔王になんぞなりたくもないし興味もない、とのたまっていた頃ならどんな世界で暮らそうとも引きこもってる事の方が多かったわけで。であればどんな世界だろうとどうでもいい、と言えたのだ。


 けれども今はもうそうではない。


 仮に、自分たちが暮らしていた世界を捨てて他の世界で暮らそうと考えたとしても、残念ながら今まで訪れた他の世界はクロノにとっては正直住みやすいとは言い難かった。

 もしステラや他の――共に来てもいいと言える者たちと一緒に渡ったとしても。

 多分少ししたあとにはもう帰ろうか、なんて言って元の世界に戻っていそうなのだ。


 ちょっとした旅行程度ならいいが、永住は無理。


 それがクロノの認識だった。

 というか、旅行に行くにしても行きたいと思える程のものでもない。


 割とボロクソである。

 その世界の創星神に面と向かってそんなことを言ったわけではないが、それでも言っていたなら多分ブチギレまではいかずともまぁ、顔を引きつらせて嫌味の応酬にはなっていた事だろう。


 けれどもそれも仕方のない事ではないだろうか、とクロノは思っている。

 実際いくつかの異世界に行ったわけだが、そのうち七つは滅んだのだ。

 滅ぼしたとも言うが。


 ちょっとした外来種一匹二匹程度に滅ぶ世界とか、軟弱すぎやしないだろうか。


 なんて、ちょっと相手に責任転嫁するような事も考えたくらいだ。

 というかだ。

 過去にも異世界から誰かしら召喚してその人材から様々な知識や異世界の文明などの参考にできそうなものを得ているわりに、一向に安定しないとかどうなんだろうとクロノは思ったのだ。

 もっと良い暮らしをしている世界の住人を召喚してその世界のあれこれを参考にできたら、もっとこの世界は良くなるのではないか、みたいな考えで召喚していた世界もあったが、外から人を呼ぶ前にまずその世界で暮らす自分たちでどうにか工夫しろとクロノは思ったし、その時同行していた部下もつるっと口に出していた。


 いい部分を真似するとかそういうのが悪いわけではないのだが、いかんせんやりすぎたのだ。

 結果としてとんでもなくちぐはぐになってしまった世界もあった。

 しかもそういう世界にしておいて、その世界の創造主は何が悪かったのかを理解していなかったのだ。


 全部が全部そう、というわけではなかったけれど、それでもあの世界はクロノの知る異世界の中でとんでもなく酷かった。滅ぼすつもりはなかったけれど、最終的に駄目押しした形になってしまった事は否定しない。

 他にもちょっとどうなんだろうなぁ、という世界があったせいで、実の所創星神ってこっちが思っているより凄い存在というわけではないのでは? と思ったのだ。


 あれだ、エルフが弓の腕が凄いだとか、ドワーフが鍛冶においては凄いだとか。

 そういう感じで創星神は世界を創る事ができる、みたいななんていうか種族性という認識になってしまいつつあった。

 世界創造という神秘性もりもりありそうなものが、単なる種族性でそういう特性持ってるだけ、みたいな認識に落ち着いてしまった事もどうかと思うが、今までクロノが訪れた世界が大体そういうアレだったのでもうどうしようもない。


 そしてベルナドットから聞かされたステラたちの話を聞いて、そしてそこにちらっと出てきた創星神の話で余計に大した事ないのでは、という部分はよりガッチリと補強されてしまった。


 世界の創造主という点で、大いなる父だとか母だとかそういった存在として畏れ敬われる事もあったようだが、同時に神を滅ぼし新たな世界の礎は我らが作るのだ! みたいな反乱も起きていた世界があったくらいだ。

 まぁ、創造主死んだらその後世界は緩やかに死んでくわけだが。


 ちなみに世界が滅んでも創星神が死んだわけではない。

 今回の反省を活かして次の世界はもう少しちゃんとしたものを作る、と言っていた者もいれば、何が悪かったのかわからないけどとりあえずもっかいチャレンジしてみる、とか言い出したのもいる。


 なんというか、だ。


 他者の力を借りるのは悪い事ではないけれど、頼りすぎるのもどうなんだろうな。

 というのがクロノの出した結論でもあった。


 反省して次はもっと改善する、と言っていた創星神がまた新たに作る世界は多分前よりはマシになるだろうと思うけれど、何が悪かったのかを理解できていない創星神の作る世界はまた同じ過ちを繰り返しそうだなと普通に思ったのだ。


 そこで、ベルナドットから聞かされたこの世界の創星神はどちらだろうかと考える。

 一応改善点などは考えているようだが、いかんせん聞いた話からそそっかしいイメージしかない。

 やる事なす事裏目に出るというか。

 頭が悪いというよりは圧倒的に間が悪い、という印象が強すぎた。


 これはルクスの推測も含めて語られた話ではあるが、神族同士で争う結果になった話を聞いてクロノはよりそう思ったのだ。

 神族と対をなす存在を作ろうとして、いざ作ったもののそれが生み出されたのが神族の中。結果として時間の経過とともにじわじわと乗っ取られるとか、それ最終的に今度は神族が全部いなくなるパターンでは、とクロノだって思ったのだ。

 神族全部が魔族側に転身してしまった後で新たに神族を生みなおすのであれば、まぁ、バランスがとれなくもないかなと思わなくもないが。


 いやそれにしても……とクロノもレェテも思ってしまったのだ。

 新たな種族を作る時はもっとこう、慎重にやるべきでは? と。


 とりあえず今の所その創星神はステラたちと共にいるらしいので、それ以上は考えない事にした。

 もしどうしようもなくロクでもない存在であったら、多分ルクスが上手く丸め込んだりしているか、はたまたステラが徹底的に心をへし折っているに違いないのだ。

 それもしないでとりあえず一緒にいる、というのであればまだマシな部類なのだろうと思いたい。


「今までの創星神を見ると確かにロクでもないのばかりだな、という部分を否定はしません」


 クロノの呟きに、レェテも渋面を浮かべつつそうこたえた。


「そう考えると、うちの世界の創星神って実はとてもマシなのでは? と思えてきましたね」


 そう、そうなのだ。

 正直自分の住んでいた世界の神族の頂点に存在している創星神も大概だなとクロノは思っていたのだ。以前までは。

 けれどもこうしていくつかの異世界の創星神やその世界そのものを見て、むしろうちの創星神、とてもマトモなのではと思い始めていた。

 レェテはそんなクロノの思考を読んだのだろう。


「主、下を這いずる連中の中で誰が一番マシであるかを決める不毛な考えは捨てた方がいいと思いますよ」


 そのレェテの言葉に。


 クロノは数秒考え込んで、それもそうですね、と頷いたのだった。



 これが別の部下や眷属の言葉であったなら、あまり深刻に捉えたりはしなかったのだけれど。


 だがしかしレェテはかつて、神族の眷属として世間一般では天使と呼ばれる種族として働き、しかもその地位はかなり高かった。まぁその後堕天して今に至るわけだが。


 そんな、神という存在の身近にいたはずの男にそう言われてしまえば、クロノだって危うくうちの神様マシだったんだな、なんて思い込みも吹っ飛ぼうものである。

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