<C22> 吸血鬼ルミ参戦
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『神に会ったか』だと。こいつ女神の事を知っているのか。
「防御力も人としては完全体のようだ。小僧、魔族になれるぞ?」
女の唇がさらに吊り上がり、口元から牙が見えた。魔族だと、ふざけるな。俺は俺は……
「うるせぇっ!」
「貫通属性を持たせた剣のみ貫けるとはな、防御力は人としてはなかなかのものだ。およそ最前線の戦士共でもおらぬぞ。」
貫通属性……だと。
「糞がぁっ!村を全滅させやがって、俺はてめえらを皆殺しにしてやるんだぁ!」
「ふむ、だがなあれは仕方のないことだったのだが。あとはついでだ、亜人共も腹が減るしな。」
俺は瞬間頭が真っ白になった。
「仕方がない、だと?」
村を滅ぼし村人を殺したのが、仕方のないことだと、腹が減っていたからだと。
怒りが湧き上がり、手を震わせ柄を握りしめる。身体を魔力が覆い蒼白く輝き、金剛体スキルを最高に高めた。
金属の様に硬質化した皮膚に、奴の剣が当たる感触。簡単には斬れないはずだと、無視して動こうとしていた。
「金剛体か、面白いぞ小僧!その程度金剛体、くっくっく、妾の剣が貴様のそっ首落とせぬか、試してみるかぁ、不死者よ。」
泣き顔の女の唇が釣り上がった。その時
「ジュン、ヤァぁァっ!!」
俺と魔族の間に割り込む様に、天空から赤い剣が飛来し奴の腕に突き刺さった。
「何っ!」
腕を貫かれた三面六臂の女が俺から離れると、一気に後方へと跳んだ。途端に今まで居た場所に赤い剣が突き刺さった。
俺の腹からレイピアが抜けて、血が吹き出す。俺は痛みを無視して腹を手で抑え、内臓が飛び出てくるのを押さえつけた。
少し蹌踉めいたところに、再び天空から声が響いた。
「血壊惨楼」
ルミの声と共に、奴の腕に突き刺さった赤い剣が花びらのように変化して舞い散ると、三面六臂の女を包み込み切り裂き始めた。
「これわ……」
葉の1枚1枚が、刃の様に切り裂いて魔族を血塗れにしていった。。
「ガァァァァッ、こ、この能力は!」
「ゼクスフェス《三面女》!!ジュンヤを虐めるなぁぁぁーっ!」
身体を回転させ、6本の剣が花びらを切り裂くと、三面六臂の女は天空を見上げた。そこには赤髪の幼女が黒き翼をひろげて睨みつけていた。
「ルミッ!」
「その赤髪にこの能力、貴様ルミネスか?その姿はなんだ!」
天空を飛ぶルミを見上げ、三面六臂の女──ゼクスフェスが叫ぶ。自分の知るルミネスと似てはいるが、あまりにも小さい事に驚いているようだ。
「アタシはルミだぁぁ!ジュンヤを虐める奴は、シんじゃえぇぇぇ!」
いったい何が起きてる。
俺の目に映るのは、ルミが天空を滑空してくる姿だった。
頭に猛獣の様に牙を向いたコッペルを載せ、目を赤く光らせ、背に黒い翼を生やした、まるで魔族のような──いやもともと魔族か。
両手に赤い霧が纏い付き渦を巻いて伸びていくと、サーベルのような剣の形を作っていく。
「ジャァァァァァッ!!」
「グルァァァァァアッ!!」
牙を剥き凄まじい眼光が三面六臂の女を睨みつけ、本性をあらわにしたコッペルと共に突っこんでいく。
「あれがあの子の本当の姿!」
滑空するルミの姿をアリスも見つめていた。
翼を生やし魔族の本性を現した狂暴な容貌となっても、あれはルミに間違いはない。彼女の頭の上には、狂暴化して牙を剥くコッペルが乗っているのだから。
「姫様、あれは味方のようです。」
「いや、そうじゃなくて、あのでも、ええぃ、いいやぁ!」
アリスはマリアの声に気を取り直したのか、そしてルミを味方だと認識したのか、雷神剣を手に三面六臂の女に向かって突っ込んでいく。
アリスの背後からは、マリアが凄まじく覚めた目で斬りかかる。
「ルミネス、貴様どうした、何があったっ!」
焦り叫ぶゼクスフェスが飛来したルミの剣を受け止め、剣戟の音を奏でる。
目にもとまらぬ速度で繰り出される赤き剣戟を、6本の剣を駆使して受け止め、しかしそれでも徐々に足が後退していく。
本の僅かな間隙、ルミの激しい剣戟に圧倒され、隙が生まれた。途端にコッペルがルミの頭を蹴り、女に向かって回転しながら飛びかかる。
「クキャーーーッ」
「ぬおおおっ!」
叫びながら飛びかかる回転する猛獣の牙を、咄嗟に避けるゼクスフェスだが、牙が頬を引っ掻き血が飛沫を上げた。
「妾に傷つけるとは、まさか神獣───」
頬から迸る血を拭い、地に降りたコッペルに気を取られた瞬間。
「惨撃に薔薇」
ルミの手から血のように紅い薔薇の花ビラが舞ったかと思うと、ルミの赤き剣が更に加速され一閃した。
「がぁっ!」
ゼクスフェスが呻き声をあげ、血飛沫が舞い上がり、腕が跳ね上がった。
うわぁ、すげぇ!あいつの腕を飛ばしやがった。
「ルミネス、キサマァァァッ」
三面六臂の女がルミを怨嗟の目で睨みつけるが、その後を追随するアリスとマリアに気づき、とっさに剣で受け止めた。
ルミはそれを見ると、次に来るであろうことを予測したかのように、コッペルを拾い上げ、素早く地を蹴り上空へと舞い上がった。
途端に激しい雷撃が辺りに降り注ぎ、その中をマリアが軽やかに宙を舞い雷撃の範囲から離脱した。
空を駆けたルミがストンと音を立て、俺の前に降り立ち、まるで守るように立ち塞がった。
だがこれはルミなのか、背中から黒い翼を生やし、両手に血のように赤い剣を構え、雷撃に見舞われているゼクスフェスを、油断なく睨みつけている。
──ルミ、お前、記憶が……
「ジュンヤ、だいじょぶ?ケガいたいいたい?」
ルミがこちらを振り向かず言った。言葉遣いはまだアレだが、まるで記憶が戻ったかのように、戦闘慣れしている。
「大丈夫だ、この程度の傷は直ぐに治る。」
「良かった。」
ルミが少し振り向き、俺に笑顔を見せてくれた。まだ俺を慕ってくれている、記憶はまだ戻っていないようだ。
「はぁぁぁっ」
雷撃の嵐のなか、アリスとゼクスフェスが剣戟を交えていた。
どうやってか解らないが、雷神剣から降り注ぐ雷撃を無効化し、様々な属性をもつ剣戟を5本の腕から繰り出している。
アリスもまた巧みに属性攻撃を躱し、斬りつけている。
幾つもの剣と剣が絡みあう音がしたかと思うと、氷や岩や焔やらの様々な属性魔法が放出される。
しかし奴の剣から放射された属性は、アリスの操る雷神剣から放出された雷撃で消し飛んでいった。属性の相剋を無視した応戦に、俺は驚きを覚え戦慄していた。
「強い……」
互いに属性攻撃を打ち消しあい、激しく躱す剣戟、なんだこの戦いは。レベルが違うんじゃないか。アリス、お前は一体何なんだ。
アリスは雷神剣を持ったばかりだというのに、まるで剣の能力を熟知し、最大限に引き出している様にも見える。
『雷神剣の本当の能力を引き出す』
天臨王の称号によって、アリスは雷神剣の力を引き出しているというのか。
「──天才」
ゾクリと背筋が震えた。
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