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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第96話 継承

奈落城最深部。


巨大な“魔王の心臓”が暴走していた。


黒い光。


轟音。


空間崩壊。


奈落城全体へ亀裂が走る。


ドクン。

ドクン。


鼓動が、どんどん速くなる。



リゼが叫ぶ。


「崩れる!!」


グランも舌打ちした。


「クソが!!」


天井崩落。


神代文字暴走。


魔力嵐。


完全崩壊寸前。



それでも。


士郎だけは静かだった。


黒い靄。


赤黒い瞳。


空間を歪ませながら、“心臓”を見ている。



『選べ』


原初の魔王の声。


『継承するか』


『壊すか』


静寂。


巨大心臓が脈動する。


まるで。


士郎の答えを待つみたいに。



エレノアが叫ぶ。


「壊しなさい!!」


赤い瞳。


真っ直ぐ士郎を見る。


「それを継承したら、もう戻れない!」


その声には、焦りがあった。


本気だった。



セレナは逆に笑っていた。


「継承して」


紫の瞳。


狂気。


「あなたなら、世界を変えられる」


リゼが怒鳴る。


「焚き付けないで!!」



原初の魔王は静かに士郎を見る。


『お前は既に境界を越えている』


『ならば』


『王になれ』


その瞬間。


巨大心臓から黒い管が伸びる。


士郎へ。


まるで。


迎え入れるみたいに。



士郎は黙っていた。


脳裏へ流れ込む記憶。


滅びた文明。


戦争。


虐殺。


退屈そうに笑う黒い王。


そして。


孤独。


誰にも理解されない圧倒的強者の孤独。



士郎の黒い瞳が細くなる。


「……くだらん」


静寂。


原初の魔王の瞳が揺れる。



「王も」


「支配も」


「世界も」


士郎は笑った。


獰猛に。


「興味ない」


黒い靄が膨れ上がる。


奈落城全体が震える。



「だが」


士郎は“心臓”を見る。


赤黒い瞳。


歓喜。


「この力は面白い」


リゼが顔を引きつらせる。


「結局そこ!?」



その時。


士郎が巨大心臓へ手を伸ばす。


エレノアが叫ぶ。


「士郎!!」


それでも。


士郎は止まらない。


そして。


巨大心臓へ触れた。


轟音。


黒い光が爆発する。



士郎の身体へ、膨大な魔力が流れ込む。


黒い靄。


赤黒い瞳。


そして。


背後へ巨大な黒い影が現れる。


王冠。


翼。


赤黒い瞳。


今までで最も巨大。


最も濃い。



リゼが震える。


「……魔王」


誰も否定できなかった。


その姿は。


もはや人間じゃない。



それでも。


次の瞬間。


士郎が笑った。


「鬱陶しいな」


その瞬間。


士郎の黒い靄が、“心臓”へ逆流する。


原初の魔王の表情が初めて変わった。


『……何?』



士郎は“心臓”を掴む。


握り潰すみたいに。


「誰かの後継になる気はない」


轟音。


赤黒い瞳が光る。


「俺を器にできると思ってるのか?」


その瞬間。


黒い靄が暴走した。



巨大心臓へ、亀裂が走る。


ドクン。

ドクン。


鼓動が乱れる。


奈落城全体が悲鳴みたいに軋み始めた。



原初の魔王が士郎を見る。


初めて。


本当に興味深そうに。


『……そうか』


そして。


笑った。


『それでこそだ』



次の瞬間。


巨大心臓が崩壊を始める。


黒い光。


空間崩壊。


奈落城全域が揺れる。


リゼが叫ぶ。


「逃げるよ!!」


グランも怒鳴る。


「今度こそマジで死ぬ!!」



それでも。


士郎は最後まで笑っていた。


黒い靄。


赤黒い瞳。


人間離れした存在感。


それでも。


その笑みだけは。


間違いなく、西園寺士郎のものだった。

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