『濃紺』
橙に染まる海岸に、四つの影があった。
四人が見つめるのは、
潮の満ち引きで孤立した海。
その海面に反射して、空が向かい合っていた。
エヴァンがぽつり、呟いた。
「——鏡の島『ウブラ』……か」
音凪は、エヴァンをそっと見上げた。
「……さ、名残惜しいけど、そろそろ行かないとね」
エヴァンはそう言って、自然が作りだす鏡に背を向けた。
「えー」
「あ……」
残念そうな表情を浮かべる音凪とフィン。
透真はフィンの頭を撫でた。
「フィン、後ろ見てみな」
フィンはきょとんと目を丸めて、振り返った。
透真の言葉に、音凪も振り返る。
「あっ!」
フィンが空を見て声を上げた。
「にじだー!」
空には、虹が架かっていた。
濃紺が覗きはじめた、夕方の空。
音凪はその虹を、じっと見つめた。
(いいもの、もうひとつもらっちゃった)
音凪の口元が、柔らかく弧を描いた。
四人は乗船場に向かって歩きはじめた。
虹はやがて、
橙色の空に、溶けていった——
『濃紺』 完
『雨上がりの空で、傘をさす。』をお読みいただき、ありがとうございます。
本話をもちまして、五章は完結となります。
気づけば連載開始から半年が過ぎていました。
ここまでお付き合いいただいた皆さまには、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます。
次回、六章は下記日時からスタートします。
【8/7(金)22:30】
また、下記期間は毎日投稿を予定しております。
■毎日投稿期間
8/10(月)〜8/16(日)
日によっては1日で2回投稿する日もありますので、夏休みの楽しみのひとつとして見ていただければうれしいです。




