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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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<C17> 中立地帯へ

††


 翌朝。


 俺たちはいよいよノスフェラトゥへの船着場がある《ミスティの街》へ向かうわけだ。

 

 出立の準備も終わるころに、ニトロからここから《ミスティの街》へ向かうための注意を聞く。

 

 まず《ミスティの街》はグランダム王国に属しているわけではない、ということ。


 ではどこの国に属しているかというと、街は中立地帯と呼ばれる場所にある。


 いわばどの国にも属さない、無法地帯とも言える地帯に存在する、唯一の街なのだ。

 

 それが何を意味するかというと、荒くれ者や犯罪者の温床ということだな。当然この先、グランダム王国から一歩でれば、盗賊やら野盗が魔獣以上に跳梁跋扈している、というわけだ。


 つまり普通じゃあの町には近づくような物好きは、まず居ないってことだ。なにしろ街にいってもなにか特産品があるわけじゃない。

 

 海の町だっていうのに、漁港も無い。船に乗っていく先はノスフェラトゥしかないのだ。その為常に大型の船が駐留している。


 つまり《ミスティの街》に向かう連中の大半は、ノスフェラトゥに用事がある連中ってことだ。


 そんなんで町は成り立っているのか、というと。諸国からノスフェラトゥへと向かう軍隊が、週一位の周期で兵士や物資を送っている。商人たちはこれに便乗して移動している。


 中には軍隊に襲い掛かる豪の者もいるらしいが、成功した試しは無いとか。そのおかげで商人たちも安心安全に物資の移動ができるようだ。


 さらに街中では軍人たちが徘徊しており、意外とミスティの街は治安が良い。

 

「で、安全なのか危険なのか。」


 俺は首をかしげて尋ねた。

 

「知らん。」

「は?」


 ニトロが投げ捨てるように言い捨てやがった。

 

「俺も行くのは初めてなんだよ。」

「なに?」


 お前、さも知ってるように話してただろうがぁ。

 

「聞いた話だ、あくまでも人伝に聞いただけだ。」

「……このやろう。」


 ニトロを睨みつけるが、それを飄々と躱しやがる。


「まあいいや、で、道中はどうすんだ?こっちは高貴な方も同伴するんだぜ。野盗やら盗賊が跳梁跋扈してたら、やべーだろ?」

「なあに、何とかなんだろ。そのためのゴ──」


 この野郎が相変わらずだな。と思ったら、ニトロが言葉を止めた。何やら外が騒がしい。


「なんだなんだ?」


 宿の外がやたら騒がしい。人がざわめいているし、何やら大勢の足音がしているような。

 

「どうしたんだ?」


 不信に思ったのか、グルームが宿のドアを開けて外を見ると、なにやら立ち止って呆けている。

 

 続いてゴレムやレヴィも行くが、同じくポカーンとしていた。それどころか、宿に宿泊していた客まで集まりだし、ドアの前で全員ポカーン。

 

「何が起きた。」


 ニトロが怒鳴りつけて向かう。同じくポカーン。

 

「どうなってんだ?」


 俺とリリスが首をかしげていると、背後から声が掛かった。

 

「みなさん、お早う……あら、どうしました?」

「何を集まっているんだ?」


 アリスとクリフ、そしてマリアが階段から降りてくるところだ。


 アリスは白黒のドレス、クリフは軽装鎧《ライトアーマー》、そしてマリアはメイド服。

 

 なるほど全員いつでも戦える?格好のようだ。アリスとマリアには疑問が残るところだが、アリス曰くマリアはあれが戦闘服なのだそうだ。


 侍女はメイド服が戦闘服ね、なるほどね。


 入口の前に大勢が集まっているのを見て、アリスもまた首を傾げた。

 

「あ~、お早うございます、アリス様。」


 俺はアリスに挨拶すると、ルミがたーっと寄ってきて、俺の隣に並び。


「ハヨーーッ」


 と声をあげた。そこにコッペルもやってきて、ルミの足に絡みついたかと思うと、床にチョコンと座り、アリスに向かって「クゥーッ」と鳴き声を上げた。

 

「おはよ、ルミちゃん、コッペ。」


 アリスがくすっと笑ってルミの頭を撫でた。おめーら、いつのまに訓練された。


 入口に留まっていた客やニトロたちが、さあっと割れたかと思うと、紫色の鎧を身に纏い、白いマントを翻した戦士が現れた。背には重そうな両手剣を背負っている。


 年の頃なら14、5歳だろうか。金髪のかなりのイケメン。いったいどこの騎士だ?


 騎士はアリスとクリフの前に屈み込むと、片膝をついて胸に手を当てた。


「お早うございます、アリス様、クリフ様、お迎えに参上いたしました。」


「もう、仕方ないわねぇ……お早うございます、ツェザーリ様。」

「意外に早かったな、ツェザーリ、よろしく頼む。」


 アリスは少々困った顔をして、クリフは満面の笑顔で騎士を迎えた。


 てかお前ら知り合いかよっ!どうなってんだよ。

 

「任せておけ、クリフ、お前らを……皇女様、クリフ様を安全にお届けいたします。」


 ツェザーリは立ち上がり、さっと手を前に掲げて頭を下げ、くいっと顎をあげてクリフにニヤッと笑いかけた。

 

「まぁ堅いことは抜きにしよう。」


 すっとクリフが前に出ると、ツェザーリと握手を交わす。


 ふ~ん、なんかいい感じだな。

 

 なるほどねぇ旧友とでもいうのかな。先日いってたな、つまりあの騎士はロレッツオ辺境伯の息子。イグリーズ学園の学友か。


 で、入口で驚いてるわけは、そういうことだった。ロレッツオ辺境伯配下の騎士、200名が宿屋の前に控えていた。


 さらにアリスとクリフ用の豪華な馬車まで用意されて……


 俺たちの乗るスペースなんて、なさそうね。ははは。


 騎士たちはアリス達を、城砦都市ファルコンまで送るそうだ。その後ファルコンに駐留している、諸国連合軍と合流するとか。


 ツェザーリはそこまで来るとか。


 いずれは最前線に立つ者として、この機会に人と魔の戦いを見ておきたいということだ。


 で、俺たちはどうなるわけかな。


 俺は予定通り向かうつもりだが、ニトロたちは一応アリス達の護衛の予定だったのだが。契約もしてるしな。


 これじゃ俺たち必要?って顔してるぞ。


 どうすんだ、おい!


「仕方ないでしょ~、押し切られちゃったんだから。」


 とアリスが頬を膨らませる。


「押し切るったって……」

「お父様のせいよ。」

「へ?」


 アリスのお父様というと、国王陛下?


「そ、ロレッツオ辺境伯によろしく頼む、なんて書簡を届けたものだから。皇女と大公子息になにかあったらって……」


 あ~~そういうことですか。

 そういや結構辺境伯の屋敷に通ってたな。


「というわけだ、お前たちがアリス様、クリフ様をお守りしてきたことには感謝する。だがここから先は、我らに任せてよいぞ。」


 ツェザーリが快活に笑う。


 いや任せろって、ニトロ達の立場がないだろが。


「まぁいいよ、金は前金で貰ってるしな。」

「むぅ……」


 ちょっと気にくわないが、本人が諦めたような顔をしてるし、まあいいのかな。

 

「ま、ジュンヤは約束もあるしな、一緒に行ってやるよ。」


 ニトロがにっと笑い、レヴィやグルームもポンと肩を叩いてきた。


 てなわけで、俺達は大所帯となって、騎兵200人と豪奢な馬車、その後ろからおんぼろ馬車が、街道を一路《ミスティの街》を目指して出立した。



◇◇



 町から数時間もすると国境が見えてくる。


 国境などといっても、あからさまに柵があるわけでもない。街道沿いに検問があり、国境警備の兵が駐留しているだけだ。


 その国境警備の兵たちが敬礼する前を、ロレッツオ辺境伯軍騎兵200人が通り過ぎていく。

 

 先頭には装甲を纏った戦馬に乗ったツェザーリが、そして騎兵に囲まれた豪奢な馬車が、最後尾付近にはあまりにも場違いな、安普請の幌馬車が過ぎていく。


 これを見た人々は、いったいどう思っただろうか。


 恥ずかしいわっ!!


 しかし考えないことにした。相手は皇女だ。お国で一番偉いお方の子女なんだ。


 いくら元日本人でも、13年もそんな生活をしてれば、感覚だっておかしくなってるんだ。


 貧民にとって異常なことでも、貴族にとっては当たり前なんだ。


 俺は自らに言い聞かせ、気にしないことにした。


 考えるとムカついてくるから、考えるのをやめた。


 前を見ないようにして、馬車のなかでルミやコッペルと戯れていた。

 

 別に拗ねてるわけじゃないからな!




 《ミスティの街》までは、2日もかからない距離だ。


 こんな大所帯なら、野盗やら盗賊やらも襲ってくるわけがない。


 そもそも辺境伯ってのは、やたらと強い兵士を揃えているとか。辺境で隣国からの侵略に対して、正面からぶつかる緩衝地でもあるとかで、皆鍛えているとかどーとか。


 そんな連中なら、魔獣が来ても、吸血鬼《バンパイア》クラスの魔族が襲ってきても、簡単に追い払えるだろう。


 ぶっちゃけ俺達が出る幕などないだろう。


 あ、これってもしかしてフラグ立ててしまったか?


「まぁ、ここはノスフェラトゥも近いからな。何が起きるか……」


 ニトロ~~、フラグ立てるなぁ。


††

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