10話 シャルさん
倒れていたお姉さんに私の非常食(元々ルカのご飯)の干し肉をふるまう。
体つきからして、お姉さんは私よりも5つくらい上かな、だいぶ胸部の主張が激しい。髪は輝きを放つ金色でゆったりとしたウェーブがかかり、その目は水をたたえたような青色で穏やかだ。およそ旅に似つかわしくないふわふわとした若草色のドレスと相まって、どこぞのお姫様のような印象を受ける女性だ。
魔力放出はもうしておらず、今は一生懸命に干し肉をほおばっている。
そして干し肉を食べ終わると一息ついて、
「はぁ、助かりましたぁ。貴重な食糧、ありがとうございます」
と私に礼を言ってきた。
「いや、元を言えばこれルカの分だし、もっと元を正せばホセアさんが買ってきたものだし、何より困っている人は助けるのは普通ですし」
「ふふ、奢らない人ですね。では改めてここにいる皆さんに礼を。どうもありがとうございます」
「おうよ、まぁ食う元気があるなら大丈夫そうだな。俺は行商のホセアだ。参考として聞いておきたいんだがいったいどうして行き倒れてたんだ?」
「あぁ、まだ名乗っていませんでしたね。私のことはシャルとでもお呼びください。そうですね……事情を話すと少し長くなってしまいますが、お聞きになりたいですか?」
シャルさんはちらりと太陽に目を見やる。
別段急いでいる旅ではないし、そもそもルカのおかげでここまでの道のりはスムーズである。日も傾き始めているから今日は早めに野営にしてもいいのではないだろうか。
そして単純にその話に興味がある。
そんな気持ちを目線に込めてホセアさんに送ると、ため息をつかれた。
「ユヌは聞きたいみてぇだな。ルカ、いいか?」
「まぁいいんじゃない?」
「はぁー。ま、うん、急いでるわけでもねぇからな、いいか。よし、んじゃ今日はここらで野宿するぞ」
「やった!シャルさん、お話、聞かせてくださいね!」
「えぇ、お望みとあらば」
そんなこんなで行き倒れていたシャルさんと一緒に野営することになった。
夕食後。
「私の分のご飯まで、本当にありがとうございました」
「もともと予定日数より3日分は余計に持ってるからな、大したもんじゃねぇ」
「そんなことより、ご飯食べ終わったんですからお話、聞きたいです!」
「あら、好奇心旺盛な魔法使いさんね」
ん?
私魔法使いなんて自己紹介したっけ?
あ、そもそもまだ自己紹介してないか。
「えっと、自己紹介遅れました、私、ユヌって言います。魔法は私使えないので、魔法使いじゃないです。あえて言うなら素手使い?」
「あら?そうなのね。ごめんなさい、女の子って魔法使いのイメージがあるから……」
んー、確かに世の中で目立つ女性は魔法使いであることが多いか。
魔法は身体能力で左右されないもんね。
「それでお話ね?」
「あっ、お願いします」
「始まりは、そう、まずは私のことからね……」
その後、つらつらと話が続く。
簡単にまとめると。
シャルさんは彼女の地元では結構な美食家らしい。質のいい食べ物ばかり食べていたみたい。
日々を食いつなぐので精一杯だった私からすれば考えられない生活だ。
おそらく回りは少なからず迷惑に思っていたのではなかろうかと思っていると、それを肯定する出来事が語られた。
遂にその地元を追い出されてしまったらしい。それがだいたい1年前。
追い出されるときにありったけの食べ物を持っていたので、暫くはそれで食いつないだとのことだが、そんな生活が長持ちするはずもない。
私が毎日食べている干し肉だって、通常1週間、保存方法を工夫して1ヶ月と半月がやっとだ。
当然行く先々で、いろいろ探し食べてたそうな。なかには地元では食べれないほどの美味しいものもあったらしい。じゃあずっとその美味しいものを食べていればいいじゃんと思うのだが、「同じものばっかりとか飽きちゃうでしょう?」とのこと。
なにそれすごく贅沢。
そしてそんな時、シャルさんは一つのことに気づいてしまったらしい。




