35話 豪華な夕食
「このさくっとした衣、それだけど中身はプリっとした食感! そして口の中に広がるこの幸せ……これはまさにエビ天!」
「ルカうるさーい。あ、これおいし」
「ほぉ、これは旨いな。ユヌ、そちらの皿も取ってくれるか」
「はいはーい」
「あぁ、醤油、醤油が欲しい。でも塩だけで食べるもの美味しい…!」
暫くして夕食の席となった。
ついさっきまで歩き疲れてぐったりしていたはずのルカが一転、爛々と目を輝かせて一心不乱に料理を口に運んでいる。ちょっと引くレベルでテンションが高い。
まぁでも確かに出された料理はどれもとても美味しい。今食卓にはルカが嫌に感動している「エビテン」をはじめ、雑魚と根菜のサラダ、白身魚のポワレなど、海の幸がずらりと並んでいる。これだけの料理を4人で大銀貨1枚っていうのは納得のいく金額だと思う。
「本日はお客様がいらっしゃったとのことでしたので、少し奮発しました。ガルネレの衣揚げがお気に召されたようで何よりです」
「美味しくできていてよかったのです」
そうそう、エトムントさんには従者が2人いた。パッと見20代くらの女性と、10代後半の女性で、似通った表情に雰囲気、同じ薄紫の髪と暗い瞳を持っている。姉妹なのだろうか。机に並んでいる品々は彼女らの手によるものだ。
ちなみに、私は今回の食事でフリッツという料理が一番気に入った。細長く切った芋を揚げて(熱した油の中に食材を入れることらしい)塩を振りかけたもので、パンの代わりに出された。
「……僕だけの時よりも随分と豪華じゃないか?」
「エトムント様は普段施されないじゃないですか、そういうことですよ」
「お金を貰わないのに働くわけないでしょう? 親方様から貰う以上のことはしないです」
「全く誰に似たのやら……さて、自己紹介がまだだったね。僕はエトムント、一応貴族で、そこのホセアの大親友だ」
「何が大親友だよくそったれ。こっちにいるのは、俺から近い順にルカ、ユヌ、エマヌエーラだ」
笑顔を浮かべながら自己紹介するエトムントさんは、やはりというか貴族らしい。
まぁこの部屋に飾られているお皿や壺、従者がいることなどから薄々わかっていたことではあるのだが、改めてそう言われるとこんなにガツガツと料理を頂いていいのだろうかと思ってしまう。
ちらりとホセアさんを伺えば、ホセアさんは手をヒラヒラとさせながら首を横に振った。
「遠慮は要らん。一応ってだけで、コイツは半ば家から追い出されている形だからな。権力もなにもねぇし、心も広いヤツだ。ルカくらいもっとガッツリ食っておけ」
「はぁ。それじゃあ遠慮なく頂きます、エトムント、様?」
「あはは、様付けなんてしなくていいよ。従者でもないんだから。現にホセアは僕のこと呼び捨てだろう? だからエットーとかって呼んでくれたっていいんだよ?」
それは流石に……という訳でさん付けで妥協してもらった。
よく聞く傲慢な貴族とは違い、エトムントさんは気楽に会話のできる人だった。食事には手をつけず、主人の傍に屹立している従者さんともお話をした。
ホセアさんがどうして貴族のエトムントさんと知り合ったのかを聞けば、魔法学校での同期だったらしい。
魔法学校と言えば、まさにルカが入学する予定のところである。それじゃあルカにも貴族の知り合いができるのかと思ったら、普通の貴族は庶民を相手にもしないので難しいだろう、ていうかトラブルの元だから貴族には近づくな、なんて話になった。エトムントさんはかなりの変わり者みたいだ。
その後も主に魔法学校の話題に花を咲かせ、楽しい夕食の時間となった。




