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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第93話 灰の魔女

奈落城最深部。


巨大な“魔王の心臓”。


その前で。


黒い靄が膨れ上がっていた。


士郎の周囲。


空間そのものが軋む。


床へ亀裂が走る。


リゼが息を呑む。


「士郎……」


黒い瞳。


赤が濃い。


明らかに変質が進んでいた。



エレノアは士郎の前へ立つ。


紅蓮の炎。


赤い瞳。


今までで一番険しい表情だった。


「それ以上、近づかないで」


原初の魔王は静かに見ている。


まるで。


面白いものを見るみたいに。



『灰の魔女』


低い声。


『まだ抗うか』


エレノアは笑わない。


「当たり前でしょ」


その声は冷たい。


「士郎は、あなたの器じゃない」


静寂。



原初の魔王が少し笑う。


『違うな』


黒い瞳が細くなる。


『器ではない』


『“後継”だ』


その瞬間。


巨大心臓が脈動する。


ドクン。

ドクン。


奈落城全体が揺れた。



士郎の脳裏へ、また記憶が流れ込む。


黒い王。

玉座。

神代騎士団。


そして。


滅びゆく世界。


それでも。


原初の魔王は絶望していなかった。


退屈そうだった。


まるで。


世界そのものに飽きていたみたいに。



『お前は理解できるはずだ』


声。


直接響く。


『弱者に囲まれた退屈を』


士郎は黙っていた。


否定しない。



エレノアの表情が険しくなる。


最悪だった。


士郎は共鳴している。


力だけじゃない。


思想まで。



その時。


セレナが静かに前へ出た。


「なら、なおさら必要ね」


リゼが振り向く。


「え?」


セレナの紫の瞳が、士郎を見る。


「この世界を壊す存在が」


静寂。


グランが舌打ちする。


「やっぱイカれてやがる……」



セレナは笑っていた。


妖しく。


「王国も」


「教会も」


「貴族も」


「全部腐ってる」


「なら壊せばいい」


その声には、本気の狂気があった。



エレノアが睨む。


「士郎を利用する気?」


セレナは即答した。


「ええ」


空気が凍る。


「そのために、ここまで連れてきたんだもの」


リゼが顔を青ざめさせる。


「最低なんだけど!?」



それでも。


士郎は笑っていた。


「正直でいい」


エレノアが振り向く。


「士郎!!」


士郎は黒い靄を纏ったまま、原初の魔王を見る。


「で?」


「俺に何をさせたい」



原初の魔王は笑った。


『簡単だ』


『世界を壊せ』


その瞬間。


奈落城全体が震えた。


巨大心臓が脈動する。


ドクン。

ドクン。


まるで。


歓喜しているみたいに。



士郎の黒い瞳が細くなる。


そして。


笑った。


獰猛に。


「面白そうだ」


リゼの顔色が変わる。


「ちょっ……!?」



エレノアが士郎の腕を掴む。


強く。


「本気で言ってるの?」


赤い瞳。


そこには初めて、焦りがあった。


士郎は少しだけエレノアを見る。


そして。


静かに言った。


「半分な」


静寂。



その時。


原初の魔王が笑った。


『やはり良い』


『お前は我と違う』


『だからこそ完成する』


その瞬間。


巨大心臓から黒い光が溢れ出した。


轟音。


空間震動。


そして。


黒い粒子が、一斉に士郎へ流れ込み始める。


エレノアの顔色が変わる。


「まずい!!」


止まらない。


士郎の黒い靄が爆発的に膨れ上がる。


赤黒い光。


揺れる空間。


そして。


士郎の瞳が、完全に赤く染まり始めた。

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