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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第91話 魔王の心臓

奈落城最深部。


巨大扉の奥。


黒い霧が広がっていた。


視界が悪い。


それでも。

一歩進むごとに、鼓動音が大きくなる。


ドクン。

ドクン。


まるで。

世界そのものが脈打っているみたいだった。



リゼが顔を青ざめさせる。


「……帰りたい」


グランも険しい顔だった。


「今さら帰れねぇだろ」


エレノアは黙っている。


赤い瞳。


ずっと士郎を見ていた。


黒い靄。

赤黒く染まり始めた瞳。


奈落城へ入ってから、変化が加速している。



セレナだけが静かに前へ進む。


迷いがない。


まるで。

ずっとここへ来たかったみたいに。



やがて。


霧が晴れる。


その瞬間。


全員の動きが止まった。



巨大空間。


地下とは思えないほど広い。


その中央。


“心臓”があった。



巨大。


黒赤色。


山みたいなサイズ。


そして。


生きていた。


ドクン。

ドクン。


脈動。


血管みたいな黒い管が、空間全体へ広がっている。


リゼが震える。


「……なに、これ」


セレナが静かに答えた。


「“魔王の心臓”」



原初の魔王。


その核。


千年以上封印され続けてきた、世界最大の災厄。


それが今も、生きている。



その時。


士郎の黒い靄が膨れ上がる。


反応していた。


呼応するみたいに。


ドクン。

ドクン。


鼓動がさらに大きくなる。



エレノアの表情が険しくなる。


「……まずい」


心臓が。

士郎へ反応している。


いや。


違う。


歓迎している。



その瞬間。


巨大心臓から黒い粒子が漏れ出した。


そして。


士郎へ流れ込む。


轟音。


空間震動。


リゼが叫ぶ。


「士郎!!」



士郎の視界が歪む。


また。

記憶。


黒い空。

崩壊した世界。

山のような死体。

膝をつく軍勢。


そして。


玉座。


黒い王。



今度は顔が見えた。


黒髪。

赤黒い瞳。


そして。


笑っていた。


まるで。

全部どうでもいいみたいに。



『ようやく来たか』


声。


直接響く。


士郎の黒い瞳が細くなる。


「……お前か」


黒い王は笑う。


『我が器よ』



その瞬間。


士郎の周囲へ黒い靄が爆発的に広がった。


空間が軋む。

床が砕ける。


リゼが息を呑む。


「魔力……!?」


いや。


もうそんなレベルじゃない。


存在感そのものが変わっていた。



エレノアが叫ぶ。


「士郎!! 拒絶しなさい!!」


しかし。


士郎は笑っていた。


歓喜。


戦闘時と同じ顔。


「面白い」


エレノアの顔色が変わる。


最悪だった。


士郎は恐れていない。


むしろ。


受け入れ始めている。



セレナは静かに呟く。


「完成する」


その紫の瞳は、歓喜していた。



その時。


巨大心臓の前。


空間が歪む。


黒い霧が集束する。


そして。


“何か”が現れた。


リゼが震える。


「……また敵?」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


「違う」


静寂。


黒い霧の中から現れたのは。


一人の男だった。


黒い甲冑。

長い黒髪。

赤黒い瞳。


そして。


士郎と同じ笑み。



男は士郎を見る。


まるで。

鏡を見るみたいに。


そして。


静かに口を開いた。


『待っていたぞ』


原初の魔王が。


ついに姿を現した。

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