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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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<C23> アマンダの影

††


 マリアもだ。


 凄まじい雷撃の雨の中を、降り注ぐ属性攻撃の余波の中を、常識を超えるような身体能力で掻い潜り、アリスの攻撃の間隙の中、三面六臂の女に攻撃を加えていた。



「さすがだな、【天臨王】よ!」


 ゼクスフェスの背の翼が翻り、天空に舞い上がった。


「逃げるか!魔族っ!」

「あははははは、面白いぞ、妾はゼクスフェス、亜人の王じゃ。」


 空高く浮かんだ三面六臂の女が俺とアリスに向けて、声高らかに叫んだ。ルミがまた飛び出そうとするのを、俺は肩を掴んで押さえつけた。


「ルミネス、貴様、人に着くのか?」


 ゼクスフェスがルミを睨みつける。

 

「アタシはジュンヤを虐めるお前を、許さない。」


 ルミが叫ぶと、ゼクスフェスは嘆きの顔で、困ったように首を傾げた。

 

「……どうやら事故が起きたようだな。」


 事故?どういうことだ。


「……まあよい。【天臨王】と【不死神】か、面白い奴らじゃ。」

「ゼクスフェスといったな、俺はジュンヤだ。貴様ら魔族を根絶やしにする男だ。」

「ふ、ふははは、我等を根絶やしか、ふふふ、面白い……可能ならやってみるがいい。もっとも妾の用事は貴様ではなく、【天臨王】──皇女アリス殿にあったのだがな。」


 ゼクスフェスの顔がぐるりと動き、能面へと変わり、アリスを見つめた。


 アリスに用事だと?襲撃はアリスを狙ったものだというのか、だが何故?【天臨王】の称号が関係しているというのか。


 しかし当のアリスは微動だにせず、ただ見上げている。まるで想定の範囲内だと言わんばかりだ。


「それにルミネス……まぁ良いか。今回は面白いものが多く見れたからな。」


 ルミをみつめ、そして俺を見た。


「今回は黒き魔物(ポーン)も亜人共も、あらかたやられたようだしな、妾も堪能できたしな。」

「……ふざけろ。いいから降りてきて戦え!」

「急くではないジュンヤ、貴公にはぜひ要塞バールへと来て貰いたいものだ。よい魔族になるぞ。」

「なるかぁっ!!」

「ははは、それに……面白いモノが見れるやもしれぬ」

「面白いモノ?

 奴は俺を言ってるんだ。俺に関係のあるものか、まさか、もしかしたら、アマンダ──」


 ごくと固唾を飲み込み、ゼクスフェスに向けて声を迸らせた。


「まさかアマンダか、アマンダがいるのかっ!」


 ゼクスフェスの唇が吊り上がった。


「あんなモノでも会って見たいと思うのなら、来るが良い。」

「あんなモノ?」


 奴は俺の言葉に返答せず、能面の口が大きく開き三日月のようになる。その表情に狂気のような薄ら寒さを感じ、俺はゾクリとした。ついで甲高い笑い声が聞こえた。


「ゼクスフェス、其方に尋ねる。」


 ゼクスフェスの笑いを遮り、アリスが声を発した。ずしりと重みのある、皇女としての貫禄なのか、ゼクスフェスもまたその声に笑いを止めた。


「ザックという者を知っておるか。」

「ザック?」

「以前は人であったものだ。今は魔族のはず。首なし騎士に連れて行かれた。」

「………人から魔族に……首なし騎士(ネボラニグレ)が連れ去ったか……」


 アリスに問われ、ザクスフェスはしばし腕を絡めて考え込んでいる。思い当たる節がないのか。


「皇女よ、妾の預かり知らぬ事のようじゃ。」

「左様か、ならばもし会うことがあれば伝えよ。グランダム王国第三皇女アリスが、必ず貴様の素っ首を落としてくれる、と。」

「なるほど……面白い、必ず伝えようぞ!」


 言うと風を切る音がして、ゼクスフェスの姿が天空高くへと舞い上がっていった。


「まて、待ちやがれ!あんなものとは何だ、アマンダがいるのかぁ!!」


 俺の絶叫が反響するが、ゼクスフェスは笑い声だけを残して去っていってしまった。



◇◇



 森に囲まれた街道では、騎士達が怪我人を治療し態勢を整えていた。幸いにして死者こそ出なかったが、多数の重傷者を出してしまった。


 中には手や足を失ったものまで居る。治癒系魔法が使える術者が、大慌てで止血して回っているが、状態は芳しいものではなかった。


 馬もかなりを失い、今後の移動にも少々問題は残っている。

 

 ツェザーリとクリフ、アリス、それにニトロと騎士隊長とが入り、今後の移動方針について話している。

 

 俺はというとそうした事には入らず(入れず)、森の木陰に腰掛け、いらいらとしていた。

 

 別に入れなかったことにイラついているわけじゃない。ゼクスフェスが放った言葉が妙に頭にこびりついているからだ。

 

 俺が魔族に『なれる』だと、要塞に来い、そして『面白いモノ』とはなんだ。意味が解らなすぎる。


 ゼクスフェスが天臨王アリスを殺しに来た理由も知りたい。謎だらけでいらいらしてくる。体中むず痒くて鼓動が高まっていく。


 それに完全に見失っていたが、『貫通属性』ってなんだよ。そんなもの最初から武器の特性じゃなかったのかよ。


 『貫通属性を持つ武器や攻撃は、防御無視でダメージを与えるから、気を付けろ。』


 奴との戦いの後で、ニトロから初めて聞かされた。てか知らねーよそんなもん。


 主に刺突系武器がそれにあたるらしい。硬い鎧でも貫くが、急所を突かなければ致命的ダメージを与えられないらしい。逆に言えば急所を狙えば、一撃必殺ってことか。


 普通の剣でも尖端が尖っていれば、多少の貫通属性があるようだ。剣を突き刺す時は、切断属性じゃなくて、貫通属性が働くって当たり前のことなんだが、そんなもんゲームじゃなかったぞ。


 はい、ここってゲームじゃないんですね。思い知りました。


 普通の剣だって部位によって属性が違うからな。斬撃もあれば打撃もあるし、刺突もできるわけだ。ケィニッヒに剣術習った時に、そんなこと言ってた気がする。


 雷神剣が俺を刺せても貫けなかったのは、貫通属性が弱いからか。ゼクスフェスのレイピアが貫いたのも、ルミネスの爪が貫いたのもそういうことか。

 

 そもそも最初にゼクスフェスに殺された時だってそうだった。


 斬撃は殆ど聞かなかったのに、属性攻撃で傷めつけられ、止めは剣を突き刺されたんだったな。


 はぁぁ、アマすぎだな。てか防御値マックスだから、属性耐性上げたからっていい気になりすぎてたか。


 バカだな~………ほんとバカだ。云われて気がつくなんて、アマすぎ。


しかしこんなんじゃ、魔大陸にいってもっと強いのが出てきたら、マジやべぇ。殲滅どころか、勝てねぇぞ。


††

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