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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第94話 魔王化

奈落城最深部。


巨大な“魔王の心臓”から、黒い光が溢れ出していた。


轟音。


空間震動。


黒い粒子が、士郎へ流れ込む。


止まらない。


まるで。


心臓そのものが、士郎を選んだみたいに。



エレノアが叫ぶ。


「士郎!!」


それでも。


士郎は立っていた。


黒い靄。


以前とは比べ物にならない。


濃密。


重い。


空間そのものが歪み始めている。



そして。


士郎の瞳が、完全に赤黒く染まった。


リゼが息を呑む。


「……っ」


怖い。


今までとは違う。


人間じゃない。


本能がそう叫んでいた。



士郎の脳裏へ、大量の記憶が流れ込む。


戦争。

滅び。

虐殺。

玉座。


そして。


世界そのものを敵に回した、孤独な王。



『感じるか』


原初の魔王の声。


『力を』


士郎はゆっくり拳を握る。


ドクン。


黒い靄が脈動する。


その瞬間。


バキィィィン!!!


離れた場所の神代騎士像が、突然砕け散った。


静寂。


グランが顔を引きつらせる。


「……は?」


士郎は何もしていない。


ただ。


“力”が漏れただけ。



エレノアの赤い瞳が揺れる。


ここまでとは思っていなかった。


適合速度が異常。


しかも。


拒絶反応がない。


まるで。


最初から完成されていたみたいに。



セレナは歓喜していた。


紫の瞳。


狂気すら滲んでいる。


「成功よ……!」


「ついに……!」


リゼが怒鳴る。


「全然成功じゃないでしょ!!」



その時。


士郎がゆっくり顔を上げる。


赤黒い瞳。


視線だけで空気が重くなる。


グランですら、一瞬身体が硬直した。


格が違う。


存在そのものが変わっている。



原初の魔王が笑う。


『素晴らしい』


『その力こそ』


『世界を超える資格だ』


士郎は静かに聞いていた。


否定しない。



その時。


エレノアが士郎の前へ立つ。


紅蓮の炎。


赤い瞳。


「それ以上、受け入れちゃダメ」


士郎は少しだけ視線を向ける。


「何故だ?」


その声。


低い。


以前より遥かに冷たい。


リゼの顔が青ざめる。



エレノアは睨み返す。


「あなたがあなたじゃなくなる」


静寂。


士郎は少し黙った。


そして。


小さく笑う。


「今さらだろ」


その瞬間。


エレノアの表情が止まった。



士郎は昔から壊れていた。


死を恐れず。


戦いを愉しみ。


強者しか求めない。


人間社会へ馴染めない怪物。


だから。


魔王因子へ適合してしまう。



原初の魔王が笑う。


『理解しているではないか』


『お前は元より、こちら側だ』


黒い靄がさらに膨れ上がる。


奈落城全体が震える。



その時。


巨大心臓が脈動した。


ドクン。

ドクン。


そして。


黒い管が士郎へ伸びる。


エレノアの顔色が変わる。


「士郎!! 避けて!!」


それでも。


士郎は避けない。


むしろ。


自分から掴んだ。


轟音。


黒い光が爆発する。



士郎の脳裏へ、最後の記憶が流れ込む。


神代文明最終日。


空を埋め尽くす光。


崩壊する世界。


そして。


原初の魔王が、たった独りで笑っている。



『退屈だった』


声。


静かだった。


『だから壊した』


士郎の赤黒い瞳が揺れる。


その瞬間。


初めて。


士郎の笑みが消えた。

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