真美子先生
「とうま すごーい!」
「へへっ」
目の前には、透真がブロックで造ったお家。
輪っかのおもちゃを繋げて造られたそのお家には、ちゃんと屋根がついていた。
これは、どこから見てもお家。
「きょうからここが、おれたちのいえだ」
透真がうれしそうに言った。
私はきょとんと首を傾げる。
「ちいさいよ?」
入るのは無理だよ。
そう思って透真に言うと、透真は眉を下げた。
「ブロックがたりないんだよ」
「どれくらい?」
私の言葉に透真は立ち上がって、両腕を目いっぱい広げた。
「こ〜〜れ、くらい!」
「わあ」
私はふと、おもちゃ箱を見た。
「たりないね〜」
「だろ?」
透真はすたっと膝をついて、再び床に座った。
そして、私の耳元に顔を寄せて
「……まみこにいってみる?」
そうささやいた。
「……えっ?」
私はそおっと真美子先生を見た。
部屋の入り口近くの椅子に座って、私たちの様子を見ている真美子先生。
その表情はいつもと違って、なんだか——
(こわくない……)
穏やかな顔で私たちを見守る先生に私は、
"いまなら、おねがいできるかも"
そう思った。
「いってみる……?」
私はそっと透真と目を合わせた。
透真は何も言わずに、ただ大きく、こくりと頷いた。
私たちが真美子先生の元に行くために、立ち上がろうとしたとき。
スッ——
真美子先生が立ち上がった。
そのまま、ひとつ上の光太郎の元に行って——
「来なさい」
光太郎の手を掴んだ。
光太郎はビクッと肩を揺らして、真美子先生を見上げた。
真美子先生は、いつもの冷たい顔に戻っていた。
「な、なんだよお……」
「いいから」
抵抗しようとする光太郎。
真美子先生はため息をひとつ吐いて、光太郎を抱き上げた。
「はなせよっ!」
「……」
光太郎の言葉を真美子先生は無視して、スタスタと部屋の外に出て行ってしまった。
「……」
(なに……?)
「まみこいっちゃったなー」
呆然と部屋の入り口を眺めていると、透真があっけらかんと呟いた。
「いっちゃったね……」
「しょうがない。 つぎなにつくる?」
どうして真美子先生が光太郎を連れて行ったのか気になった。
だけど興味なさそうな透真に、私も"まあいっか"と、
再びふたりで遊びはじめた。
しばらく遊んでいると、光太郎と真美子先生が戻ってきた。
光太郎は頬を膨らませて、不満気な顔をしていた。
(あれ……?)
ある異変に気がついた。
光太郎の服が、変わっている。
さっきまでは首元まである服を着ていたのに、今は首が広く開いている。
そしてその首は——
ほのかに赤く色づいていた。
真美子先生 完




