しきるちゃんの!『ガチンコ国盗り合戦#5』
セッティングは完了した。
まだターゲットはあらわれない。
スコルテは黒一色のモニタを、ひたすらにらみつけていた。大広間に持ちこんだ機材とその接続は、すべてチェックを終えている。スイッチを押せば、いつでもぶちあげられる状態にある。
なぜか、マスカレーネが城内にいた。そして、攻城兵器と部隊は城外だった。スコルテはこの一見矛盾した状況について、熟考を重ねた結果、敵が攻めてくるものとして結論を出した。
黒一色にモニタの下部より、ターゲットをあらわす三角がいくつも浮かび上がってきた。
攻め上げて来ている。
「来たぞぉ……ねずみどもが……」
モニタの右下に、ターゲット数が表示されていく。
十――百――五〇〇――。
数字は一五〇二で止まった。
機械は魔法でつくっているため、数字には弱かった。多いのか少ないのかわからなかった。四桁もあるからかなりの敵数だ――スコルテはそう結論を出した。
「ククク……腕がなるぜ……」
《スコルテ様! 待ってください!》
そのとき、ローカルが来た。
見張り塔から目視警戒をおこなっている護衛兵。
《馬鹿野郎! 今、もう敵がきてるんだ! 何だ今ごろ!》
《敵じゃあありません! トラジ様の隊です!》
思考が停止した。
《トラジ……何でここに? ……敵が攻めてくるんじゃないのか?》
《わかりません! しかし!》
がっくりと肩を落とした。
ぶちあげられなければ、しきるとペルソナーレにどやされる。しかし、味方をぶちあげるわけにはいかない。わかったと答え、ローカルを切った。
「仕方ない、作戦中止だ。仕掛けを撤去する。誤動作する危険があるから、トラジたちと合流したのち城門に設置した爆薬から……」
*
「バカじゃなお前!」
「うるせぇクソババ! あっちの方が近道だと思ったんだよォ!」
「俺がッ、俺こそがッ」
「下がってろマローネ! そもそもお前らは関係ねえだろぉよォ!」
「何を抜かす! 見せ場なくして引くことはできん!」
一五〇〇が地を蹴る。
空中で激しく回転をはじめた。
「加齢そのものォー!」
「俺だって、俺だってやってやる!」
「『将軍を、すごくそうする』」
「何だその魔法! 効果は何だ!?」
「効果は特にない。気持ちの問題だ」
「そんな魔法あるかァ!」
「部下がいないから具体的には発動しないんだ」
「魔法ってのはよぉ、マローネ、いいか! こうやるんだァ!」
「『花道』」
赤い絨毯がまっすぐに伸び、すぐ目前にまでせまった城門を突きぬけた。
*
「うわあ綺麗。あんなの用意してたんですか? なんか、魔王国領、ちょっと期待しちゃうなあ」
護送車の窓から見える色とりどりの花火を、頬杖をついたシューイチがうっとりとした表情で見上げる。
「あのバカ……これは予想がつかなかった……」
マスカレーネからのグローバルを切ったしきるが、がっくりと肩を落とした。
「あの、つまり、魔王様はどうするおつもりだったのですか?」
「いや別に……。だから、単に、恋の演出を……」
ふるえた。
ぷるぷると心がふるえた。
しかし今はそれどころではない、と思いなおした。
「……まあそれはいいとして、よくないけどいいとして、マスカですよ」
「マスカ?」
しきるが、わずかに顔をむけてくる。
「あー。最初の案だよ。攻城にいったマスカに、万が一の為に、飛獣をつけさせた。そしたら城に人がいなそうだが確認していいかってメールきたから」
ふるえた。
ぷるぷると心がふるえた。
「メール? マスカのメアド知ってるんですか!? 私には絶対教えてくれないのに!」
「知るかそんなの。それで『気をつけてね』って。そしたら『誰もいないから城とります』って」
ふるえた。
ぷるぷると心がふるえた。
「じゃあ始まる前から城とってたのですか!? なぜそれを私に」
「バカか。マスカの攻城部隊、千かいないんだぞ? 敵に傍受されて城にむかわれたらひとたまりもないだろう。お前だって上陸直前まで作戦伏せていただろうが」
「ねえ、あなたの番。しきる、早くして」
むかいにすわっているアパチアが無表情で言った。
「それでもせめて私には……」
「暴れさせてくれるって言ったろ? はい。終わり終わり」
そう言うと、しきるは手のなかのカードへ視線をもどした。




