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一話 邂逅

気がつくと俺はどこかのビルの屋上で寝ていた。

「あれ、ここどこだ?」

もうしばらく誰も入っていないらしく、周りには埃が結構積もって雑草も生えていた。

「あれ、俺家の前に居たよな?」

起き上がって手すりから乗り出してビルの周りを確認してみた。

周りも同じような高さのビルが並んでいた。

どうやら多くのビルは廃ビルになっているようだ。

「と、とりあえず降りてみるか…。」

と言って後ろを振り返って初めて気づいた。

「…これ、扉なのか?」

後ろにあった扉はものすごく錆びていた。

少し触っただけでも崩れてしまいそうな程だった。

恐る恐るドアノブを捻ると「ギィ…」という音をたてて回りしっかりとドアが開いた。

ドアの向こうはよくある階段だった。

俺はその階段を降りて行った先には沢山の人が居た。

隣の人と話す人、カバンを背負って走って行く人、明らかに不良の様な見た目をした奴に絡まれる人など、いつもと変わらなかった。

ただ…、

「何でスマホを見てる人が一人もいないんだ…?」

時計を見ている人は大勢居る。

だがスマホ、あるいはガラケーを見ている人は一人もいなかった。

「どういうことだ…?」

と、思っていると。

「貴様、そこで何をしている!」

と、ムキムキな男が走り寄ってきた。

「貴様、居住区番号と端末番号を述べろ!」

「は?、居住…何?」

何の話だ!?

「どうした、この街の人間なら言えるはずだぞ!」

な、そうなのか!?

えっと、何かいい言い訳ないか!?

「えっと…、りょ、旅行に来てて…。」

「旅行だと?今の状況で旅行など出来る訳があるか!」

「え、そうなの!?」

そんな状況なの!?

「貴様…、一体何者だ!?」

と、言った言葉を最後にさっきの男の声が聞こえなくなった。

よく見ると動きが止まっていた。

いや…、それだけじゃない。

空中の鳥も、周りの通行人も、空中を舞っていた葉さえも止まっていた。

「時間が…止まっている…?」

すると、誰かが近づいてきた。

「へぇ、お前動けるのか?」

声がした方を見ると、黄色いパーカーを着た男が近づいてきていた。

「…あんた、誰だ?」

「人に名前を聞く前に自分から名乗ったらどうだ?」

と、言われ、

(それもそうか。)

と思ったが…。

「俺の名前は…あれ…なんだっけ…?」

「はぁ?、おいおい、自分の名前を忘れるバカなんて聞いたことないぞ?」

どういうことだ?なんで自分の名前が分からないんだ?そもそもここはどこなんだ?

「…どうやらマジに分からねぇみたいだな。」

と、パーカーの男が言った。

「お前、行く当ては…ねぇよな。ちょっと俺についてこい。」

「はぁ!?何でそんないきなり…。」

「お?じゃあこのままここで野垂れ死ぬか?」

「ぐ…。」

くそ、そう言われると逆らえない…。

「まぁ安心しろ、悪いようにはしないさ。」

「あの、名前は?」

「湖月だ、よろしくな。」


湖月さんと話した後、俺は行く道をついていった。

「あれ、湖月さん誰引き連れてるの?」

と、誰かが話しかけてきた。

「お、アオイ。」

「その子誰?」

「ちょうどよかった、今日からコイツ一緒に住むから。」

「「…はい!?」」

俺とアオイと呼ばれた人の声が揃った。

「なんでお前も驚いてんだ。」

「いやいや、一緒に住むなんて聞いてないから!」

「…あれ、言ってなかったっけ?」

「そもそもうちってまだ部屋あるの?」

「何言ってんだ、倉庫があるだろ。誰も使ってない。」

「俺ホコリだらけの倉庫に住むの!?」

「なんか、そっちの子が可哀想に思えてきた…。」

「なんで初対面の人に同情されてんの!?」

「で、君名前は?」

「そいつ名前分かんないんだって。」

「どんなおとぎ話よ…。」

「なんか、スイマセン…。」

「まぁいいや、あたしはアオイ。よろしく。」

「はい、よろしくお願いします…。」

よくみたらすっごく可愛い人だった。

…俺こんな人と同棲出来るならもう死んでもいいかも。

「着いたぞー。」

「ハッ。」

我を忘れるとこだった。

というか…

「ゴミ箱しかないんですけど。」

「そうだよ、このゴミ箱が入り口だよ。」

「え、バッチィ。」

「うるせぇ、入れ!」

と、言うと湖月さんは俺をゴミ箱に押し込んだ。

俺はゴミ箱の中で何度か頭をぶつけながら最後まで落ちていった。

「いたっ!?」

すると、女性の声が聞こえた。

運悪く出口付近にいたようだ。

「あ、ごめんなさい!」

「だ、だいじょうぶー…。」

その人を見るとにリンゴのシュシュで髪をまとめてる美人さんだった。

「お姉ちゃんなにしてんのー?」

下敷きになっていた人から退くと向こうの部屋から声が聞こえた。

その人はサクランボのヘアゴムを着けたサイドテールで、お姉ちゃんと呼んでいた人にそっくりだった。

なるほど、呼び方から察するに姉妹なのか。

「すみません、俺が上に落ちちゃって…。」

「あれ、お客さん?珍しい…。」

「いや、そいつ新メンバー。」

声のした方を見ると湖月さんとアオイさんが降りてきていた。

「「…はい!?」」

また声が揃った。

「ちょ…ちょっと待って湖月さん…新メンバー…!?」

「あれ、私たち何もいわれてないよ!?」

「そりゃそうだろ、さっき決めたもん。」

「「…。」」

案の定呆れてた。

「そういうことらしいので…よろしくお願いします…。」

「あ、こちらこそ…じゃなくて!」

すごい、完璧なノリツッコミだ…!

「湖月さん、せめて相談してよ。」

「そーだそーだ!」

「うるせぇ、文句言ってる暇あるんなら自己紹介でもしてろ。」

なんて横暴なんだ…!

「…もうこれ以上言っても無駄だからいいや。私はセレサ。で、こっちが姉の…。」

「サナちゃんでーす!」

「あ、どうも。」

「で、君の名前は?」

「あ、そいつ記憶ないらしいぞ。」

と湖月さんが言うと、

「へー、めずらし。」

「まぁ、そういうこともあるか。」

サッと流した。

「あの、つっこまないんですか?」

「ん?まぁ別に?」

「うちはほとんどこんな感じだよー。」

と、セレサさんが言った。

「ほとんど?」

「そうそう、アオイだけなんでかそういうの気にするの。」

「気にするのが普通だから…。」

と、アオイさんがこぼしていた。

(なんか、面白そうな場所だなー。)

とか思ってると。

「なんか知らない人の匂いがするー!」

と、元気な声変わり聞こえてすぐに後頭部に鈍い衝撃が走った。

「ごふぇ!?」

スザザーッと飛ばされて顔をあげると。

「こら、知らない人に突っ込んでいかない。」

「はーい…。」

と、怒られてた。

「えっと、誰ですか?」

「む、誰ですかはこっちのセリフだよ。きみは誰なのさ。」

あ、名前わかんないのどうするか考えてなかった!

「えーっと…。」

「じー。」

どうしよう!とか思ってると。

「そいつの名前はウィロだよ、セーナ。」

と、湖月さんが勝手に決めてた。

「そうなんだー!わたしはセーナ!よろしくねー!」

セーナさんって言うのか、元気な人だな。

「はい、よろしくおねがいします。」

というか湖月さんはこんな美人さんたちに囲まれて生活してるのか…。

「お、なんだよその顔。」

俺の嫉妬と名前を勝手に決められた恨みを湖月さんが感知してた。

「あと一人いるんだけど…たぶん寝てるな。」

「今日の朝まで実験してたもんねー。」

とサナさんが言った。

「実験?」

「そ、もう一人は科学者なの。」

へー、科学者か…。

「まぁ、また今度顔合わせさせるか。今はとりあえずこいつの能力でも聞くか。」

と言われたが…。

「…能力?」

と聞き返すと全員がびっくりしてた。

「お前…ほんとに旅行者なのか?」

「この国の人なら全員知ってるもんね。」

「でも、外の人も能力自体は知ってるんじゃないの?」

「実際、それで関係悪くなってるもんね。」

「わたしの能力はねー!」

と、それぞれが反応していたが…セーナさんマイペースだなぁ。

「あのね能力って言うのは、この亀甲街…いやこの国の人間なら全員が持ってるものなんだよ。」

と、セレサさんが説明してくれた。

なにやら火を吹いたり、空を飛んだり、変身したり、農作業が上手くなったりと当たりからはずれまで様々あるらしい。

「その能力を与えたのは宙人族の少年だったらしいんだ。」

と、説明してくれたが…。

「宙人族?人間とはまた違うんですか?」

と、聞くと再び全員がびっくりしてた。

「…その様子じゃ協会についても知らないんだろうな。」

「何ですか協会って?」

「正式にはレンジャー協会って言って、まぁ簡単に言ったらなんでもやさんかな。」

「で、それと宙人族とでなんの関係があるんですか?」

「その協会は隊員の総数で約10万人を超えるって言われててH、G、F、E、D、C、B、準A、A、準S、Sっていうランクがあるんだよ。」

「皆さんはその協会に入ってるんですか?」

「入ってるよー!わたしはGランク!」

「ウチはEランクだねー。」

「私は今のところCランクかな。」

と、セーナさん、アオイさん、サナさんの順で言っていった。

「それで私は準Aランクなんだけど、実は最高ランクのSを越えた人たちがいてその人たちはいろんな部門のトップらしいよ。」

へぇー、そんなすごそうな人達がいるのかー…。

「その人たちは人間、獣人、機人、宙人、樹人、小人、霊人、妖人、精人、巨人っていう種類なんだ。」

「そのさっきから言ってる種類って何ですか?」

と聞くと、

『…。』

みたいな感じでめんどくさそうな顔をされた。

「…お前らまだ話してたの?」

と、湖月さんが言った。

というか…、

「湖月さんいなかったの!?」

と、セレサさんが代わりに突っ込んでくれた。

「おう、ウィロにこの本いいかと思って取りにいってたんだよ。」

と言いながら渡されたのは、『バカでもわかる世界史の本』という本だった…。

「…俺のことバカにしてますよね?」

「だってバカじゃん。」

「べっ…べつにバカじゃないし!」

とか言い争ってるとセレサさんに、

「はいはい、そこまでー。」

と止められた。

「今日はもう遅いし、早く寝よ寝よ!」

と、言われて思わず、

「え、もうですか?まだ1時間もたってないですよ?」

といったが湖月さんに、

「ほれ、これ使え。」

と、時計を渡された。

その時計をみると何と10時間もたってた。

「え!?うそ!?」

「お前、明日早いからな。起きたら地下室に来いよ。」

「地下室…?地下室なんてあるんですか?」

湖月さんに聞いたが、

「明日はお前の特訓だからな。お前弱そうだし、生きる力くらいは身につけとけ。」

まったく違う返事だった。

俺は諦めて、

「…はい。」

といった。すると湖月さんが、

「あ、忘れてた。」

といい俺は思わず、

「何をですか?」

と、聞き返していた。

湖月さんの答えは、

「ようこそ、ウチのチーム、『六月(むつき)』へ。」

湖月と書いてこづきと読みます

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