表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/746

第95話 境界

奈落城最深部。


巨大な“魔王の心臓”の前。


黒い光が溢れていた。


奈落城全体が脈打っている。


ドクン。

ドクン。


まるで。


世界そのものが呼吸しているみたいだった。



士郎は静かに立っている。


黒い靄。


赤黒い瞳。


空間が歪む。


存在感そのものが変わっていた。


それでも。


その表情だけは、まだ西園寺士郎だった。



『退屈だった』


原初の魔王の声。


『だから壊した』


静かな声。


まるで。


天気の話でもするみたいに。



士郎は黙っていた。


脳裏へ流れ込む記憶。


滅びた世界。


崩壊した文明。


山のような死体。


そして。


玉座で退屈そうに笑う黒い王。



その時。


士郎が小さく呟く。


「……くだらんな」


静寂。


原初の魔王の赤黒い瞳が細くなる。



「退屈だから世界を壊した?」


士郎は笑った。


その笑みは、今までと少し違う。


冷えていた。


「随分つまらん理由だ」


リゼが息を呑む。


エレノアの赤い瞳も揺れる。



原初の魔王は静かに士郎を見る。


『違うのか?』


士郎は即答した。


「俺は強い奴と戦えればいい」


黒い瞳。


赤が混ざっていても。


その奥には、まだ士郎自身の狂気があった。


「壊すだけじゃ退屈だろ」


静寂。



エレノアの表情が少し変わる。


安心。


ほんの僅かに。


士郎は原初の魔王へ共鳴している。


それでも。


完全には染まっていない。



原初の魔王が笑う。


『なるほど』


『だからお前は面白い』


その瞬間。


巨大心臓が脈動する。


ドクン。

ドクン。


黒い管が士郎へ伸びる。


だが。


今度は違った。


士郎の黒い靄が、それを飲み込んだ。



原初の魔王の瞳が初めて揺れる。


『……拒絶?』


士郎は笑った。


獰猛に。


「勘違いするな」


黒い靄。


さらに膨張。


奈落城全体が軋む。


「力は貰う」


「だが」


赤黒い瞳が細くなる。


「俺は俺だ」


轟音。


空間震動。


その瞬間。


奈落城中の神代文字が、一斉に赤黒く発光した。



エレノアが息を呑む。


セレナの笑みも消える。


原初の魔王ですら、静かに士郎を見ていた。



魔王因子。


原初の記憶。


神代の力。


全部受け入れながら。


それでも。


人格侵食を拒絶している。


普通ならあり得ない。



リゼが震えた声を出す。


「……何なの、この人」


グランも乾いた笑いを漏らす。


「化け物だろ、もう」



その時。


原初の魔王が静かに笑った。


『そうか』


『それがお前か』


初めてだった。


原初の魔王が、“別個の存在”として士郎を見たのは。



エレノアは静かに士郎を見る。


黒い靄。


赤黒い瞳。


もう人間には戻れないかもしれない。


それでも。


西園寺士郎は消えていない。



その瞬間。


巨大心臓が暴走した。


轟音。


黒い光が空間を埋め尽くす。


奈落城全体が崩壊を始める。


リゼが叫ぶ。


「今度は何!?」


セレナの顔色が初めて変わった。


「心臓が……暴走してる!?」



原初の魔王は静かだった。


まるで。


全部分かっていたみたいに。


『選べ』


赤黒い瞳が士郎を見る。


『継承するか』


『壊すか』


巨大心臓が脈動する。


ドクン。

ドクン。


まるで。


士郎の答えを待つみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ