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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第五章『奈落城編』

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第90話 処刑騎士

奈落城深部。

神殿跡。


処刑騎士の黒刃へ、異常な魔力が集束していた。


空気が軋む。

床へ亀裂が走る。


リゼが顔を青ざめさせる。


「嫌な予感しかしないんだけど!?」


グランも剣を構える。


「来るぞ!!」



処刑騎士の赤黒い瞳が光る。


『処刑執行』


次の瞬間。


黒刃が振り下ろされた。


轟音。


斬撃が空間ごと走る。


神殿の壁。

柱。

床。


全部が一撃で切断された。



士郎は見切る。


最小動作。

回避。


それでも。


完全には避けきれない。


黒刃が胸元を裂く。


血飛沫。


リゼが息を呑む。


「またわざと!?」



士郎は笑っていた。


その瞬間を利用して踏み込む。


完全実戦思考。


距離を潰す。


拳。


ドゴォォォォン!!!


処刑騎士の腹部へ直撃。


轟音。


神代装甲へ亀裂が走る。


それでも。

処刑騎士は止まらない。


即座に膝蹴り。


士郎の身体が吹き飛ぶ。


神殿壁へ激突。



轟音。


壁崩壊。


リゼが叫ぶ。


「士郎!!」


爆煙。


その中から。


黒い靄が漏れ出していた。



士郎が立ち上がる。


黒い瞳。


赤がさらに濃い。


口元から血を流しながら。


笑っていた。


「最高だ」


グランが顔を引きつらせる。


「完全に戦闘狂だなコイツ……」



その時。


処刑騎士が静かに言った。


『適合率上昇確認』


『危険度更新』


『原初認定開始』


空気が凍る。


エレノアの表情が変わった。


「……待ちなさい」


しかし。


遅い。



処刑騎士の赤黒い瞳が、士郎を見つめる。


そして。


ゆっくり膝をついた。


静寂。


リゼが固まる。


「……え?」


グランも絶句していた。



神代処刑騎士。


魔王直属処刑兵器。


その存在が。


士郎へ臣下の礼を取っていた。



『確認完了』


低い声が響く。


『現魔王因子適合者』


『原初継承資格保有』


『敵対認識解除』


静寂。


空気が重い。



エレノアの赤い瞳が揺れる。


最悪だった。


奈落城の神代兵器群が、士郎を“敵”ではなく、“王”として認識し始めている。



リゼが引きつった声を出す。


「いやいやいや待って!?」


「なんで!?」


セレナは静かに笑っていた。


「当然よ」


その紫の瞳が細くなる。


「“王”なんだから」



士郎は処刑騎士を見下ろす。


黒い瞳。


赤が混ざる。


そして。


笑った。


「面白いな」


その瞬間。


神殿全体へ轟音が響いた。


ドクン。

ドクン。


巨大な鼓動音。


奈落城そのものが脈打っている。


まるで。


士郎へ呼応するみたいに。



次の瞬間。


神殿最奥の巨大扉が、ゆっくり開き始めた。


黒い霧。

濃密な魔力。


そして。


扉の向こう側から、膨大な“何か”の気配が漏れ出す。


グランが冷や汗を流す。


「おい……」


エレノアの赤い瞳が細くなる。


セレナは笑っていた。


そして。


士郎だけが、嬉しそうだった。


「行くか」


まるで。


そこへ辿り着くことが、最初から決まっていたみたいに。

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