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メルヒェンランド  作者: 袋ラーメン☆好き男
魔法の国編 本
32/36

ドナ・スカーレットの到達

「ねえ聞いて、わかった気がするわ、私」

 知りあったばかりだというのに、二人は意気投合している。茶葉の話で盛り上がっている。どうも、本来のテンポに共通点があるようだった。

「ねえ聞いてくださる? 大事なことなのよ。ね? 少なくとも、私にとっては、だけど」

 眼下に広がる盆地では、ダウナー状態より復活した兵たちが幕舎を片づけている。ただ片づけているだけだが、一八万近くの人間が作業している姿は圧巻だった。

「ところで、作戦は誰のアイデアだったんじゃ」

 リゴールが、緑茶の香りをかぎ、うっとりと表情をゆるめながら術代に問いかけた。紺色の軍服を着た、茶髪のボブカールに大きな目の女性――術代が、やや幼い調子でうなり声をもらし、首をかしげる。

「皆かなー。皆でー、考えてー、皆でー、決めたー。回復役はー、ジャンケンで勝った人がやるってことになってー」

 術代が眉をよせ、宙をにらみ、一つずつ、順番に思いだすようにしながら説明しはじめた。一言言うたび、体を前後にゆらしている。しばらく同じ姿勢で聞いていたが、気がつくとドナも、聞きながら、眉をよせ、体を前後にゆらしていた。体を前後にゆらしながら、頭のなかで、術代の話をまとめた。

 リアル――大概ガサツによる限界突破値のメンタルマイナス属性・イマジンオーバーフロー波――のちに、術美によって『うれう砲』と命名される――により、シューイチ以下をのぞく全国民がダウナー状態へと化した魔法の国は、一時完全に活動を停止した。『アンタッチャブル』によってうれう砲の脅威から逃れたシューイチ以下四人は、全国民がダウナーになっていること、城下町の子供など、メンタルが柔軟なものは即座に回復の兆しを見せはじめていること、そして魔王軍が侵攻のため接近中であることを把握すると、五人全員で国防戦のアイデアを練りはじめた。

 作戦の骨子はそれほど複雑なものではなく、魔王軍が到着するまでできるだけ兵をダウナーから回復させ、回復した兵とジャンケンで負けたもので魔王軍を可能な限り引きとめる。その間に、残りの兵を回復させ、回復し次第、順次戦場へ増援にむかわせるというものだった。

 回復班は、ジャンケンに勝った術代一人で担当。一人なのには理由があった。

 回復そのものついては、展望は明るかった。全国民が高い魔法力をもっているため、まず術代が一人を完全回復させ、次に、回復した兵と術代とで一人ずつを同時に完全回復させ――と言った具合に、ねずみ算式に回復速度をはねあげることができるためだった。しかし、すぐに問題が発生した。魔王軍に、高度な技術をもつ諜報・偵察部隊がいたことだった。あとのことについては、ドナの知ってのとおりである。というより、知らないうちに、出来事を演出した直接の関係者になっていた。結果的には、増援をまったく出させなかったドナ率いる諜報・偵察部隊の勝利である。

 引き伸ばし班は、ジャンケンに負けた全員。こちらは最初から様々な問題があった。

 まず、最初の引き伸ばし役の兵を、正規兵でそろえられなかったこと。これは、うれう砲発動のタイミングが、アクション沖からの帰還直後の戦後処理中で、本来兵舎と幕舎で起居する施設がわかれている正規兵と徴集兵が混在状態にあったことが原因だった。このことで、ダウナーと化した正規兵がそのまま近くの幕舎――仮設テントに入り込んだり、その逆、徴集兵が、兵舎――正規の建物へ入り込んだりという事態になっており、正規兵だけを優先して回復させるということができなかった。五人は考えぬいたあげく、最初に回復した正規兵一五〇〇のうち、五〇〇を引き伸ばし軍の指揮系統、残りの千を個々に国中へ散らし、偵察と通信妨害に専念させるという役に割りふった。最初に兵舎・幕舎を抜けだした一万のうち、千だけがいつまでも見つからなかったのはこのためだった。

 次に、短い期間で大量に徴兵された民たちは、格闘――肉弾戦を、全くといっていいほど会得していなかった。前出におなじく、魔法については民全員が高度な技術をもっているため、指揮官たちは、戦況を、ひたすら、中距離戦・遠距離戦に持ち込みつづける必要があった。

 余談だが、当初、この国の魔術の最高峰たちである国政関係者が、軍略会議のためほぼ全員登城しており、彼らの魔力を武器に籠城戦を展開する案もあった。が、うれう砲の直撃をうけた国政関係者たちは、大導師をあれ刑に処したのち、すぐさま全員帰宅してしまったため、早々にこの案は破棄され、城は放置されていた。

「ねえリゴール? 私この間、『汚れでもいい。自然にまかせることにした』って言ったわよね? でもね……ああ。あれからまた考えて……リゴール、思いついたのよ私。キーワードはそう、インテリジェンス。インテリジェンス。これからは、笑いはインテリジェンス!」

「どう思うこのおしゃべり」

「シュー君のところにはいないねー。新鮮ー」

「そうだ! ねえ私……お菓子もってるの。ストレスたまると食べちゃって。内緒よ?」

「わかるわかるー、食べるよねー乙女は食べるよねー」

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