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メルヒェンランド  作者: 袋ラーメン☆好き男
魔法の国編 本
27/36

しきるちゃんの!『ガチンコ国盗り合戦#2』

「『将軍ピンボール』」


 銀の女の隊二〇〇〇弱を、三〇〇〇に減ったマローネ隊が、球状にとり囲んでいる。球のなかを光り輝くマローネが飛び交い、ラリアットで敵兵を攻撃したのち、味方兵に魔法バットで打ち返され、ふたたび敵兵のなかにもどるということを繰りかえしている。跳弾と化したマローネは無敵だが、球状マローネ隊の直径が五〇〇メートル以上あるため、敵兵はほとんど減っていない。

 そこに、トラジの一五〇〇が、『加齢そのもの』を発動した状態で突っこんできた。ボールが一気に一五〇〇増え、乱反射が始まった。被弾した兵が次々に落下していく。球のなかのあちこちが光りはじめた。おびただしい数になり、やがて、ほとんどが光で埋まった。銀の女隊。その、残った全ての兵が、光りかがやく魔法バットをにぎっている。

 回転する金備えたちが、次々に球の外へ打ちあげられはじめた。

 銀の女。

 極大の魔法バット。

 マローネを天高く打ち上げた。

 見えなくなった。

 誰もいなくなった。

《マローネ隊副指揮! 応答しろ!》

《ビンゴ!》

《スクラッチであります!》

《お前らの指揮官は星になった。ビンゴ、スクラッチ、一五〇〇ずつを率いて私の隊に合流しろ。ビンゴは八時八時、スクラッチは三時二時だ》

《了解であります!》

《いつまでもワシらのことを天から見守っていてほしいであります!》

 一五〇〇が、二隊、それぞれまとまり、八時八時――左後下方と、三時二時――右やや上方でしきるの三〇〇〇に合流した。前方。銀の女の二〇〇〇。攻撃中断をうけて、上下の散開をおさえはじめている。

 ゆっくりと、左へ迂回した。銀の女。明らかにしきるの本隊三〇〇〇を警戒している。ローカルで細かく指示をだし、右のスクラッチ一五〇〇を、少しずつ本隊から離した。離しながら、少しずつ密集させた。気がついてはいる。しかし、しきる本隊への警戒体勢を、圧倒的に優先している。ある程度まとまったスクラッチ隊が、二〇〇〇にむかって高速飛行をはじめた。魔法弾を大量に打ち込みながらやや無鉄砲に攻勢を展開している。打ち返しながら、銀の女の二〇〇〇が下がりはじめる。即座に、しきるは左への迂回を加速させた。本隊とスクラッチの挟撃の構図が見えはじめ、二〇〇〇の後退がとまる。急速にまとまり始めた。強烈に密集すると、一つの彗星のようになって、むかってくるスクラッチ隊へ突っこんだ。こらえきれず、スクラッチ隊が放射状に割れる。その先。

 銀備えの一五〇〇。

 銀の女の隊。

 明らかに動揺が見えた。

 だが、かまわずリゴールに突っ込んだ。


「『加齢の波動』」


 一五〇〇の同時発動。

 戦場が急速に銀色の光で包まれ、それから、ゆっくりと、光が霧散した。

 いない。

 リゴールの銀備えが、陣形を崩している。

 考える前に発進していた。飛びながら戦場をみまわす。リゴールの上下。上に銀女の二〇〇〇。下に――戦域外に退避していたはずの魔法の国兵二五〇〇。上下。陣形を保っている。限界まで加速した。リゴール隊に対する魔法弾の撃ち込みがはじまった。数十、リゴール隊からこぼれおちていく。さらに数十。先にスクラッチ隊が飛びこんだ。陣はととのっていない。まとまりを狙い撃ちされている。スクラッチ隊から百ほどが地上に落下した。憤怒がこみあげた。全身から光が噴出した。飛びながら、拾えるだけイマジンを拾った。射程距離内。下方。


「『秩序の麻痺』」


 石畳が吹き上げる。

 両足が舗装の下の土にめり込んでいる。

 周囲の麾下三〇〇〇も、同様に地に両足をつき刺している。それぞれに目を見開いている。

《お前たちは魔王の配下だ。気にせず、敵を殲滅しろ》

 ゆっくりと言った。

 そして、上を見上げた。

 二五〇〇。まだ、リゴールに狙いを定めている。

 地上際を滑走してくる隊が視界に入った。

 もうひとつの退避の隊。二〇〇〇。

 麾下の撃ちあげが始まった。

 二〇〇〇が高度を上げている。高度を上げ、仲間の二五〇〇に横から突っこんだ。

 ほとんど撃ちおとすことなく、しきるは攻撃対象をうしなった。

 舌打ちし、上を見上げたまま、土から足を引きぬく。リゴールのさらに上、銀女の隊も、下降しながら、退避していた計四五〇〇に合流している。

《一度引くぞ。ペル、リゴール、ビンゴとスクラッチの面倒をみてやれ。私の麾下は負傷者を拾ってから合流しろ》

 それぞれから返答が返って来た。麾下をつれて浮上しながら、ペルソナーレへ直通でつないだ。

《珍しく我を忘れてましたね。それにしても召喚術以外で転移とは。しかも集団を。とんでもないものを見ました。今のは魔法ですか? DCTですか?》

《どうでもいい。接近を嫌うのは、格闘が苦手なだけか? いくつ思いつく、ペル》

《また無茶ぶりを。指揮権はあなたに移っていますので》

(答えろ》

《二つです》

《私は一つだ。スコルテを当てるか》

《ご冗談を。どこにいるかもわからないんですよ。しかもメカがなければ、あいつはからっきしです。からっきしで、しかもアホです》

《お前もからっきりなんだろ……あっ! どうしよう。いい事思いついちゃった》

《いい事? それより、また笑いどころがありませんでした》

《知らん。楽しいからどうでもいい》

《私もです。とても》

《リゴール。聞こえるかリゴール》

《なんじゃ。負傷が多くて、忙しいんじゃ今》

《ちょっと頼みがある》

《負傷が多いと言うとるじゃろ》



 たった五〇〇に、二五〇〇を一五〇〇までへらされている。

「ワッハッハ! 役者が酒にのまれてどうする!」

 本当の役者かどうかはしらんけど、あの程度のアルコールはきかなかったらしい。他のは倒れたままだが、倒れてゲロったままだが、あのカラフルホームレスの親分と、麾下のカラフルホームレス集団の五〇〇だけが、元気に暴れまわってくれている。

 もうアホみたいな空中戦に持ち込まれてるが、それどころじゃない。

 三〇の班二つ。

 カラフルホームレス二〇に打ちのめされている。

 浮動イマジンを拾いつつ、両手を突きだして突っ込む。


「『グリグリ』」


 二〇がガタガタを体をゆらし、白目をむいて、ゆっくり降下をはじめる。

「他の班と合流して! ローカルで教えたとおりに!」

 兵の返答をまたずに、次の交戦グループに飛び込む。


「『グリグリ』』


 これ消耗がはげしい。浮動の収集が間に合わないで発動すると、体内から出ていってしまう。あまり連続でやると飛行状態もままならない。戦場をみまわす。こっちの三〇名の班が五〇。むこうが二〇名で、半分の二五班。しかし、麾下だけあって、圧倒的にむこうの方がつよい。はるか下の班。完全になぶられている。目をつぶって急降下する。怖っ。何これ。死ねる。減速してから目をあけた。やばい。イマジンためてない。

 とりあえずぶん殴った。

 手応えなし。滞空姿勢もくずれてない。

 拳が発光している。

 あきらめた。


「『グリグリ』」


  二〇名が落下していく。

「あの……ハァ……合流……ね……」

 民兵が申し訳なさそうにうなずき、飛び去っていった。戦場をみまわす。とりあえずピンチはいなそうなのでちょい休憩。完全に散兵戦に引きずられている。いや、そもそも散兵状態の局地戦にもちこむのがこっちの作戦で、できるだけ消耗をおさえながら状況を引き伸ばさなくちゃいけないんだけど。消耗がハンパないんで、今は散兵どころじゃない。

 また近くでピンチが発生した。ふらふらと近寄り、民兵の腰から酒瓶を抜きとり、フェイント入れて急接近して、ビンでぶん殴った。

「ごめん……あとは……自分でやって……」

 まあでも、大分よくなっている。左の班。五班合流して一五〇ほどになっている。ホームレス二班――四〇名にねらわれている。言いつけどおり、極度に密集している。当然のように集中した魔法弾に対し、二つにわかれ、追撃をさらに二つにわけて回避。追撃が止み次第ふたたび密集。よし。指示通り。


「『花道』」


  空中を突きぬける赤い絨毯。

 一五〇が四方に吹きとんだ。

 そう……。

 そして、またこれ……。

 これで強制的に散兵戦に引きずりもどされている。

「ワッハッハ! よっぽど花道が好きらしいな! 観客はいつだって派手な主人公を好む! このガヤ共!」

 むかつくあいつ……。

 だめだ。あの花道をどうにかしないかぎり、どうにもならん。けどヘルプをやめるわけにもいかない。散らされた兵は、とりあえず班で集合するしかない。そしてそこをむこうの班がねらいすましてくる。三度……四度? 戦場を突きぬける。ピンチ班に突っこんだ。今度はちょい余裕あり。がっつりめの、


「『グリグリ』」


 それにしてもグリグリという名前即席すぎる。他にないものか。要するに、定義した範囲で、普段体内活性によって浮動へと干渉するものを、逆に、私が制御した浮動イマジンでやつらの体内イマジンをグリグリしているのである。物理的に。強制的に。消耗がはげしいのはこのため。これを食らったやつは、なんかわからんけど、白目むいてフラフラになるので、脳震盪ような、イマジン酔いのような……ああ。結局あたしは酔うという概念からのがれられないのか……。

 お。

 ちょっと待てよ。

 そうか。

 そうだな。あいつバカそうだしな。

「指ぃ揮ぃ官ーどのぉー」

 おじいがきた。

「ちょっとあたし、あいつにちなんで一芝居打ってみるから、頼むわね」

「え? わしが指揮? いやちょっと、わし指揮なんて」

 発進。

 キモッ。怖ッ。空中怖い。死ねる。これが最後の急降下になりますように……。

 ホームレス親分が目見開いて身構えてる。キモ。なんか顔に青いの塗りたくってる。いやキモいのとはちがうか。もうちょっとこう、ちゃんと顔の輪郭にそって塗れば……。

 どうでもいいか……。

「やるかあ! 直接勝負ときたかあ!」

「ちょっと待てえ! 勝負は勝負でも……」

 減速。

 着地。


「『アルコール魔法(一升瓶×一〇〇)』」 


 あたしの周囲を、一升瓶がとりかこむ。

 一本をにぎりしめ、親分に差しだした。

「あんた、そんなに酒つよいって言うんなら、あたしと勝負だ」

「お? おぉ……」

 どうだこれで。何だこの展開。まあ切った張ったよりはマシだろう。それにしても、術代、なにたらたらやってんのよ……。遅すぎる。あいつにかかってるって言うのに……。

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