待ち伏せ
放課後。
僕は方向的に一緒に帰る友達がいないので、今日も一人で帰ろうと校舎を出た。
「見つけた!!」
背後で大きな声が聞こえた。
思わず振り返ると、そこには僕に向かって走ってくるあの凛々しい女の人がいた。
「あっ」
「よっ。やっと見つけたぜ。帰りに待ち伏せしてたかいがあったな」
「待ち伏せ? どうしてですか?」
「どうしてって、お前が何か言いたそうに、してた、から・・・」
ん?
首を傾げる僕のことを上から下まで見て、とても不思議そうな顔をしている。
「昨日も思ったんだけどよ、どうしてお前学ランなんか着てるんだ?」
やっぱり!
「昨日言おうと思ったんですけど、僕はれっきとした男です」
「はぁ? 冗談も休み休み言えよ」
「冗談じゃないってば! 冗談なんて言ったことないですよ!」
「はぁ? だってこんなにちっちゃくてこんなに可愛いのに男なはずがないだろ」
「ガクッ」
またこれだ。
僕はこの女の人が言ったとおり、背が小さくて可愛らしくて言動や行動が女々しいらしい。気がつくと内股になっていたりもするらしい。全部山田くんが教えてくれた。
この容姿のせいで、人からは良くバカにされる。それにも耐性がついてきたとはいえども、初対面の人にはよく間違えられることが多い。なんだかなぁ。
僕は、こうして間違えられてもちゃんと証明できるように持ち歩いている、国民保険証を見せた。
「これが証拠です!」
「紺野聖・・・男・・・男っ!?」
「どうですか? これで納得してくれた?」
「お前・・・ホントに男だったのか・・・」
「だからそうだって言ってたじゃないですか」
「そっか。それは悪かった」
「いえいえ。昨日は助けてもらったんで、おあいこと言うことで」
頭を下げる女の人。そして顔を上げて、僕のことを見た。
「お前の名前見ちゃったから、あたしの名前も教えるわ。あたしは富坂絵里。えりって呼んでな」
「いきなり下の名前? ちょっとハードルが高いなぁ・・・ せめて富坂さんとかでもいいですか?」
「あたし自分の苗字、あんまり好きじゃないんだ。だから名前のほうが助かるなぁ」
上目遣いで言っているが、僕の方が圧倒的に背が低いので、あまり可愛らしくは見えなかった。
「じゃあ、絵里・・・さんで」
「さん付けか。まぁ苗字で呼ばれるよりはいいや。よろしくな。聖」
僕のことは名前で呼ぶんだ。
まぁ呼び方なんてあんまり気にしないからいいや。
「聖はどっち?」
「どっちって?」
「帰る方向だよ。駅の方? それともバス?」
バスは学校前にバス停がある。そして駅の方というのは、いわずもかなJRである。
そして僕はどれでもなく、誰も歩いていかないような方向に帰る。
「僕は裏側です」
そう。僕の通学ルートは、学校の裏側を遠くまで歩いていくルートで、まだ未開拓な土地のど真ん中に新しく建てられた新築の一軒家が僕の家になっている。その未開拓な土地に着くまでには、それなりにビルなどが建っていて、昨日はその辺で絡まれたのだ。
さっきも言ったように、そこまでの距離が遠いのも、交通機関を使うと遠回りになるのも、全部未開拓な土地だからである。お父さんが言うには、ここ何年かでこの地区は活性化されていき、家や建物もバンバン建っていくらしい。自転車よりも歩くほうが好きだから、徒歩で登下校をしている。
「裏側って、あっち?」
「そっちですね」
「偶然だな! あたしの家もそっち方面だ!」
「もしかしてあのでっかいマンションに住んでるんですか?」
「おう」
うひゃー!
家から見える超高級マンションに住んでるらしい。
近くで見たときはもうマンションなのかお城なのか分からないくらいの豪華さだった。
玄関にガードマンが立ってるマンションなんてマンションじゃないもん。
「なら一緒に帰るか。チャリは?」
「僕は徒歩です」
「徒歩ぉ? あの距離をか?」
「はい。歩くの好きなんです」
「ふーん。じゃあ歩いて帰るか」
そんなわけで絵里さんは、駐輪所で自分の自転車を急いで取ってきた。
そして僕と並んで歩いて帰った。
「あのさ、どうして敬語なんだ?」
「だって絵里さんって年上じゃないんですか?」
「年上じゃねぇよ。同い年だよ」
「えっ!? 同い年!?」
「・・・なんだよ」
「だってすごい大人びてるし、背高いし、カッコイイし、ずっと年上かと思ってました」
「まぁよく言われるな。だから敬語はやめろ。なんか気持ち悪い」
「やめろって言われても・・・」
そんな急に言われてやめられるもんじゃないでしょうに。
「わかった。じゃあなるべくやめろ。時々出ちゃう分には勘弁してやるから。な?」
「わかりました。なるべくですね」
「おい。人の話聞いてたか?」
「・・・努力します」
・・・しばらく敬語は取れそうにないな。
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次回もお楽しみに!




