74話 戦闘
灰色の毛並みに、4つの逞しい脚。鋭いキバを露出させ、うなり声と共に襲いかかってくる。
オオカミ型の魔物、ファングだ。
「風の神タンペットよ、我らが敵を打ち払え!」
エミィさんがそう唱える。すると、私たちの回りに風が吹き荒れ、ほんの少しだけファングが止まり、風をやり過ごそうとする。
「食らいなさぁい!」
「フンッ」
そのほんの少しの隙を、フィリーさんとオスヴィンさんが突く。
フィリーさんは鞭を大きく2回振る。編んだ革の先に金属製の矢尻みたいなのがついた鞭だ。ビュン、ビュンと音をたてながら、正確にファングの首を撃ち抜く。その結果、一体の首は半分くらいすぱっと切り裂かれ、もう一体の首は変な角度に折れ曲がった。うひぃ。
オスヴィンさんは大きな盾で2体まとめて押し潰した。鎧を着込んでいるのに、その身のこなしは驚くほど速い。一瞬立ち止まったファングたちはそこから動くこともできなかった。たまたま2体まとまった位置で立ち止まってしまったのも、ファングたちにとっては運が悪かったとしか言いようがない。
「ヤア!」
魔法を唱えていたエミィさんも、すぐさま剣での攻撃に移っており、今1体を仕留め、もう一体も仕留めんとしている。
3人ともすごく強い。私たちの出る幕なんてなかった――
「ゥガアッ!」
――などと油断した瞬間、もう3体が茂みから飛び出してきた。すかさずフィリーさんが鞭を振って一体を仕留め、オスヴィンさんが1体の前に立ち塞がるけど、残り1体が大人たちの防衛戦を突き破って来てしまう。
ちょうど私とニーナちゃんの真っ正面。口を大きく開き、よだれが垂れるのも構わず一直線に私たちへ向かってくる。ニーナちゃんが慌てて右手を前に出して息を吸う。
「ひっ、火の神、ふ、フラム様の力、を、――」
ニーナちゃんが完全に怖がっている。いつにも増して話し方がおぼつかず、何度もつっかえている始末。
たぶん魔法は間に合わない。そう勝手に判断した私はファングへと走る。このくらいの速さの相手なら、今の魔術で十分。一瞬、相手のファングが驚いたのか、たじろいだような気がする。
軽く拳を握り、素早くファングの側面へ回って、お腹を横から殴る。固い毛皮とその下の筋肉の感触があったのは一瞬だけで、体をくの字に曲げたファングは私の手を離れて吹き飛んだ。そして木に勢いよくぶつかり、ぐったりとして動かなくなる。
先程まで感じていた魔物特有の威圧感は、さっぱり消えてなくなった。辺りを見渡せば、立ち上がっているファングは一体もいない。
「……ごめんね」
襲ってこられたから防衛しただけ。殺られる前に殺っただけ。
でも、ふとそんな言葉が出てきてしまった。
「ふぅ。はぁーい、皆、怪我はなぁい?」
フィリーさんが大きく明るい声でそう声をかける。いつもと変わらぬ笑顔での呼び掛けに、少し気持ちが落ち着く。
皆でお互いを見合って怪我の有無を確認する。全員特に怪我することなく撃退できたみたい。
「うん、大丈夫そうねぇ。最初がこんな夜戦になっちゃったけど、ホント、皆無事でよかったわ」
「フィリー、子供は早く寝かせろ」
オスヴィンさんが低い声でそう言う。オスヴィンさん自身は小さなナイフを取り出し、ファングのもとへ歩いている。これから解体作業をするのだろうか。
「あ、それもそうねぇ。フリッツ君、ニーナちゃん、ユヌちゃん、お疲れ様、ゆっくり休んでちょうだい。エミィちゃんも疲れたでしょ、ちょうど夜の番の交代時間くらいだし、寝ちゃいなさい」
フィリーさんが皆を労る。
子供とひとくくりにされたエミィさんは少し不服そうな声を上げる。
「フィリーとオスヴィンは起きてるのか?」
「そ、ダメにならないうちに解体を済ませなきゃ」
「ならアタシも手伝おう」
「あらそう? んー、でも、今回はいいわ。二人を寝かしつけてあげて」
フィリーさんは私とニーナちゃんに視線を向ける。
「む、わかった。では二人とも、テントに戻ろうか」
エミィさんはしぶしぶといった感じで了承。
エミィさんに引きつられてテントの中へと戻ると、なんだかんだで今の戦闘で疲れたのだろうか。スーッと眠気が襲ってきたので、すぐに寝てしまった。
戦闘シーン全然うまく書けない
私用により、今週の水曜の投稿は休みます




