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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
83/109

<C16> ドワーフの願い

††


 吸い込まれそうなほどの輝きを持つ刀身。

 

 刀身と鍔に描かれた紋様のような髭文字とでもいうのか、くねくねとした解読不能な文字が描かれている。


 柄を握ると、刀から何かしらの意思を感じた。まるで語り掛けてくるような。


 ランスの言葉ではないが、この刀が俺に呼応しているようにも感じられる。理由はわからない。

 

 ただこの刀は俺のものだ、俺のために作られた刀だと感じた。

 

 馬鹿な!

 

 これは100年も前に造られたものだ。そんな馬鹿なことがあるわけがない。いくら異世界でもおかしいだろ。


 だが、こいつはまるで俺を待ち望んでいたような、そんな気がするんだ。


 俺は前世では極平凡なヒキニートだ。特に変わったこともなかった。


 平々凡々なヒキニートだ。


 もし何かしら関わりがあるとしたら──おそらくこちらに来てからだろう。


 例えば、女神が与えた負の称号、【不死神】が関係があるとか。


 もしかしたら、あの称号が呼応しているのかもしれない。確かまだ発動していないスキルもあった。【吸精】と【眷属召喚】だったか。

 

 どちらも関係ありそうには思えないな。

 

 あのドジ女神を呼んで聞いてみたい、まあ無理だけど。

 

 解らない、理解できないことは今は置いておこう。

 

 ともかくちょうど武器が痛んでいたところだし、これほどの銘品なら、魔族を斬りまくっても大丈夫かもしれないな。

 

「私も……欲しいな……」


 横でアリスが物欲しそうな顔して、指を咥えている。

 

 おいっ、お前はなんもしてないだろうが!

 

 そもそもこれは雷神剣ライトニングブレードを返したから、そのお返しにくれたものだぞ。

 

「……アリスさんは、ジュンヤさんと旅をしているのかね?」


 ランスが尋ねてくる。いやこいつはほっといていいですから。

 

「あ、はい、そうです。」


 まて、まてまてまて。

 

 お前、調子よくねえか?

 

 一応目的地は一緒だが、旅をしたのはここ数日ぐらいだし、そもそもお前はオーガウォリアーも倒してないし。

 

 あ~、相手が皇女でなければ怒鳴りつけてるところだぞ。


「ジュンヤと一緒にノスフェラトゥへ向かいます。」

「なんと……」


 この馬鹿……いやもしかして作為的か?

 

「………そうですか、そうですか。少々お待ちください。」


 ランスはにこにこして立ち上がり、部屋を出て行った。


「アリスっ!」

「ごめん、ついっ」


 なんてペロッと舌をだしてるが、絶対わざとだろ。何か貰おうとしてるだろ。


「お待たせしました。こちらは先日お預かりした、雷神剣ライトニングブレードです。」


 ランスが戻ってくるなり、雷神剣ライトニングブレードを差し出した。


「これは少々扱い難い武器ではありますが、神の武具(アーティファクト)の一本です。貴女の旅の助けとなるでしょう。良かったらどうぞお持ちください。」

「……よろしいのですか?」


 しおらしく困った顔半分で尋ねるアリス。


 このアマぁ、人の好意利用してんじゃねーぞ。とは思いつつも、俺も困った顔で応対する。


「できれば、もし可能なら残る神の武具(アーティファクト)を集め、使っていただけるか、どこかに封印して頂くなりして下さい。」

「え、しかし、それでよろしいんですか?私たちが神の武具(アーティファクト)を悪用するかもしれませんよ。」


 俺が慌てて返すと、ランスは顔を綻ばせて笑った。皺だらけの顔が、くしゃっとなるが、とても良い笑顔だ。


「ふぉふぉふぉ、先日ジュンヤさんは、オーガウォリアーから奪ったこの雷神剣ライトニングブレードを、私たちに返して下さいました。なんら見返りも求めずに。」

「いやま、それはほら、貴方の父の形見みたいなものらしいから、返すのが当然かなって。」


 奪い返したというか、そんな成り行き知らなかったしな。下手すりゃニトロが売り飛ばしていたんだし。


「……今時珍しい、心の正直な方だ。きっとご両親の教えがしっかりしていたのでしょう。」


 ランスの言葉に、俺は黙り込んだ。


──親父、お袋。


 俺の脳裏に2人の優しい顔が思い浮かび、優しかった2人の思い出が蘇り、そして焼死体となった二人がフラッシュバックする。


 俺は視線を落とし俯いた。膝に置いた手が、堅く拳を握りしめ体が震えてくる。


「……これは失礼しました……」


 俺の様子をみて、ランスは俺の気持ちを汲み取ったのか、謝罪した。


「……ジュンヤさん、ますます貴方達には神の武具(アーティファクト)を集めて欲しい。きっと、お役に立てると思います。それにジュンヤさんと同行される方であればきっと……

 アリスさん、この雷神剣ライトニングブレードは貴女に託させて頂きます。」


 アリスはこくりと頷いて雷神剣ライトニングブレードを受け取った。

 

 俺は心を落ち着かせ、顔をあげてランスを見つめた。

 

「ランスさん、はっきり言って全部取り戻せるかなんて、自信がない、でも軽諾寡信ってわけじゃないけど………頑張ってみます。」

「はい、是非とも、そしてお2人の目的が果たせるよう、祈っております」


 ぶっちゃけ残りの神の武具(アーティファクト)を取り戻せるかなんて、この広い世界だ。自信なんてさっぱりない。

 

 ただ乗りかかった船だし、やるだけやってみるかな。ランスは優しい目をして、俺とアリスを見つめ、微笑んでいた。


「私も……この雷神剣ライトニングブレードにかけて、取り戻して見せます。」


 アリスは女の細腕にも関わらず、身長ほどもあるずしりと重い両手剣の柄を持つと、目の前で水平に構えた。

 

 それを見たランスが少し驚き、そしてうんうんと頷いた。


「アリスさんなら、きっと雷神剣ライトニングブレード本来の能力を発揮させられそうですな。」

「本来の……能力?」


 アリスが尋ね返すが、ランスは優しい目で見つめるだけだ。確かに先日みた戦いでは、アリスはこの剣を使いこなしていた。オーガウォリアーが使っていた時よりも。


 流石に天輪王の称号持ちってところだろうか。『天の理地の理を知り、森羅万象を知る者』ってところか。


「でも、アリスちっこいか──」


 ボクッ

 

「いてっ」


 一応注意のつもりだったんだが、拳で頭を叩かれた。


「無礼な口を利くではないっ」


 こんな時だけ皇女かよっ。


††

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