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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
82/109

<C15> 神の武具に選ばれたようです

††


 私はしばし部屋の中を見ていた。

 

 江戸時代の様相をすら思わせる室内は、ランスの父、トールのデザインだという。


 もしこれが何の情報もなく、トールの記憶から再現されたものだとしたら、トールという人──ドワーフは現代人とは思えない。

 

 または余程昔の家屋が好きだった、ある種のマニアなのかな。

 

「気に入っていただけましたかな?」


 ランスが微笑みながら、なんと急須を使って湯呑にお茶を注いでいる。

 

 なにからなにまで古風な日本式。

 

「は、はい。すごく落ち着きます。」

「まあ、どうぞ立ち話もなんですから、お座りください。」


 ランスが井草の座布団の前に湯呑をおいてくれる。

 

 お茶も本物だ。ちょっと独特な風味を持っているけど、ちゃんとお茶の味がする。

 

 ジュンヤは茶畑もあるとか言っていた。

 

「私の父は、この部屋のデザインを、《ワソウ》と言ってました。」


 ランスの言葉に私とジュンヤは顔を見合わせた。ジュンヤもそれを聞いたのは初めてなのか、目を見張っている。

 

「なんでしょうな、私にはわかりませんが、父の故郷……だそうです。」

「こ、故郷なんですか?え、でも日本というのは、他の国なんでしょうか。」


 私は態とらしく尋ねた。


 もちろん日本が他の国であるわけがない。ドワーフの故郷はグランダム王国とエグゾス帝国に挟まれた小さな国の1つだ。


 少なくともこの世界、地図に載る世界の中に、日本という国は存在していない。

 

 ちゃんとイグリーズ学園で地理を勉強したんだから間違いない。


「いえ、父は少し変わったところがありましてね、まあお恥ずかしい話、変わり者でした。」

「変わり者、ですか?」

「ええ」


 ランスはフォッフォと長い顎鬚を撫でて笑った。

 

「なんでもニホンというのは、とても遠い場所にある国だそうです。果てしなく遠く、たどり着くのは困難な、遠い国。」

「……はぁ。」

「時折懐かし気に何処かを見ていましたよ。変わった人でした。ドワーフの故郷といえば、聳える山々に囲まれた国キングダムオブドワーブンだというのに、何故でしょうね。母に聞いても父は聳える山々に囲まれた国キングダムオブドワーブンで生まれ育ったというのに、いつも故郷はニホンだと言っていたそうです。」


 やはりそうなんだ。

 女神と会ったかどうかは、今となってはわからないけど、でもトールは日本人で、ドワーフとして転生したんだ。

 

「まあ、夢の話なんでしょうが、父はそのニホンでも鍛冶師だったといっていました。サムライの為にカタナをつくっていたとか。」

「「えええええ!」」


 私とジュンヤがハモるように声を上げた。侍の居た時代といえば、江戸時代。明治政府に変わる前だから、私が生きていた時代から200年位前だ。


 そんな大昔から転生があった、いやそれはそうかもしれない。女神が転生を昨日今日始めたとは思えないし、そもそも神に年齢などあるとは思えないし。


「ふぉふぉふぉ、儂もよくは知りませんが、父は幼い時より鍛冶の天才と言われ、様々な武具を作り、15歳の時には魔術を武具に取り入れる手法を見出したそうです。」

「それが神の武具(アーティファクト)ですか?」


 ジュンヤが尋ねると、ランスは首を振った。

 

神の武具(アーティファクト)と呼ばれる、いわゆる完成品に到達するには、かなり試行錯誤していたようですね。儂が20歳の頃、父が80歳の頃、完成いたしました。」

「それが100年前?」


 私の問いかけにランスは首肯した。


「ふぉふぉふぉ、私も父の手伝いをしておりましたが、鬼気迫るものがありました。なぜそこまで神の武具(アーティファクト)に拘ったのか、鍛冶師の本能とでも云うのでしょうかね、より良いもの、より最強に近づきたかったのかもしれません。」

「最強……か」


 ジュンヤはゴクリと固唾をのんだ。私にまで聞こえてきたぞ。

 

 ていうか~、男ってなんでそう拘るのかな?私にはよくわからない。でもより高見を目指すのはわかる。私だって陸上で最高位を目指したんだから、より早く、より高見へ。その気持ちは多分同じなんだと思う。

 

「拘りに拘って、拘り過ぎた結果が、神の武具(アーティファクト)です。ですが、それは非常に危険な武具となりました。」

「それは、強くなりすぎたということですか?」


 私が尋ねると、ランスが首肯した。

 

「父は出来上がった神の武具(アーティファクト)を倉に仕舞いました。誰の手にも触れさせないため。まあ壊してしまえばよかったのでしょうが、流石に丹精込めた武具を壊すなど、我が子を殺すようなものですからね、できなかったのでしょう。ふぉふぉふぉ」


 ランスは優しい目をして笑っている。鍛冶師にとって作品は我が子のようなものなのか、私はそうした製造の分野はよくわからないけど、そうなのかなと頷いた。

 

「ランバート」


 ランスが部屋の外に声をかけると、ランバートが手に何かをもって入ってきた。


 ランバートは布に包まれた物をランスの横に置き、また店に戻っていき、ランスは布を外し、中身を見せてくれた。

 

「これは……」


 ちょっとハシタナク、しげしげと見つめるそれは、日本刀のような刀が1つ、ガントレットとブーツがあった。

 

「父の残した神の武具(アーティファクト)には、5種の武器と、鎧一揃えがあります。これらは、盗賊どもに盗まれなかった神の武具(アーティファクト)のです。」


 そういってランスは刀を手にとり、すうっと鞘から抜いて私たちに見せてくれた。

 

 ネットで見たことがある、湾曲した日本刀独特の形状、鍔には何か文様が描かれ、刀身にも何か文字が書かれている。


 私もこれまでいろいろと戦闘経験はあるけど、その刀身をみつめ、たまらずに固唾をのみこんだ。

 

 見ているだけで引き込まれそうになる、なんというか、自分から斬られてみたくなるとか、おかしくない。

 

「これは斬龍丸ドラゴンバスターです。この世で最も強固だといわれる、古代龍エンシェントドラゴンの鱗をも切り裂く剣です。」

「……ドラゴンを?」

「ドラゴンなんているんだ……」

「魔族がいるし、なんでもいるだろ?」

「それもそうね、勝てるの?」

「わかんね、会ったことないし。」

「でもそういえば、魔法の授業で黒龍からとった魔石がどうとか言ってた記憶がある。」

「黒龍って、黒い龍?」

「100年くらい前だって言ってけど」

「こほんっ。」

「「あ」」


 つい話し込んでしまった。失礼しました。


「──研ぎ直しておきました。ジュンヤさん、どうぞこれをお持ちください。」

「で、でも、これはその……」


 いきなりのことに、ジュンヤは少し戸惑っているようだ。

 

「それにこちらは、皇龍の籠手ドラゴンズガントレット皇龍の具足(ドラゴンズブーツ)です。古代龍エンシェントドラゴンの鱗を加工して作られた防具です。きっと貴方のお役に立つでしょう。」

「え、ジュンヤ話したの?」


 つい聞いてしまったが、ジュンヤは慌てて顔を振った。

 

「い、いや、ただ雷神剣ライトニングブレードを渡しただけだよ。」


 言い訳するが、どうも怪しい。

 

「いやいや、なにやら訳ありの旅のようでもありますしね。それにこの斬龍丸ドラゴンバスターが、ジュンヤさんに使われる事を望んでいる、そんな気がしましたので。」

「へ……」


 にこにこしてるランスさんに、思わずアホな声で返してしまった。

 恥ずかしいぃ、顔真っ赤かも、いいや仮面で隠れてるし。

 

 でも意味が分からない。刀が所有者を指定するなんてあるの?なに、じゃあジュンヤは神の武具(アーティファクト)に選ばれたっていうの?


 なんかそれって、ワクワクしてくるんだけど。あたしもなんかないかな~♪


 ないですか、あそですか、それは失礼いたしました。

 

 

 

 

 

 ケチィッ!

 

††

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