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メルヒェンランド  作者: 袋ラーメン☆好き男
魔法の国編 本
26/36

ドナ・スカーレットの逃避

 第二防壁近くの岩山の陰から、第一防壁手前の主戦場を見つめていた。

 凹屋の五〇〇〇が、交戦している二五〇〇を押している。他はやや混戦になっている。魔王の三〇〇〇とマローネの五〇〇〇を合わせた八〇〇〇。敵の二〇〇〇ほどの三つの隊の計六〇〇〇強。

 覇気が、感じられなかった。

 ドナは、大軍の戦闘にそれほどくわしいわけではない。事実、具体的には個々の戦場は千以下のまとまりで展開されているが、そこまで行くと、戦況がどうなっているかはわからなかった。ただ、ドナにもわかることがある。一つは、魔法の国兵に覇気が感じられないこと。そして、魔法の撃ちあいを好み、常時、距離がつまることさけて動いていることだった。何かが、気になった。しかし、戦場にいる魔王軍が気付いていないわけがない、そう自分に言い聞かせ、思考を切り上げた。

 近くの茂みが揺れ、報告の声が聞こえてくる。わずかに首を動かすと、ふたたび茂みが揺れ、気配が消える。先ほどからそれが繰りされている。

 戦場外の隊はいない。埋伏兵に関しては順番に調べているところで、完全ではない。マスカレーネの攻城部隊が、最終防壁の手前で埋伏している。スコルテがつくった、イマジン石をつかった攻城兵器を飛獣で運びこんでいる。目立たないよう部品にわけてあるが、いつでも組み上げられているようになっている。隊編成は、工作兵五〇〇に、護衛が三〇〇。他に巨大種が二〇〇いるが、魔法戦においては戦闘に有利とは言えず、中隊規模の敵に見つかればひとたまりもないため、この付近の敵兵の有無は、念入りに確認させた。城に一番近いのがこのマスカレーネの隊で、最終防壁の内側には魔王軍は侵入していない。現状の報告では兵の気配は確認できないが、後ろはすぐ城だ。当然待機していると考えて間違いない。ちなみに、スコルテの工作部隊は城下の風俗街で発見された。スコルテ本人はいなかった。

 千はまだ見つかっていない。

 ドナは背後の城を見あげた。誰が守っている。二〇万という数字はまちがいなのか。それとも、城を、たった千で守っているというのか。二〇万というのは、この国に潜入している手の者の、一度や二度ではない報告の上での数字だった。そんなはずはないと思いなおした。

 ふたたび思考を打ち切ると、浮動イマジンに干渉した。やはりグローバルはつながらない。

「なにかおかしいね。ママ」

 隣で主戦場を見つめているピーターが、そうつぶやいた。

「何がおかしいと思うの? 何か思い当たることがあるかしらピーター」

「ギャグが、一つもない……」

 それを聞き、ドナは両肩を下げた。かぶりをふるう。

「ああ、そうね。ピーター。ねえピーター。知ってると思うけど……ママ……ゼロから何か生み出せる人間じゃないの。わかってるでしょ。それに、そう。大枠で見れば、他のところも大分少ないわ」

「でも、一つもない……」

 ドナはピーターの両肩に手をおいた。顔をのぞきこむ。

「あのね、ピーター、いつも言ってるでしょ。大変なことなのよ。国によっては、あまり尊敬されない風潮もあるけど、国によっては、社会的地位が、とても高いところだってあるのよ。つまり、それだけ、大変だっていうことなの。わかる?」

 ピーターは目を伏せたまま、おもむろにうなずいた。

「うん……わかったママ……」

 両肩を、軽くたたき、ドナはピーターからはなれ、背をむけた。

「ママね、もう一度兵舎見てこようと思う」

 主戦場が気になるが、それは自分の仕事ではない。埋伏も策の形跡も見つからないのであれば、自分は、ダウナー十九万の謎に当たるべきだ。あのダウナーは欺瞞だとは思えなかった。しかしもう一度確認してみるべきだろう。

「うん。わかったママ……」

 返答が気に入らなかったが、今はそれどころではないと、自分に言い聞かせた。

 岩山を飛び下り、林のなかを走る。すぐに十名ほどの気配が寄りそってきた。


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