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強制敬語やめさせちゃう計画

絵里さんとのんびりと帰り道を歩きながら、他愛もない会話をしていた。

だけどやっぱりいきなり敬語をやめろと言われても、第一印象というものはなかなか消えないもので、会話のところどころに敬語が混じってしまう。

そのたびに絵里さんは苦そうな顔をしていたが、それにも慣れてきたようで10分もすればその苦い顔も見ることはなくなった。敬語は抜けてないけどね。

絵里さんは隣のクラスで、親の都合で今のマンションに一人暮らしをしているとのこと。

娘が心配だから警備万全のセ○ム顔負けの警備をしているあのマンションに入居させたんだって。


「じゃあ絵里さんってやっぱりお金持ちなんじゃない?」

「あたし自身はそんな風に育てられたような覚えはないんだけどなぁ」

「まぁ・・・」


僕は絵里さんを見た。

さっきから『凛々しい』とか『カッコイイ』とかって言葉を使ってるけど、悪く言えば『男っぽい』とか『ざっくりしてる』って言葉がピッタリだ。

現にクラス内では『姉御』の呼び名で呼ばれることもあるんだとか。

そんな絵里さんを一目見ただけでお金持ちの御令嬢だと判断できる人はそうそういないだろう。

もしいるとすれば、その人もお金持ちの人とかなのかなぁ?


「おい。聖。今私のこと見てお金持ちっぽくなーいとか思ったろ」

「ギクッ!」

「ギクッ!って口で言うなよ。やっぱり思ってるんじゃねぇか」

「ど、どうしてわかったんですか?」

「わかるも何も、聖は顔に出やすいタイプみたいだな」


僕ってそんなに顔に出てるの!?

・・・ハッ! そういえば山田くんにもよく心読まれてるし!

山田くんは人の心が読めるとか言ってたけど、あれは嘘だったのか!

まんまと騙されてた!


「アハハハ。ホントに顔に出るんだな」

「笑わないで! これから気をつけますー!」

「直さなくても面白いからいいのに」

「僕が面白くないの!」


まったく人事(ひとごと)だと思って・・・って人事か。


「聖は騙されやすいタイプなんだな」

「だから気をつけるって言ってるじゃないですかー」

「もしかしたら、私は聖と同い年じゃないかもしれないぞ?」

「えっ?」


そっか! 絵里さんって結局なんの証拠も無しに『あたしは同い年だよー』って言っただけだった!

じゃあ僕ってばまた騙されてたことになるの?

でもでもでも・・・


「アハハハハハ! 冗談だよ。冗談。いつか高い壺とか買わされるんじゃないか?」

「っ! また僕でからかって・・・ もういいです。絶対に敬語で話してやります」

「おっと、それは困るなぁ。ほらほら、先輩の言うことは絶対だぞ?」

「僕はそんな先輩至上主義みたいな国で育ってません」

「なんだよ、拗ねるなって。悪かった! ごめん!」


手を合わせて頭の上に持ってきて、大げさに謝る絵里さん。

そこまでされては僕もまいったと言うしかないわけで・・・


「わかりましたよ」

「いいや! これじゃあたしの気が済まない! 土下座させていただく!」

「土下座っ!? ちょっと勘弁してくださいよ!」


そう言った絵里さんは、自転車をスタンドで倒れないようにすると、両膝をつくために膝を曲げた。

そこまでさせるつもりはないので、僕は絵里さんの腕を掴んで慌てて引き上げた。


「これはあたしのプライドと夢と希望と勇気とプライドを捨てた土下座だ!」

「色々捨てすぎです! プライド二回言ってますし!」

「大事だからだ!」

「どうでもいいです! 早く顔上げてください!」

「あたしからの条件を守ってくれるのか?」

「守ります! 守りますから!」


こんな道路の真ん中で屈まないでほしい。

人が少ないとは言え、一応下校時間だから、いつもよりは人が多いんだ。


「敬語で話すのやめるか!?」

「やめます!」

「もっとフレンドリーにため口で話すことを誓うか!」

「誓いますー!」

「やったね!」

「ヒャッ!」


スッと絵里さんから下へ向かう力が抜けて立ち上がったので、僕は勢い余って尻餅をついてしまった。

その瞬間、とても女々しい声が出てしまったが、どうか聞かなかったことにして欲しい。もし聞いていたとしても忘れて欲しい。記憶に一片も残らないようにしてください。マジで恥ずかしいから。


「大丈夫?」


尻餅を付いていた僕に絵里さんが手を差し伸べた。

その手の先にあった絵里さんの顔は、うっすらと笑みを浮かべていてとてもカッコよかった。

僕もこんな人間に生まれたかったなぁ。

その手を掴むと、絵里さんに引っ張られるように僕は立ち上がった。

立ち上がってみるとわかるんだけど、この身長差も羨ましいなぁ。

だって頭一つ分ぐらいは違うからね。


「ありがとうございます」

「ございます?」

「え? なんか変なこと言いました?」

「コラコラ。君は誓いを破るのかね?」


イタズラっぽく笑う絵里さんの顔を見て、僕はさっきの誓いを思い出した。


「あっ!」

「思い出したか?」

「もしかして・・・」

「フフフ・・・聖は騙されやすいんだな」


さっきの土下座の一連のやりとりは全部演技だったのか!


「騙す方が悪いんですよ!」

「騙される方も油断しすぎなんだよ。あと敬語」

「くっ・・・わかりま・・・わかった。もう絵里さんのことを見た目で判断しないようにしま・・・するからね」

「その調子で頑張れー」


ヒラヒラと手を振って前を歩いていく絵里さん。

僕が絵里さんに勝てる日は来るのだろうか?

ってゆーか、この人、僕で遊びすぎだろ!

こうなったら敬語で話さないようにしないと、会話にならないよなぁ。

はぁ・・・

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変喜びます。

前宙にチャレンジいたします。


絵里さん。

まじいけめん。


次回もお楽しみに!

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