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メルヒェンランド  作者: 袋ラーメン☆好き男
魔法の国編 本
29/36

しきるちゃんの!『ガチンコ国盗り合戦#3』

「報告します。敵兵が接近しております」

 マスカレーネはスマートフォンを落としそうになった。

「え、ちょっと意味わかんない。主戦場から離脱してきたの? それだったら、誰かが追ってきてるはず。味方は?」

 甲高いアニメ声で、聞き返した。

「味方の姿はありません」

 副官が叫ぶように言う。

「周囲を囲まれているようです」

「えー! 周囲―! それでどのくらいいるの?」

「正確な数はわかりませんが、一万はくだらないかと」

 スマートフォンを落とした。慌てて拾いあげた。課金の選択画面だった。祈るような思いで、拾ったスマートフォンを表へむけた。予定の十倍ほどの額で課金していた。

「嫌ーもー! 一万!?」

 そう言って副官を見て、スマートフォンに視線をもどし、すぐまた一度副官をみた。二度見した。

「え一万!? 嘘!? どっからきたの! え一万!?」

 マスカレーネの兵力は、護衛の兵が三〇〇以外に、攻城のためつれてきた魔法の使えない巨大種が二〇〇。からっきしな工作兵が五〇〇。まともにやりあえば瞬殺である。

「何の一万なの? えー。ドナの諜報部隊は? きた?」

「いや、いても我々では気づけませんよ」

 しばらく副官と見つめ合った。

「えーやだー」

 ふたたびスマートフォンの画面に目を落とした。元々重課金者だが、これは入れすぎた。どうする。

「マスカレーネ様、ご指示を」

「ご指示ってー。言われてもー。魔王様にはここにいろって言われただけだしー」

「何か手を打ちませんと……このままでは……」

 手を打つ。

 そうだ、と思った。

 こういうとき、マスカレーネにはやることがあった。



 アンラッキー中田は、林をかけ続けていた。

 息を切らしながら上り斜面を手足ではい上がり、下り斜面を駆けおり、平たいところは息を切らしながら普通に走った。そしてようやく林を抜けようしたとき、小川のほとりに、人一人が乗り込める程度の、手足がつき、コックピットが透明な小さなメカを見つけた。斜面をかけおりた。メカの隣で、ふんどし一枚の、ひげ面の中年男性が、横むきで、ぼんやりの小川のせせらぎを見つめていた。

「ス、スコルテ様。どうしたんですかこんなところで。そんなお姿で」

「それこそ、尻の毛まで全部もってかれちまった」

 めんどくさそうなので、先に状況を話し、メカを動かしてもらった。コックピットの外にしがみつく形での移動である。移動しながら、スコルテの話をきいた。

「というか、風俗街はやってたんすか? 人いたんすか?」

「いたよ。え、他いねえの」

 どうでもよかったが、一応まとめると、風俗へ使う金が底をつき、すぐ隣りの賭博場に入ったが、負けて尻の毛までもっていかれたという、どうでもいい話だった。

 スコルテは、主戦場の近くまでくるとメカを停止させた。

「しきるやペルにどやされちまうからよ。俺ァここまでにしとくわ。そんで、なんだ、城へむかえばいいんだな?」

「はい。色々込み入ってますが、多分それが一番、派手にぶちあげられることになるかと思います」

 スコルテはあーめんどくせえと言いながらコックピットのハッチをしめ、去っていった。アンラッキー中田はふたたびかけ始めた。陣営内の入口で衛兵にとめられたが、諜報部隊の証明である五線にト音記号のストラップを見せると、すぐに入陣を許された。魔王は主戦場に出ずっぱりのはずで、どこにいるのかわからない。陣営内を、話の通じそうな人物をさがして歩きまわった。やがて、総参謀の幕舎を見つけた。しばらく衛兵ともめたが、なかから低い声で、入れてやれ、と聞こえてきた。衛兵に挟まれて、幕舎内に入った。

 幕舎の奥に、黒いマントをつけた五分刈りの青年が、背をむけて立っていた。

 青年が軽く手を上げる。

 左右の衛兵が敬礼し、幕舎から出ていった。

「あの、ペ、ペルソナーレ様、でしょうか」

「ああそうだ」

 そして、青年は何気ない仕草でこちらをむいてきた。

 顔。

 ペルソナーレの顔を、しばらくアンラッキーは見つめていた。

 これと言ってない。

 普通の顔だ。イケメ――イケ――イケメ――まあ見れなくはない。普通の顔だった。

 はたと、それどころではないことを思いだし、兵舎区画でおこったこと、見たことを、自分を落ち着かせながら順番に報告した。途中、ペルソナーレが目を閉じた。そのまま最後まで報告をきいていた。そして報告を終えた途端、台の上にあった仮面をつかみ、立ちあがった。

「ご苦労だった。すぐに兵をやる」

 アンラッキーにそう言ってきた。それから、やはりあの方は尋常ではない、とつぶやきながら、出入口へむかった。

「あの、かめ、仮面」

 こらえきれず、アンラッキーはそれを口にした。

 出入口の手前で立ち止まったペルソナーレが、つけかけていた仮面をはなし、ふりかえった。

「なぜ、仮面をつけているのか、聞きたいのか?」

「いや、その、申し訳ありません」

「内側にとりつけたモニタで、データが見られるなどがあるが……」

 仮面の内側をむけてきた。たしかに目の位置に、モニタがついている。それからペルソナーレは、中心あたりを、とんとんと指で叩いた。

「ちょっと、ここ嗅いでみろ」

 おずおずと近づき、ペルソナーレが指を指している箇所に鼻を近づける。さわやかな、さわやかそれでいてひどく上品なアロマが、アンラッキーの鼻をついた。

「ラ、ラベンダーですか」

「だから、言うなよ」

 だからの意味も、言わない内容も不明だったが、アンラッキーはおずおずとうなずいた。



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