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75話 魔術講義再び?

「師匠! どうか魔術を教えてください!」

「いや、これまでも教えようとしてきたんだけど……」


 私たちは今、朝食を食べている最中だ。

 寝ている間にファングはきっちりと処理されたみたいで、あとに残されたのは麻袋に入れられた魔石やキバと2枚の毛皮だけ。昨日襲ってきたファングは全部で9体いたけど、それらすべてをきれいに毛皮に加工するなんて、相当な手間だ。それで暮らしを立てていくならまだしも、私たちは旅人。荷物を増やしたくない。

 で、そんな話をフィリーさんから聞かされながら朝食の準備を済ませ、みんなで仲良く食べていたところ、フリッツ君から魔術を教えてくれと頼まれた。

 うん、君が魔術を使えるようになりたいのは知ってるけどさ。なんでまた改まって?


「俺、昨日は何もできませんでした。だから、今度はできるようになりたいんです!」

「あー、なるほど?」


 そういえば、昨夜のフリッツ君はただ突っ立ってるだけ……なんて言うと失礼だけど、そういわれてもしょうがない状態だったかも。でも、それは私たちがエミィさんたちに守られていたから、何もしなくてよかったというだけじゃないかと思う。

 最後の一体だけは大人の防衛ラインを越えて私たちに襲ってきたけど、それだって私とニーナちゃんのいる側で、フリッツ君のちょうど真後ろになる所だ。だから私が対処した。

 フリッツ君は何もできなかったのではなく、何もする必要がなかったのだ。


「――というわけだから、それほど気にすることでもないんじゃない?」

「でも、何もできなかったことに変わりはないんです。俺は、もっと、強くなりたい……」


 後半部分はうつむいて、呟くように言う。どうやら理屈の問題ではないようだ。

 まぁ、男の子ってこういうものかも。私のよく知っている男の子のルカだって、日々新しい魔法を使えるようになろうと奮闘してたし。

 でも単純に強くなりたいなら、魔術を習得する努力をするよりも、普通に剣術を磨く努力をするほうがいいと思う。だって魔術を使える人ってすごく少ないんでしょ? フリッツ君がどれほど頑張ろうと、魔術を使えるようになるとは限らない。できないことを頑張るより、できることを頑張ったほうがいいんじゃないかなぁって、私は思う。


「まぁ、一応今まで通り、教える努力はしますけど……使えないかもしれないよ? 普通にオスヴィンさんに剣術を教わったほうがいいんじゃない?」

「それは……そうかも、しれません、けど……」


 ここまで歩いて旅をしている最中、何度も初日に言われたことをやっているみたいだけど、出来てなさそうなのだ。魔術が発動すると、なんか何でもできそうな感じがするから、すぐにそれと自覚できる、はず。

 それから朝食の間中、フリッツ君は考え込むようにして黙り込んでしまった。




 いつも通り火の始末などをしてから出発。今日からはまたニーナちゃんも私に背負われることなく、自分で歩く。


「コツ、みたいなのってあるんですか?」

「うーん、一応、血の流れを無理やり動かすっていうのが、私なりのコツだったんだけど……」


 フリッツ君の質問に正直に答えると、僅かにフリッツ君の顔がしかめられた。

 ごめんね、参考にならなくて。


「リッツ兄。血の流れ、っていうのは、魔力のこと、だよ」


 ニーナちゃんが近寄ってきてフリッツ君にアドバイスを言う。

 あー、そういえば私、ルカから言われてそうらしいということは知ってたけど、フリッツ君に教えてなかったな。でもフリッツ君の顔は曇ったままだ。


「魔力、か……魔法、苦手なんだよな」


 苦手、ってことは使えるんだ。羨ましい。私は魔法一切使えないからね。


「あ、そうだ! いっそのこと、魔法の訓練して見たら?」

「へ? 師匠、なんで?」

「ほら、魔法を使いこなせるようになれば、魔力の扱い方がわかるでしょ? そうしたら魔術もできるんじゃないかなーって」


 明確な道を示されたフリッツ君は、ようやく目に光が戻ってきた。

 剣術に加え、魔法も扱えれば遠近両方に対応できるし。うん、我ながらいいことを考え付いたのではなかろうか。

 ニーナちゃんやエミィさんあたりに教わってみたらいいんじゃないかな。


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