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55話 南町

 皇都は大きく5つに分けられる。

 まず城を取り囲む貴族街の中心町。歴史と活気のある漁師たちの住まう沿岸町。それから、庶民の家々の立ち並ぶ東町、旅人のための宿が多い北町。

 これが皇都だ。

 ……4つしかないじゃないかって?

 そう、公にはこの4つの町で皇都は構成されている。

 残り一つは公式には町として分類されていないのだ。それが南町、「貧民の南町」である。



「って本で読んだんですけど、全然そんな感じしませんよ? むしろ活気溢れているというか……」

「その作者はちょっと偏見があるわねー。私なら……そうね、産業の町、かしら」

「へぇー」


 北町の冒険者ギルドから東町を経由して南町にやって来た。南町は皇都全体から見て、南東に出っ張りがくっついたような感じで存在している。

 皇都に出稼ぎに来たものの、住まいを持つことができなかった者たちがより集まってできた町で、同じ平民の住まう東町とはまた風景が異なる。

 東町の家々の壁は白く塗装されていたが、こちらは木材がそのままむき出しになっている。東町には4,5階の建物もあったが、こちらはどんなに大きくても平屋建てだ。おそらくしっかりとした造りじゃないから、複数階建てに耐えられないのだろう。更に道も石が敷き詰められておらず、地面がむき出しになっている。私としてはこっちのが歩きやすいけど。

 そんなおんぼろの外見の南町だが、寂れているという訳ではない。


「そこの嬢ちゃんら、アクセサリーはいらんか!? 彼氏へのプレゼントにもいいぞ!」

「だめだめ、あっちの店のアクセサリーは質が悪い! プレゼントならこっちの店のがいいぞぉ!」

「そこの道行くお兄さん、靴に輝きがないようですぞ。どうですか、銅貨5枚で本来の輝きを戻して見せましょう!」

「あの、回収屋でーす! 要らないもの、なんでも回収してまーす!」

「南町印の特製堆肥! 今ならキロたったの銅貨1枚! 本日限り数量限定、さぁ買った買った!」


 今私たちが歩いている通り沿いにはいくつも露店が出され、店主たちは声をあげ客を呼び込もうと必死だ。とても活気に溢れている。東町や北町にはほとんど露店が無かったけど、ここ南町は露店販売が中心みたいだ。


「南町の物は安いの。何か気に入ったものがあったら私が買ってあげる。2人とも遠慮しなくていいからねー」

「えぇ? ミオ姉さんに悪いよ」

「いいの、好きでやるんだから」


 ミオ姉さんに引き連れられて南町の通りを歩く。私とエミィさんはあちこちのお店を覗いていく。

 私は主にアクセサリー店を見ている。確かに安く、そして見た目も悪くないように思える。普通に東町や北町でお店を構えればいいじゃないかと思うのだが、そう上手くはいかないみたい。

 ミオ姉さんが教えてくれたんだけど、皇都には地価? というものがあって、お店を持つだけで継続してお金が要るんだって。でも南町はそれがないらしい。


「あ、これ……」

「お嬢さん、お目が高いねぇ。それはサクリっていってね、あたしゃらの村の特産なんだよ……って、アンタ着けてるじゃないかい」


 私が左手に巻いているのと同じものを見つけたので、つい足が止まってしまった。色はみんな違うけど、みんな同じ編み方をしているので模様が同じだ。

 ちょっと目付きの悪いお婆ちゃんが売り子をしている。見た感じあんまり売れてなさそうな……

 ここで足を止めたのも何かの縁。折角だから少し買っていこうか。ミオ姉さんは……今エミィさんと一緒にいるか、自腹で払ってしまおう。


「はい、とある人からもらいまして。……私も誰かにあげれるように買っておこうかな」

「おぉ、そりゃいいぞい。知っとるかもしれんが、こいつは危険を一度だけ退けてくれるってやつでな、まぁあたしゃ何度でも効果があると思ってるが、アンタの大切な人、そうさね、家族にでもくれてやるといい」

「あはは、そうします」


 ホントはもう家族いないけど。

 1つ銅貨3枚で、それを3つ。「サービスだよ」といって全部で銅貨8枚で売ってくれた。ルカと、エミィさんと、ミオ姉さんで3つ。

 エミィさんとミオ姉さんにはその後すぐに合流して手渡した。ミオ姉さんはその分のお金を払うと言ったけど、私からの贈り物だから、大したお金じゃないから、といってそのままゴリ押した。

 帰ったらルカにも……ルカ……料理……

 せっかく忘れ始めてたのに思い出しちゃったよ、気分が重い。


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